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2.『イケメン黒崎さんはグルーミングも上手い』
③
しおりを挟む「だーかーら、フラれたの。もうこれで十人目ね、はあ~ヤんなるホント……」
「きみがフッたんじゃなく?」
「オレが、フラれたの。何回も聞かないで? これでも傷ついてんだから」
「ご、ごめん。でも……ああ、ええと十人目? というのは」
「十四の時から、二十歳の今までで十人。最後のは虎獣人だったね」
歴代彼氏は中型以上、ほとんどが大型獣人だった。
というのも、オレが大型獣人大好きだからだ。あの大きい身体でぎゅーってされると顔が緩んで心底幸せになれる。あとナニがデカいのもいい。
兎獣人の性欲が強いのはまあ事実なので、オレにだって好みのヤツくらいある。とにかく大きいのがいいんだ。
でも彼氏達はいつもオレの身体の小ささを心配して、触り合うだけで挿入はしてくれなかった。
この体格差見たら当然だろ、と彼氏に叱られたことまである。
何でだよ、恋人だったらセックスくらいするだろう。
そんな不満を抱えながら恋人作ったり別れたりしてたせいで、変な噂も立てられた。なんとこんなにビッチのように見せかけて処女なんですけど、オレ。
しかもかなりのメンヘラ。これは彼氏達の評だけど、まあ間違ってはないのかも知れない。
一度専門医に診てもらえって言われたし。そんなん行くわけないけど。
なんかそういう昔話を、ちょいちょいかいつまんで黒崎さんに話した。
巨根好きで挿入に至れなかった話は流石にどうかとは思ったけど、処女なら面倒くさいと思われて案外簡単に帰してくれるかななんて考えてた。
黒崎さんは俺の愚痴を延々聞かされた後も少し黙って考え込んで、ふと思いついたように顔を上げた。
「ひとつ、試してみないか」
「え、……なにを」
「リリの精神状態が安定すれば、不安がなくなるのかどうか」
「……へ?」
「その『メンヘラ』状態というのが、付き合っていた獣人の力量不足でそうなってたなら、リリのせいじゃないだろう?」
ダイニングテーブルから離れた黒崎さんが、笑顔で『おいでおいで』と手招きしてくる。
紅茶を飲み残したまま席を立ってついていくと、大きなテレビの前のソファに導かれた。
そこに腰を下ろした黒崎さんの股の間に、ちょこんと座らされる。
「獣人の落ち着かせ方はシンプルだ。……最も効果的なのがグルーミング。これを怠って伴侶を不安にさせたのだとしたら相手がアルファ失格だな」
「へっ?……え、え?」
上着は来た早々に全自動洗濯機に入れられてしまったので、オレはいま薄いシャツ一枚だ。
そのまま後ろから大きな腕に抱き竦められて、熱が近づく。
逞しい胸板がぐんと背中に当たって、耳元に吐息を感じた。
ビクッ、と身体が跳ねてしまってガチガチに緊張してたら、『身体の力、抜いて』と囁かれる。
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