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四話

2-7(クロード)

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「俺が、誰にも頼らなければ、ヴィノードは死ななかった。……ごめんなさい」
「おっと、俺に謝ってもな。んー、でも俺の感覚で言うと、ヴィノードはアレで満足だと思うぞ」
「満足?」

 顔を上げると、ヴィンセントの手が濡れて冷たい頬に添えられた。温かい親指が、するりと目元を撫でて雫を拭ってくれる。

「だってお前は生きてるだろう。対象を守れたなら、冒険者としてもそいつに恋してる身でも本望なんだよ。……だからお前は、ヴィノードを恨むならまだしも謝ることはないな」
「う、恨む…? 何故そんな、……」
「だってそうだろう。あいつはお前を置いてったんだ。……『大丈夫』なんて見え透いた嘘ついて」

 酷いヤツだろ、と顔を顰めてヴィンセントは言った。
 そして改めて俺の身体を抱き締めると、『俺なら絶対にお前の手を離さない』と言って髪に顔を埋めてきた。ちゅ、ちゅ、と軽く頬や耳朶に口付けられて首を竦める。くすぐったくて、びくんと震えてしまった。

 触れられるのが心地良くて、無意識に身体を捩ってしまう。ヴィンセントはニヤリと笑って俺の腰を抱き込んだ。尻の狭間にすりすりと無骨な指が入り込んできて、『…ぁっ』と小さく声を上げてしまった。アナルがじわっと濡れていく感覚がある。

 ヴィンセントとは毎日身体を重ねているせいで、こうして少しのことでも俺は簡単に発情してしまう。アナルをぐっしょりと濡らして入口をヒクつかせ、ヴィンセントのモノが欲しいと腰が無意識に揺れた。身体を擦り付けるようにして甘えると、ヴィンセントは愛おしい者でも見るような表情で笑み、俺の身体を開いていく。

 ヴィノードとは、こんな淫らな事は一度もしていない。
 気持ちはあっても、あの頃の俺達にはその勇気がなかった。だから、あくまで俺はヴィノードに片恋をしていただけで、彼を汚すようなことは出来なかったんだ。彼の真意は、今となっては判らない。

 ……でも、ヴィンセントは違う。

 はじめから俺のために用意された、相手だった。苗床になった俺の胎を、優しく、強く、念入りに解して突いて、精液を注ぐ役割を担った男だ。それなら義務的に精液を注げばいいだけなのに、毎回丁寧に愛撫をして恥ずかしい声を上げさせてくる。
 甘くて苦しい快感で狂いそうなほど泣かされて、涙でぐしゃぐしゃになった顔をしていても、『ほんっとに可愛いなお前は』と蕩けるような声で囁いた。
 ヴィンセントの性器で貫かれると、胎の奥がきゅうっと切なくなる。
 奥まで突き上げられて結腸口を出入りされるのも、前立腺を執拗に捏ねられるのも、奥に収めたまま動かず尻や胸を揉まれるのも、全部気持ちが良い。
 弄られ過ぎて育った乳首はヴィンセントが好む薄紅色で、尻の肉付きも揉まれ続けたせいか前より少し良くなった気がする。

 この身体は……この『クロード』は、ヴィンセントのために存在していた。ヴィンセントに抱かれるため、好まれたくて、ここにある。
 それが、それだけが今の俺の望みだ。他にはなにも、要らない。

「俺は嘘はつかない」
「……ヴィンセント」
「本当だ。賭けてもいい。……俺はお前に偽りを吐かない」

 ヴィンセントは俺の瞳を見つめて、目を細めた。真剣なその色に、言われる言葉の予想がつく。
 ああ、判っている。そんな望みは俺だって持っていないよ。今度こそ、貴方の生きる道を閉ざしたりしたくないのだから。

「――俺は、必ずお前より先に逝く。これは揺るぎない事実だ。それでも、俺はクロードのことが好きだ。『同じ者』になってやることはできないが、変わらずお前を愛している」

 もちろん、判っている。
 溺れるほど貴方に抱かれた、それだけで俺の望みの大半は叶えられてしまったのだ。これ以上など、望まないとも。
  

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