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スパダリ領主様に雇われたおっさんシーフですが、夜伽は業務範囲外です!
番外編『本日もストレスフルな領主様の癒し』
しおりを挟む「レイモンド、ここに居たのか」
「んぇ?」
俺は肉団子のスープを啜りながら、呼ばれて顔を上げた。
開いた戸の向こう側に雇い主――もとい、ご主人様であり領主様であるジェラルドが、安堵したような表情で立っている。しかも余所行きの格好で、えらく着飾っていた。
あれ、俺なんか呼ばれる用事とかあっただろうか。雇い主との約束忘れてたとか無いと思うんだが?
俺は持ち上げていた椀を机に置いて、パタパタとパン屑のついた手を払った。勿体ないが食事はここまでかもしれない。まあ八割食い終わってるけどな。
ジェラルドの護衛隊には詰め所があって、さらに専用の食堂まで持っている。服はお仕着せのようなのが一式用意されるし、防具も武器も支給品だった。とんでもない太っ腹だ。王都の騎士団じゃねぇんだからよ。最初聞いた時は驚きを通り越して呆れてしまった。
あの最初の警護依頼から約一ヶ月後、俺は正式に専属雇用となった。まあやる事は変わっちゃいないんだが。一応、今日も他の護衛達に混じって詰め所に出勤して、横の食堂でメシを食っていたところだ。
スパイスのきいた肉団子スープにパン、というシンプルなものだが、スープには根菜がたっぷり入っているし、肉団子がデカくてかなりボリュームがある。しかもお代りし放題だ。ここは天国なのか?
冒険者暮らしが長かったせいか、あまりの好待遇に最初はドン引きした。しかしヒトというのは環境に慣れるもので、これはもうその日暮らしの生活には戻れねぇな、と思いながらメシを食っていたところだった。
「レイモンド」
「はい」
「部屋にいなかったから探した」
「そりゃ……すんません」
そんで何の用事なんでしたっけ。聞くのがちょっとこわい。
そういえば、こんなところまでジェラルドが来るのは珍しいのか、他の護衛達がざわついている。
そのうち、俺のすぐ横にいた一人が、ハッと何かに気付いて席を立った。
「えっ?」
素っ頓狂な声を上げた俺の前後左右で、ザッとみんな立ち上がる。そして一斉に食事の器を持って移動した。急に俺の回りだけぽっかりと空間があく。
「えっ?えっ?なんだ?」
「レイモンド……」
ジェラルドは入口から真っ直ぐに俺の座っている席までやってくると、急にふらりと前に倒れ込んだ。驚いて両腕を抱き込むように伸ばす。ぽすんとジェラルドの頭が俺の胸にぶつかってきた。
ぎゅうううぅ。
すごい勢いで抱きつかれた。結い上げた銀髪が乱れるのも気にせず、ぐりぐりと頭を擦り付けてくる。そして極めつけには俺の胸筋の間に顔を埋めて、スゥー、と深い呼吸を始めた。
待て待て、吸うな。マジで吸うなやめろ!
「ちょ、あの、待っ……オイィ!!」
「レイ。大人しく」
「いや、でも……」
邪魔とばかりにブチブチとシャツのボタンが外された。むきっと露出させられた胸筋がジェラルドの前に差し出される。そこにまた、ぽすりと顔が埋まった。
ええぇ?ボタン飛んでんだけど?正気かこいつ?
「……疲れたんだ」
「はあ」
すりすり、と直に俺の胸筋に顔を埋めたジェラルドが、ぽつりと呟いた。すると後ろの方で気配を消していた護衛達が次々に声を上げる。
「レイモンド、今日ジェラルド様は王宮の呼び出しだったんだ」
「王宮の呼び出しはだいたい小言」
「それか無茶な援助の要請だよ」
「援助とは名ばかりの実質、搾取だけどな~」
ダンジョンに一緒に潜ったこともある護衛達が何か言っている。王宮に行ってたからヤケにめかし込んでるのか。髪も結い上げているし服も上等な絹に金の刺繍がされている。顔がいいからそんな服も似合ってはいるが、肩が凝りそうだ。
ふむふむなるほど?領主様は公務でお疲れってことな?
