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第一章 幼女エルフの偏屈ルーコ
幕間 お姉ちゃんの独白
しおりを挟む私には少し年の離れた妹がいる。
まだ小さいけど、とても賢くて可愛くて、少し捻くれてる自慢の妹。それこそ私の命に代えてでも守りたい程に大切な存在だ。
けれど少し前、まだあの人が生きていた頃は正直、妹である彼女をそこまで大切な存在だとは思っていなかった。
妹に聞かれた時は思わず否定してしまったけど、当時の私はあの人の事が大好きで、それ以外は二の次……何よりもあの人との時間を大切にしていた。
もちろん、その時も可愛くて大事な妹だという認識はあったけど、命に代えられるかと聞かれれば答えに詰まっていたと思う。
そんな私の認識が変わったのは言うまでもなく、あの人が亡くなった日だ。
運ばれてきた死体があの人だと分かった時、私は感情のままにただ泣きじゃくっていた。
あの人が死んだという事実を受け入れたくなくて周りが見ているのも、それを見て逃げ出した妹も無視して必死にすがりついていた。
泣いて泣いて泣いて……ようやくあの人の死を受け入れた私に待っていたのは大きな喪失感と失う事に対する圧倒的な恐怖だった。
……あの子は私の事を優しいと言うけれどそんなわけがない。
そう見えるのはきっと他のエルフ達が総じて物事に無関心だから……それで相対的に私が優しく見えるのだろう。
でも実際は違う。私はあの人を失った喪失感を埋めるために利用しているだけ、あの人の代わり……いわゆる代償行為だ。
あの子を大切だと思う事で喪失感を埋め、失う恐怖に怯えるから過保護になる。治癒魔法を覚えたのも、強くなったのも、全部自分のため。喪失感を味わいたくないから。
そんな自分よがりの私が優しいわけがない。
だからあの子に優しいと思われる度に私の心は罪悪感でいっぱいになって苦しかった。
魔法の練習に無理矢理付き合い、必要以上に厳しくしたのも、その罪悪感から逃れたかったからで、とてもではないがあの子のためとは言えない。
けれど、そんな私の自分よがりをあの子は受け入れてくれた。私があの人の事を思い出している事を察して話も聞いてくれた。
きっとあの子は否定するだろうけど、私なんかよりもあの子の方がずっと優しい。
それにあの子はいつの間にか私の予想を越えて強くなった。もう私が見ていなくても大丈夫だと思える程に。
……だから私はそれが分かった時、代償行為を止めようと決めた。あの子が望むなら外の世界に行く事も応援しよう、見守ろうと思った。
可愛くて優しくて強い私の妹。あの子のためなら命も賭けられるというのは今でも変わらない。
代償行為を止めてもあの子は……ルーちゃんは私にとって一番大切な妹だ。
何があろうとそれは変わらない。私はルーちゃんが幸せに生きててくれたらそれでいい。
━━たとえその未来に私の姿がなかったとしても。
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