上 下
27 / 62

第八話-4

しおりを挟む



 脱力してぼうっと見上げていたら、大きな手に頭をくしゃりと撫でられた。じんわり温かい感じがする。
 いやそれよりも眠い、とてつもなく眠い。今にも寝入りそうなくらい疲れていて、瞼がくっつきそうだ。

「……ねむい」
「おう。後片付けはしといてやるよ。……おやすみ」
「おやすみ……」
 
 ことん、と気を失うように眠って、俺は日の出の時刻までぐっすり眠ってしまった。








 
 翌朝マグナスに抱き込まれたまま目覚め、俺は大いに困惑した。
 俺は裸で、マグナスの胸の上にのっけられて寝ていたのだ。マグナスの立派すぎる胸筋を枕にすやすやと、さらには両手で豊満な胸筋を掴んだまま寝ていたらしい。
 ふに、ふに、と目覚めた瞬間から乳揉みを始めてしまった。無意識にだ。

 昨夜されたことを考えると、乳揉みくらいでは割が合わない気がする。好き勝手されたが怒る気がしないのが不思議だ。

 では朝から乳首開発でも……と思い目の前の乳首に食い付くと、クックッと笑う振動に頭が揺れた。あと笑うだけで胸筋に力が入るのか鉄板みたいに硬くなる。

「マグナス、だめだ硬くするな」
「お?朝っぱらから煽ってくれるな。どーら、もう一発くらい抜いてやるか」
「……」
わけぇんだからいけんだろ?」
「お前こそ年齢のわりになんでそんなに元気なんだ」
「褒めるなよ。トシもせいぜいお前の倍くらいのもんだぞ。枯れるには早い。……てわけでもう一回な。別に俺のをぶち込もうってわけじゃねーから安心しろ」
「黙れ」
「え、朝勃ちしてないのか……?うそだろ?その歳で?」
「だーまーれー」

 もう枯れてんのか、といらぬ疑いを掛けられて頭痛がした。
 いい加減にしろと拳でマグナスを黙らせ、俺は訓練に遅れることなく身支度を整えることが出来た。




 
 実はこの訓練の意味だとか、どこまで王国の未来や危機を知っているのかとか、聞きたい事は山ほどあった。『大団円』を望んでいるアデラのことだ、人々の生活に関わる『予言』は黙ってはいられないだろう。

 ただ、この国が滅ぶ、他国に蹂躙される、そんな滅びの予言は滅多なことでは口に出せない。
 下手をすれば捕らえられて首を落されかねないからだ。

 しかし少なくとも国の中枢にいる頭の良いヤツが、予言を信じている。そして使える人材を集め訓練しようとしているのは判った。
 マグナスに関しては、俺についてどこまで知っているのか、それが聞きたかったんだが。

 どれも聞く暇がなく、俺は自分のテントに戻らなければならなかった。
 そろそろ天幕の外で人が活動し始める音がしている。

「……マグナス」
「おうよ」
「俺は何があろうと、どんな相手だろうと勝ちを譲る気がない。未来においても同様だと考えておいてくれ」
「……。そうかよ」

 晴れやかに笑う赤髪の男は、なるほど見惚れるほどの良い男だった。
 アデラに言われるまでもなく、普通に出会って話していたら、そのまま気の合う仕事仲間になれたかもしれないな。

 漠然とだが、……攻略対象でなくとも、俺はたぶんこの男を欲するだろうなと思った。それくらい手元に置いて心地良い相手だった。
 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...