「……お疲れ様でした、ジェラルド様」
長い銀髪を梳くように撫でて乱れを直し、ぎゅっと抱き締めてみる。
すると俺の胸に埋まっていたジェラルドの頭がぴたりと止まった。硬直したように動かなくなったのが気になって、顔を覗き込んでみる。
――うわあ。真っ赤だが?耳まで真っ赤っかだがどうした?
「ママみ溢れる抱擁にノックアウト~」
「さすがレイモンド~」
「よっ、世界一の癒しおっぱい」
「けしからんおっぱい大賞」
やんやと後ろから声がかかる。お前ら元気だなオイ。相手は雇い主だぞ大丈夫か?
俺はため息をつきながらいつものツッコミをする。
「おっぱい言うな。筋肉だぞこれは」
「だってな~もうおっぱいじゃん」
「そうそう。もともと肉付きは良かったけど変わったよな」
「ムッキムキがむっちむちになってる」
「それな」
好き放題言ってやがる奴らに反論しようと口を開いたところで……俺はびくりと動きをとめた。さわさわと揉むだけだったジェラルドの手が、乳首まで摘まみ始めたのだ。
「レイ」
「っ……ぁ、……ちょ、……ここで!?」
「……レイ」
「んっ、ぁ、……ひっ、ぅ、……待っ……待てって!あ、ぁんっ!」
じゅうっ、とジェラルドの口が俺の乳首と乳輪をまとめて吸い上げた。唾液を絡め、弄られ過ぎて肥大した俺の乳首をびしゃびしゃに濡らしながら舐めしゃぶってくる。
思わず高い声を上げてしまって、慌てて口を押さえた。
ここは食堂だぞ!?何考えてんだ?
「あ、お気になさらず~」
「ごゆっくり~」
「俺達が移動しまーす」
「巡回でも行ってきまーす」
バタバタと食堂に詰まっていた護衛隊が全員部屋を出て行ってしまった。
いや、オイ待て置いて行くな俺を!置いて行かないで頼むから!
「ジェラルド様、……あの、せめて部屋で……」
「もう少し」
「んっ……でも、ぁ、……ひ、っんっ……あぅ、……んっんっ」
腰がくだけそうになって、側の机にぶつかる。ジェラルドは俺の身体をテーブルに押し上げて仰向けにすると、さらにシャツを大きく開いた。
いま、ビリって音してんですけど。ふつうにボタン外しても良くないっすかね?
そんなツッコミは入れられるはずもなく、ジェラルドは夢中になって俺の胸を両手で揉みだした。頬ずりをしながら乳首を口に含み、甘噛みしては舐めしゃぶる。
それから、すりすりと腰を撫でまわしながら降りてきたジェラルドの手が、今度は尻を揉み始めた。これはやばい。マジでヤバイ。
このままでは食堂で一発始まってしまう。厨房にはおばちゃん達もいるのにどういう羞恥プレイだよ。勘弁してくれ。
「ジェ、ラルド、さまっ……と、となりっ……」
「……うん?」
「となりに、更衣室、が、あってっ……」
息も絶え絶えにそれだけ言うと、ジェラルドはようやく顔を上げて状況を理解したようだ。それから俺の腰を抱いて立たせ、やっと隣の部屋に移動してくれたのだった。
‡
パンッパンッ、と聞き慣れた性交の音が響く。乾いた肌が触れ合う音と、粘着の擦れ合う音が断続的に続いていた。
「っん、ぁ、……ぁ、ひ、……っく、……っん」
先程、更衣室に入るとジェラルドは一番奥の窓際まで移動して、俺をその窓に押しつけた。そして有無を言わさずベルトを引き抜き下着ごとべろんとズボンを引き下ろしてケツを露出させてしまった。……そっから先は、いつものコースだ。
尻を揉まれながらそこを舐められたり、乳首も散々弄られまくって、やっと貞操帯の鍵が外された。
ムワッと湯気が立ちそうなほど熟れた俺の股間は、ガチガチに勃起していて、ジェラルドの手に撫でられただけでだらだらと涎を垂らした。先走りを指に絡めて俺のアナルを軽く解すと、ジェラルドはすぐに性器を押しつけてきた。
パンッ、と一度奥まで突かれればもう、ダメだった。理性なんかぼろぼろの紙くずみたいで、漏れる嬌声が堪えられない。
潤いが足りないせいで少し引き攣れたように痛むのも、逆に心地良い。背後から被さるように腰を押しつけられて、俺は目の前の窓に縋り付いた。
ぐいっ、と後ろから背を押されて何だと思って振り返る。ふ、と笑ったジェラルドが汗に濡れた髪を色っぽい仕草で掻き上げる。
「向こうから眺めてみたいものだな」
「……なに?」
「窓だよ」
頬を押しつけてひんやりと冷たい窓ガラスを楽しんでいた俺は、そちらを振り返った。窓の外から眺めたいって、ヤってるところをか?
