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蜜月(番外編)
しおりを挟むギルバートと屋敷で過ごすようになってからも、鍛錬は欠かさずやってきた。朝は起きられないことが多いが、昼食の後は夕方まで鍛錬を行う。日課となっているそれをしないでいると何だか落ち着かないし、身体も鈍ってしまうと思うから。
もちろん、私に付き合ってギルバートも剣を持ってきて手合わせしてくれる。
昔を思い出すような、とても楽しい鍛錬だった。
学園に入ってからは時間が合わず一緒に鍛錬ができない事もあったし、夜は部屋に来てくれるけれど昔のように四六時中一緒というわけにもいかない。私はあの頃、言い表わしようのないもやもやした気持ちを抱えていた。
これは内緒の話だけれど、ギルバートは老若男女問わず人気が高かった。十代には見えないほど出来上がった身体に、マントを羽織るだけで本物の騎士みたいに立派に見える風格。そして愛用の両手剣を手に、その重さを感じさせない速度で斬り込む。訓練だとしても手を抜かないのがギルバートだ。その姿をぽーっとした目で貴族令嬢達が見つめているのを私は知っていた。
「ハル? どうした」
呼びかけられてハッと顔を上げると、すっかり装備を解いたギルバートが湯殿へ入るところだった。私はまだ鍛錬服のままで、慌てて紐を解き始める。スッと伸びてきた手にボタンを外され、その手を辿って目の前の相手を見上げる。
「何か気になることでもあったか」
「うん。……ちょっと思い出して」
「何をだ?」
「学園でのこと」
あっという間に私を裸にしてしまったギルバートは、恭しく手を取ると湯殿に導いた。備え付けのタイルのベンチに座ると、ギルバートが湯を汲んでかけてくれた。汗をかいた肌に、温かい湯が心地良い。
「学園で、ギルバートはとてもモテただろうなぁ……って」
「俺が?」
「だって、剣術の授業でもトップだったし、体術で敵う者もいなかったというじゃないか」
柔らかい布に泡を立てて、ギルバートが私の肌を撫でていく。こんなこと、本当は使用人のする仕事なんだけれど。ギルバートは、私の肌に触れるのは自分だけにしたいと言って、湯を使う時はこうして丁寧に洗ってくれる。
胸の尖りの上や下腹部を布で擦られると、少しだけ反応してしまうけど。ギルバートはあくまで作業として触れてくれるから、困った事態にはならなかった。
「俺は……どちらかと言えば嫌われていたな」
「えぇ?」
「必要以上に喋らず、愛想もなく、世辞も言えないんじゃ貴族からは嫌がられる」
「……うーん」
私と居るときのギルバートは、昔より喋るようになった。この調子では色んな人を惹き付けてしてしまうと思ったけれど、そうはならなかったらしい。
黙り込む私に優しく湯を掛けて、ギルバートは手早く自分の身体を洗った。ベンチに腰掛けたままチラリとそちらを見遣る。
日に焼けた肌に、くっきりと浮き出た筋肉のかたちが見えた。一部の貴族のように、飾りのようにつくった筋肉ではなく、実用的なそれ。いつ目にしても見惚れてしまう。
うっとりと目を向けていると、荒っぽく頭から湯を被ったギルバートかふるふると犬のように身体を震わせて水を払った。そして濡れた黒髪をかきあげると、じっと見ていた私に気がつく。
「ハル?」
「うん、ごめん。ギルバートの身体がすごく……その、逞しいから、見惚れていて……」
もう何度も身体を重ねて、今更だろうとは思うのだけれど。それでも、ギルバートの身体を見るのが私は大好きなんだ。
ふと唇を綻ばせたギルバートは、私の手を取って自分の首元へ導いた。ふらりと私はベンチから立ち上がる。
ぴた、と硬い筋の上に指が触れた。
「見るだけでいいのか?」
「っ……ギルバート」
「これは、お前のものだ。ハロルド。ハルが俺のものであるように。だからいつでも触って構わない」
私はおずおずと手を動かし、首から鎖骨へ滑らせ、分厚い胸板、割れた腹筋へと流していく。思わず顔を近付けて、肩の盛り上がった筋肉に口づけた。ぎゅっと腰に抱きついて、身体を寄せる。そして顔を上げると、目の前に笑みを浮かべる薄い唇があった。届かない距離ではないから、少しだけ踵を上げて口づける。
ちゅ、くちゅ、じゅ、ちゅぷ。濡れた音が響き、重ねた身体をお互いにまさぐり合う。口の中の粘膜が擦れると熱が凝って、腰が重たくなっていくような気がした。
「はぁ、……ぁ、……ぁんっ」
ギルバートの大きな手に尻を掴まれ、ぐりっと下肢を擦り付けられる。硬くなった股間が触れ合って、お互いの熱を感じ合う。そのまま、側にあったタイルのベンチに押し倒された。しかしギルはそこへは乗らず、ベンチの下のタイルへ膝をつく。
「ん、……ギル?」
「慣らさないといけないだろ」
「え……でも、指で……っ、あっ!」
いつもは指を挿入するのに、と思っていたらギルバートは私の足を掴んで持ち上げ、するりとうつ伏せに返してしまった。そして背筋をツッと撫でて私に尻を突き出させると、二つの膨らみを両手で割る。
「ひ、……や、ぁっ……ギルっ……」
会陰からアナルまでをねっとりと舐められて悲鳴が漏れた。アナルの皺のひとつひとつを伸ばすように丁寧に舐められ、唾液をすり込まれる。むず痒いような快感に腰が揺れて、私はタイルのベンチの上で身悶えた。
たっぷりと濡らされた穴に指が挿入される頃には、私の性器は完全に勃ち上がっていた。前立腺を指で押し上げられるたび、びくびくと震える尻にギルバートが軽く歯を立てる。かぷ、と甘噛みされて銜え込んだ指をきゅうっと締め付けてしまった。
背後でギルバートの笑う気配がする。声は出ていないけれど、きっと笑っている。
「ギル……」
「悪い。こんなところを噛まれるのも好きなんだな、ハロルド」
恨めしげな声を上げるとギルバートは宥めるように言いながら、私の尻の狭間に顔を埋めた。ふにふにと頬を寄せているけれど、楽しいのだろうか、それは?
