触手の苗床にされてた剣士を助けたんだけどエロさが半端ない！

番外編①

【ちびテンタ君の毎日】2

　大きめのパンにかぶりつくクロードは、幸せそうに笑っていた。
　元貴族であるクロードは熱々の食事をした事がない。貴人には火傷をしない温度の食事しか用意されないからだ。

　家でも、学校へ通ってからも、ずっと一人で食事をしていたので、こんな風に食事を楽しめた記憶は、ほとんどなかった。
　クロードは一口一口、噛み締めるように食事をする。
　嬉しくて堪らないというその顔を見るのが、ヴィンセントは好きだった。
　テンタクルボール達も同様である。

　ヴィンセントの手元にもクロードと同じ朝食が用意されているが、それは瞬く間にヴィンセントの口の中へ消えていた。冒険者は早食いなんだよ、とクロードには説明している。
　気にせずゆっくり食ってくれ、とヴィンセントはにこにこしながら食事をするクロードをずっと眺めていた。
　

　そもそも、植物系モンスターは光合成をするので、テンタクルボールは食事をしない。
　日の光と水さえあれば、人間のような食事の経口摂取は不要だった。

　そのためヴィンセントは、この五百年で食への興味をほとんど失っていた。
　クロードが目覚めたからだ。クロードとこうして人間のように過ごすために、ヴィンセントは食事をとることにしている。

　テンタクルボール達はこの『ままごと』のような空間を、守るためにここにいた。
　毎日、これから何月も、幾年いくとせこうして続くのだとしても、変わらず守り続けるために二人の旅についてきた。

「このチーズ、美味しいな」
「気に入ったか？ちょっとクセがあるだろ。ヤギのチーズだ。もう少し北よりの集落の名産品で――」

　クロードが目を輝かせて外の世界の話を聞きたがる。
　それに応えて話すヴィンセントは、目覚めを待つ間に積み重ねた年月を、ゆっくりと解いてクロードに与えていく。

「北は、いま行くならいい気候だな。そっち、行ってみるか？」
「そうしよう。ヤギも見てみたい」
「羊も山羊も、あと犬もいるな」
「犬？」
「牧羊犬だ。賢くて、かわいい」

　ヴィンセントは話しながら手早く焚き火の始末をして、テントも片付け此処に居た痕跡を消す。
　やり方は聞いていても一歩遅くて手伝えなかったクロードは、手乗りサイズのテンタクルボールを肩や腕に乗せてヴィンセントを振り返った。

「賢くて可愛いのは、うちの子もだ」
「ああ、まあ……世界樹と繋がった賢さはもう世界の唯一だ。無敵だろうな、こいつら」

　褒められたテンタクルボール達は次々飛び跳ねてクロードの近くを回る。
　円になってクロードの近くを飛び回る触手達の様子は、端から見たら異様ではあるのだが。
　ここではそれに違和感を覚える者はいない。

　出かけるぞ、とヴィンセントが声をかけるまでテンタクルボールの舞い踊りは続き、クロードは楽しそうに笑い声を上げていた。