【短編まとめ】おっさん+男前+逞しい受詰め合わせ

天城

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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。

二十七話

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「行くぞお前らァ!!」

 大斧を一振り、声を張り上げる。

 後続の騎士達が揃って威勢良く応え、俺に続いて山の斜面を滑り降りていく。
 馬もなく、騎士らしい金属鎧もない。手にした武器以外は革装備という冒険者のような姿で、騎士達は街道を進んでいた敵国の部隊の横っ面に総攻撃を仕掛けた。

 片側は切り立った崖、もう片側は馬も進めない鬱蒼とした森。街道といってもここは一番道幅が狭く、軍隊はその隊列を細長く伸ばさなければ進めない。

 まずは敵部隊を前方と後方、二つに分断する。片側は来た道を戻り、もう片側はあわてて街道を先に進んでいった。
 俺達の役目は双方を追い立てることだ。身軽な装備は崖を降りやすくするためと、もう一つ。森の中に入り込んでも自在に動けるように、だ。

 俺達は敵部隊が体勢を立て直そうとする度に、森に逃げ込みそこから弓矢や飛び道具で追い立てていく。ついでに俺は斧を振り回して威嚇の係だ。一番の適任だろ、これ。

 前方に逃げた部隊は、そろそろルーファスのいる槍部隊と接敵している頃だろう。そして元来た道に撤退していった部隊の後方には、レヴィ騎士団長の部隊がいる。

「お、雷だ。はじまったな。おーい、退避しろー巻き込まれるぞー」

 俺がのんびり声をかけると、冒険者装備の騎士達は楽しそうに集まってきて、木の上に昇って観戦をはじめた。
 前方からは白銀の稲妻が走り、空気がビリビリと振動していくのが判る。また後方からの雷撃は地面を揺るがすようで、まさに天災といえそうな攻撃だった。

 逃げ惑う敵兵がなんだか可哀想になってくる。

「ばかだなあ、あいつら。開戦してホントに勝てると思ってたのかな」
「騎士団長の噂だけじゃなく、ルーファス様の強さももう伝説級なのに」
「ばかだよなあ~」

 きゃらきゃらとお喋りしている騎士達は、まだ10代の若い奴らだ。崖を降りる部隊ということで、身軽そうで元気なのを見繕った。その中には、元盗賊団だったガキもいる。そいつらは俺の方をチラッと見ると目配せで合図したり、知らぬフリで話しかけてきたりする。なかなか強かで、順応性のあるやつらだ。頼もしい。

「こりゃあ予想より早く終わるなァ……レイモンド卿の出番はないな」

 あまりに上手くいきすぎて、保険をかけていたのが無駄になりそうだ。俺が前後の状況を見ながら呟くと、喋っていたガキ共がまた声を上げた。

「えっ、レイモンド卿かわいそう。転移魔法でせっかくこんな辺境まできたのに」
「昨日なんか作戦きいて『俺の手なんていらないんだ』って部屋の隅で膝抱えてたのに」
「……お前ら、レイモンド卿は偉いんだからな?少し敬えよ?」

 それ確かに俺も見たけどよ。あの人何歳なんだっけなあ。
 ため息をついて俺は首にかけていた笛を引っ掴んだ。肺いっぱいに息を吸い込み、全力で吹くと空気の抜けるような音がする。これは特殊な笛で、この音は各部隊に配られている装置の水を赤や黄色に染める。のろしだと敵にも見られてしまうが、これなら遠距離での意思疎通が可能になるという代物だ。

 今吹いた笛は、作戦の成功を意味するもの。残党がいれば狩り、部隊の合流を促すのが目的だ。

「お前ら行くぞー。ついでに森通って晩飯の肉でも狩るか」

 わーい、と歓声を上げてついてくるガキ共の笑顔は、どいつもこいつも変わらない。平和な王都で生まれようと、劣悪な環境で盗賊団に拾われようと、ガキはみんな一緒だ。こういうのはなんだか面白いなと、俺は唇の端を上げて笑った。






 ルーファスの従者として雇われることになった俺は、毎日ルーファスと共に騎士団の詰め所に出勤することになった。
 ルーファスはずっと家に居ていいと、仕事なんてしなくていいと言っていたが、それはちょっと残酷だろう。矜持を奪う、という罰だっていうんなら受けるしかないが。それを言ったら渋い顔で働くことを許してくれた。自由なザザが好きだから、と。

 騎士団でよく顔を合わせるようになったのが、件の騎士団長と、その恋人のレイモンド卿だ。ハーフエルフとは聞いてたが、二人とも認識阻害の魔法を解くと超絶美形だった。眩しいくらいのキラッキラのピカピカだった。





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