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一章
元老院・4
しおりを挟むああこれで清々した、と魔王はすっきりした気持ちで玉座から立ち上がる。
魔王だって刺されれば痛いし、毒を飲んで吐血したら苦しい。
死に戻りを何度くり返しても、痛覚は消えてくれなかった。そんな思いを魔王に何度もさせてきたのだから、この魔族達はそれこそ50回分くらいは死ぬべきである。
そう考えたら、当然の報いではないだろうか?
『これより私は、お前達の主だ。……今度こそ、異存のある者はいないな?』
元老院の中でも残ったのは、魔王の魅了に骨抜きになって顔を真っ赤にしている者達ばかりだった。もちろん異存などあるわけがなく、コクコクと必死に頷くのを見て魔王は威圧を解いた。
『お前達の命は私が握っている。忘れるな』
言っている事は恐怖政治のようで、魔王自身もそのつもりでいたのだが。
謁見室は魔王の方をうっとり眺めて自慰をする魔族ばかりになっていたので、もうめちゃくちゃだった。
威圧が解かれてずりずりと魔王の前に這いずってきた一人の魔族が、縋るように魔王を見上げた。
『魔王様!お願いがございます!』
『……なんだ』
『お、おみ足で!その美しいおみ足で踏んでくださいませ!!』
え、なにそれこわい。なにいってるのこの人。
魔王は一瞬思考が停止して凍り付いたが、この魔族の男だけではなく次々と謁見室内の者が魔王の前に這いずってきた。
ちょっと異様な光景である。正直気持ち悪い。
『どうか踏んでください!』
『私も!!』
『私も!!!!』
こうして魔王は、即位の儀の間生き残った高位魔族の頭を踏みつけなければならなかった。
継承の儀からそのままきて裸足だったので、足は闇で巻いた。直接踏むのは気持ち悪かったからだ。
『……湯殿を準備をさせております魔王様』
『うん、ありがとうルカ。終わったら入る』
だいたいは踏まれて恍惚とした表情を浮かべながら『ありがとうございます!!』と涙するだけなのだが。
魔王が踏みつけると『うっ』と濁った声を上げて絶頂する魔族までいた。
これが見た目が恐かったり汚らしかったら耐えられなかったかもしれない。
高位魔族は見目麗しい者ばかりで良かった。
でも床に這いつくばった美青年が腰をガクガクゆらして魔王に迫ってくるのは、だいぶこわい。
早く終わらないかな、と思ってしまったのは魔王がまだ前世までの義務感や責任感などに引きずられていたからだ。
魔王はハッとした。今世は嫌な事はイヤと言って、やらないという選択肢があるじゃないか!
『もうここで、終わりだ。散れ。私は疲れた』
『アアッ、そんな魔王様!ご慈悲を!』
『どうして私が我慢して汗ばんだお前達の赤ら顔なんて踏まなきゃいけないんだ。汚らわしい。恥を知れ豚共が』
『あっ、あっ、その冷たい瞳!最高です魔王様!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!』
魔王が思いつく限りの言葉で罵倒しても、悦ばせるだけのようだ。
ルカが同情的な瞳を向けてくるのにも、ちょっと悲しくなった魔王だった。
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