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騎士団のエースに捕縛された盗賊の頭領ですが尋問も拷問もなく囲われて溺愛されています。
一話
しおりを挟むここが貴方の部屋です、と言われて通されたのはベッドと机があるだけの簡素な部屋だった。しかし一人部屋にしては広すぎるし、平民にとってはテラス付きの窓など見たことがない代物だ。
一瞬呆気にとられて動きを止めた俺に、騎士服のままの男はエメラルド色の瞳をやわらげて微笑みかけてくる。見惚れるほどの美丈夫が目の前にいるのも現実味がないが、言われた事の方がもっと不可解だった。
ここが俺の部屋って、何言ってんだお前は?
「気でもおかしいのか?」
「いたって正常です」
「牢屋には見えねぇんだが?」
「当たり前です。ここは私の家ですので」
「はぁ?てめぇの家ぇ?」
この屋敷に入る前に、捕縛用の縄はとっくに解かれていた。
逃げ出そうとしても捕まえられるという自信の表れかと密かに冷や汗をかいていたが、目の前の男は隙だらけに見える。もういっそ逃げちまおうか、と一瞬魔が差したが小さく唸って俺は動きを止めた。
こちとら名の知れた盗賊団の頭領で、こいつは王都の犯罪を取り締まる騎士団のエースと呼ばれている男だ。馴れ合うどころか正反対、火に油……じゃねぇ、水と油みてぇなもんだ。混ざり合うはずがない。
それなのになんで家に俺を連れ込んでるんだよこいつは。――これで気が触れてねぇって、なんの冗談だ?
「私は貴方に勝ったので」
「っぐ……」
「貴方は私のものですよね?」
「……」
ぐうの音も出ない。確かに俺はこいつの『戦利品』だった。
騎士団の人数と武力があれば盗賊団の一つや二つ簡単にぶっ潰せるくせに、こいつはわざわざ一騎打ちを挑んできた。俺はそれを真っ向から受けて立って、そして負けた。
それが俺の、今の状況だ。
苦虫を噛み潰したような俺の表情に楽しげな笑いを零した男は、俺の腕を引きエスコートでもするような仕草で……ベッドに押し倒した。そのあざやかな手並みに抵抗も忘れて天井を見上げる。
このベッド、めちゃくちゃ柔らかいな。見た目の簡素さに騙されそうだがちょっといい品だ。こんなベッドで寝たらよく眠れそうだなと思ったところで思考が現実逃避から戻ってきた。
……いや待て。ちょっと待て。
「な、……オイ……何だ?」
しなやかな手が、ぐいっと俺の額にかかったざんばらな黒髪を掻き上げる。俺の右目は眼帯に覆われているが、男は恭しくその革の眼帯の表面に口づけてきた。
「ようやく、……」
「んあ?」
「ようやく手に入ったんです……確かめさせてください」
「はあ?なに訳のわからねぇことを……って、オイ!!」
シャツの下に男の手がごそごそと入ってくる。脇腹から腹筋にかけて、直接身体を撫でさすられて、くすぐったさにぞわりと肌が泡立った。
自慢じゃないが俺の身体は傷だらけで、どこも酷い有様だ。男にとっては勲章といえる傷でも、見目はあまり良くない。
盗賊団の頭領は忙しいし危険と隣り合わせだった。魔獣や騎士、冒険者や同業者、色んな相手と斬り結び、俺の身体は大小様々な傷で覆われていた。それに食事も若いモンやガキ抱えてる女達に食わせるほうが先で、栄養の回りきってない肌は日焼けして浅黒くかさついている。こんな身体撫でて何が楽しいのだか。
目の前の男はうっとりとした表情で、俺の胸に走る大きな白い傷痕に指を滑らせた。そしておもむろに両手で左右の膨らみを掴み、揉み始める。毎日の実戦と、それなりに鍛えている俺の胸筋は結構立派だ。ガキの三、四人は腕に引っかけて回れるくらいには。
その胸筋を男の白い手が掴み、両手で揉み上げてこね回す。さらには、ちゅうっと乳首の先に食い付かれて強く吸い上げられた。慣れない刺激にビクンと身体が震える。途端、もう片方の乳首を指で捻られて息を飲んだ。
「オイ、やめろ!なんのつもりだ!」
「――なんの、とは?」
「いや、……なんでてめぇは俺の胸揉んでるんだよ」
本当は、判りきっていた。俺はベッドに押し倒されていて、乗り上げてくる男の股間はハッキリと盛り上がっている。服を半分剥かれて腹を晒し、こんな風に乳首を弄られていて他に何の意図があるっていうんだ。
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