窓に押しつけられた俺は、シャツを千切られたせいで汗の滲む胸をぎゅうぎゅうとガラスに押しつけていた。向こうからは、ひしゃげた乳首と赤く染まった胸筋が、みっちり詰まったように見えるだろう。
そこまで想像してみて、俺は頭を抱えたくなった。変態だ変態だと思っていたがやはりこいつはド変態だった。これを見越して窓に押しつけてたのか。
「気に入らないか?ほら、丁度外を通る……」
「……はっ!?」
見れば、さっき巡回に出ると行っていた護衛達が外を歩いていた。こちらにはまだ気付いていないようだが、俺は焦ってカーテンの布を引っ張った。
「レイ、……」
ジェラルドが何か言おうとした時、外から護衛達の雑談が聞こえてきた。
「俺、実はジェラルド様がレイモンドを寝所に呼んだって聞いて……逆だと思ったんだよな……」
「うわ、命知らず」
「いやー思うだろ。だってレイモンドだろ?だいぶ男らしくないか?」
「そりゃ見た目は厳ついけどさあ。おっぱいがさあ~」
「まあおっぱいには抗いがたいけどよ……」
「それな。最近護衛隊の大浴場にも来なくなっちまって寂しいけど」
「あー……それさあ。噂だけどさー」
あ、この話題。嫌な予感がする。マジで、そこでやめろ。マジで止まれオイ。
「ジェラルド様が、大浴場に行かせたくなくて剃ったって聞いたんだよな」
「……剃った?」
「そう。脇毛から、胸毛、すね毛にうで毛、股間もつるっつる。ケツ毛もつるっつるよ」
「うわあ……」
「そりゃあ大浴場来れないわ」
同情じみた声音でみんながしんみりしている。
まて、同情されても困るだろうが。
「支給品のブーツ履くとき、すね毛がつるっつるでも俺気付かないフリするわ」
「俺も」
「俺もー。袖の短いシャツで腕上げたとき、脇がつるっつるでも知らないフリする」
「ケツ毛も股間も見る機会はなかっただろうけど、レイモンドの毛の冥福を祈ろう」
いや祈られても困るわ!何考えてんだお前ら!
「……護衛達と仲が良くてなによりだ」
そんでアンタはちょっと寂しそうにするんじゃねぇよ!全然しんみりする要素ねぇだろ、ケツ毛の話してんだぞ?聞いてたか?
「んな、ことよりっ……つづき」
はぁ、と吐き出した息には熱が籠もっていて、ガラスが白く曇った。ジェラルドは驚いたように瞬きをして、それから嬉しそうに唇を綻ばせる。
「そういえば興味深い事を言っていた。逆だと思ったそうだが?」
「アンタ、変態だが顔だけはいいからなあ……」
「抱いてみたいと?」
「いいや。……俺が、アンタに抱かれたい」
近づいた顔に、そっと囁きかけるとジェラルドはギラギラと欲の滲む瞳で見つめ返してきた。噛み付くようなキスは、狙い通り。
――それから場所を変えて、ジェラルドの部屋で夕方近くまで可愛がられたのは、まあいつもの事っちゃいつもの事だった。
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