ぐに、と軽く摘ままれた尻肉が唐突に放されてぶるんと震える。ギルバートは指で慣らした感覚を充分と思ったのか、猛った性器をゆっくりと押し入れてきた。
「あ、あ、っ……ぁうっ……ん、んんっ……ぅっ」
ずず、ずぷ、と潤った内壁を擦りながら太い性器が入り込んでくる。私は腰を高く上げてギルバートを受け入れながら、震える性器に手を伸ばした。限界に近い私の性器は片手で握り込むだけで射精してしまいそうなほど熟れている。
しかしギルバートは私の手を上から掴み、そのまま身体を起こしてぐいっと引き寄せるとベンチに腰を下ろした。
「――ッ!!」
ひく、と喉が震えたけれど声が出なかった。
ギルバートはベンチに座って、私の身体を自分の上に乗せている。がくんと体勢を崩した私の背を受け止めたのはギルバートの逞しい胸板で、それと同時に自重で奥深くまで性器がナカに押し入ってきた。
反射的に逃げようと身体を起こした私を、ギルバートは許さなかった。掴んだ股間をやわやわと握り込まれ、同時に太い腕で腰を拘束される。
ぐぐ、とさらに深く性器が貫いてくる。はっ、と小さく息を吐いて目を見開いた私は、ぶるぶると震えながら絶頂した。……射精は、していない。ただ中を突かれて、その衝撃でイッてしまったのだ。
ぼろっ、と目元から涙の雫が溢れた。
──気持ちいい。苦しい。気持ちいい、こわい、気持ちいい、きもちいい!!
は、は、と短く息をしながら私はさらにギルバートに身体を抱き込まれた。ぎゅっと小さく膝を抱えるように小さくなった私は、人形のようにギルの膝の上で為す術もなく震える。
ぐぷ、と結腸の中へギルバートの亀頭がめり込むのが判った。
イヤイヤと頭を振る私を抱き締めながら、ギルバートは腰を進めてくる。小さくしゃくり上げながら腰を浮かそうとすると、腹の上に大きな手の平を当てられて、ぐっと押された。
ひ、と息を飲んで私は身体を震わせる。
「は、ぁ、……うぅ……」
ぐ、ぐ、と腹を押されるたびに中にギルバートの猛った熱を感じた。じゅぷじゅぷと濡れた音を立てて抜き差しを始めた性器は、ひと突きごとに結腸の入口を解していく。そのうち、亀頭がめり込んでそこにはまりこんだ。きゅうきゅうと吸い付いて結腸がギルバートを逃さなくなったのだ。
「っく……」
耳元でギルバートが息を詰めた。私はもう快感以外の事を考えられなくなっていて、股間を覆うギルバートの手にすりすりと腰を押しつけていた。揺れるたび、ナカで太い性器を締め付ける。その存在を感じることが嬉しくて、気持ち良すぎて、堪らない。
「ぎ、る……ギル、……きもちぃ、……奥、きもちいよ……」
涙腺が壊れたのかぼろぼろと溢れる涙が止まらない。ギルの手が後ろから私の胸を揉み上げて、くにくにと乳首を摘まみ上げる。きゅ、きゅ、と指で弄られるたび私は後ろを締め付けた。
快感に溺れているのが判るのかギルバートは私を追い詰める手を緩めない。
力の入らなくなった胸の膨らみを、両手で掴み上げられる。そこを揉みしだきながらギルバートは下から突き上げてきた。
「ぁ、ひ、ああっ、あ、あっ!!……ひぁ、や、や、ぁああっ!!」
どぷ、と結腸の奥にギルバートの熱が吐き出される。さらに腰を揺らされ精液を塗りつけるように抜き差しされると、それからゆっくりギルバートが腰を引いた。ずるり、と引き抜かれた性器はまだ熱を凝らせているようだ。
ベンチの上に脱力して転がった私は、ギルバートの性器が濃厚なキスの後のように私のアナルと繋がっていたのを見た。白濁した糸はすぐに途切れてしまったが、それだけで私の中の熱は再びじわりと広がっていく。
「ギルバート、もっとして……」
「湯で流して温まってから、ベッドでしよう。風邪をひく」
「んん、……じゃあもう一回だけ」
「ハロルド……」
手を伸ばして掴んだギルバートの性器は、既に腹を突く勢いで猛っている。そんな様子が愛おしくて仕方なくて、私は微笑んだ。
「……ねえギルバート、きみは私だけのものだ。そうだよね?」
この逞しい身体も、たまに見せる笑みも、存外に優しいキスと荒々しい交わりも。
他の誰の目にも映したくない。私だけのものだ。
――ああ、学園にいた時私は、彼を見つめる視線に嫉妬していたのだと、気がついた。
「ああ。もちろんだハロルド」
「……なら、いいんだ。愛してるよ、ギルバート」
口付けをねだると、笑みを浮かべた唇が降りてくる。その首の後ろに両腕を回し、私はギルバートから与えられる濃厚なキスに酔った。
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