17 / 38
6.騎士の盲愛②
しおりを挟むでも身分が違う、魔女だから、と言い訳のような言葉が続いた。アズレトはもう一押しと思い、ベッド脇の絨毯に跪いたままシャナの顔を覗き込んだ。
ぐっと顔を近付けるとシャナの目がぱちりと瞬いて、頬が薄く染まる。鮮やかな朱の瞳がわずかに潤んでアズレトを映した。
アズレトはこの顔がシャナの好みに合っていて良かったと心底思っていた。今までずっと忌まわしいとしか思っていなかった容姿が、初めて役に立ったのだ。
顔を近付けるとシャナは見惚れたような目でアズレトを見つめる。この一瞬のために今までの苦労があったのだとしたら、神に感謝したいとまで思っていた。
「俺は気にしませんが、貴女が気になるのでしたら、陛下との養子縁組を受け入れてください」
「……はい?」
「皇女となれば誰も貴女に文句は言えません。手出しもさせません。そして俺は、陛下に貴女の降嫁を願えます」
「こ、降嫁……?」
「許しを得て、触れる立場になるということです。……魔女殿、どうか今宵、貴女に触れることをお許しください」
柔らかな光沢の黒いドレスの膝に、アズレトは犬のように顔を乗せた。頬をつけて、斜めにシャナを見上げる。
シャナは先ほどよりも近い距離に動揺したように仰け反ったが、膝が押さえ込まれていてはそれ以上動けない。そして間近にあるアズレトの顔の扱いに困って手を彷徨わせていた。アズレトは空中に浮かんだままのシャナの手を取り、自分の頬に触れさせる。
それだけでは飽き足らず、顔を擦り付けて手のひらには口付けを落とした。
はあ、と甘く吐息を触れさせるとビクッとシャナの手が震えた。
「お願いです。貴女に触れたい」
「も、もう触っているでは、ないですか」
「どういう触れ方をしたいか、きちんと申告すれば許しを頂けますか?」
柔らかい手のひらの内側、親指の付け根にやんわりと歯をたて強く吸い上げる。アズレトの手とは比べ物にならないほど小さなシャナの手に、赤い鬱血が薄く刻まれた。
「ずっと耐えてきました。こうして貴女に俺の跡を刻みたかったのを、ずっとこらえてきたんです。この口付けを、貴女に刻むことを許して欲しい」
「は、……は、ぃ……」
耳まで真っ赤になって動けなくなったシャナは、ついにアズレトの圧に負け、頷いたのだった。
‡
「ンッ、ぁ、……アズレトさま、……そんっ、……そんなの、口付けじゃッ……あぁっ」
「口付けです」
シレッとそう答えながら、アズレトはシャナの胸に舌を這わせていた。シャナの着ているドレスは身体に合わせて紐で調節のきくもので、リボンをするりと解くと白い乳房がアズレトの前に晒された。眩しいほど白いシャナの肌に口づけたアズレトは、まだ床に膝をついたままだった。
二人の身長差であれば、ベッドに座ったシャナに下から食い付く角度で丁度良い。アズレトは胸に吸い付きながらもシャナの背中に手を回して、コルセットを緩めた。
シャナの着ているドレスは最近流行している胸元の大きく開いたスタイルで、アイボリーのレースが胸元とスカートの側面を覆っている。これを着たシャナが声をかけてきた時、アズレトは文字通り呼吸が止まった。
大げさではなく、心臓の拍が一度飛び、ぎゅうっと胸が苦しくなるほどの衝撃だった。舞い踊る朱い衣装ももちろんよく似合っていたが、そのドレスはシャナに着て貰うためにあったのかと思うほどだった。
長い黒髪に煌めく朱の瞳、長い睫毛が影を落す白皙の美貌は、何度でもアズレトを魅了する。見つめるたび新しい発見をして惚れ直し、力の限りに抱き締めたくなってしまう。……もちろんそんな乱暴をすれば傷つけるので、自重しているが。
アズレトはコルセットを緩めてからシャナの足元に屈み込み、小さな足から靴を脱がせる。まるで召使いのようなアズレトの様子にシャナが慌てて起き上がろうとするが、太腿をするりと撫でられてビクンッと硬直した。絹の薄い靴下は太腿のベルトでとまっている。それを外され、するすると素肌が露わになった。
「ぁっ、……アズレト、さまっ……!」
着替えの前に風呂で散々洗われてはいるが、躊躇なく足先に口付けられてシャナは慌てた。足先、足の甲、脛、膝、太腿と恭しく手を添えてアズレトの口付けが移動してくる。内ももの柔らかい場所に吸い付かれて跡が残されると、シャナは小さく悲鳴を上げた。
「はあっ、はぁっ……アズレト様ッ」
散々弄られ口付けられた胸をはだけさせたまま、上気した白い肌をアズレトの目に晒し、シャナは熱っぽく彼を呼んだ。
ぐうっと喉の奥で唸ったアズレトは、細い足首をそっと引いて両足を開かせると、ふわりと広がったスカートの中に顔を潜らせた。薄い小さな下着の真ん中が、しっとりと濡れている。
肌触りの良いその下着をするりと引き下ろし、股を押し開く。愛される事を期待したそこがアズレトを誘った。
「ぁ、あっ、だめ、ぁあっ……――ッ」
ちゅ、とはじめ軽くそこに口付けたアズレトは、すぐに舌を這わせて愛撫をはじめた。そこを舌で弄るのは初めてだった。いつもは香油を使って指で慣らしている。
シャナは未知の感覚に身体を震わせて、高い嬌声を上げていた。
「だめ、……ぁ、っダメぇ、……そんなの、口付けじゃっ……ないぃっ……!!」
「口付けです、魔女殿。ああ、今日はここにも、口づけて良いのですね……」
「あっ!……あぁっ!!」
プルプルと震えていたそこにアズレトが口づけた瞬間、シャナは仰け反った。
それでもアズレトは敏感なそこを責めるのを止めなかった。ガクガク震えるシャナの腰を抑え込みながら、舌を絡めていく。快感のあまり伸びきって震える華奢な足先が、アズレトの視界の端で揺れていた。
甘い嬌声に紛れて淫らな水音が絶えず部屋の中に響く。
その夜、一度も繋がらないままシャナは声が枯れてもアズレトに愛され続けた。
145
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる