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大切な物の為に
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「ねぇお兄ちゃん、こんなに買ってお金大丈夫なの?」
妹の和葉が、大好物のコンビニメロンパンを抱きしめながら言った。
「大丈夫大丈夫。和葉は金の事なんて気にすんな」
そう言って俺は、和葉の綺麗な髪を撫でる。
すると和葉は、メロンパンなんかもりも嬉しそうに上目遣いで俺に微笑みかけた。
…俺の家は、貧乏だ。
母親は和葉を産んだ後病気で他界し、父親はその反動からか、俺に手紙を書いて自ら命を経った。
その手紙には、「リク、お前は俺には勿体ないくらいに出来た子だ。だから和葉の事を頼んだぞ」と、涙で滲んだ文字で書いてあった。
…ふざけるなと思った。
なんで……なんでそんな事言っておいて、自分から命をたったのかーー幼い和葉を残して。
本当に、ふざけるなと思った。
ーー「ねぇお兄ちゃん、今日はとっても贅沢な夕食だね!」
和葉が天使のような笑みを浮かべ、先程買ったメロンパンを大事そうに抱きしめながら言った。
メロンパンなんていつぶりだろうか。
思えば父親が死んでから俺は、1度も食べていなかったと思う。
まぁ────────
「だな。和葉、それは和葉のものだから、遠慮せずに食べていいからな」
俺はそれでもーーメロンパンなんかよりも、この天使のような笑みの方が好きなのだが。
「本当に良いの…?」
「もちろん」
父親を亡くして家が貧乏になってから、和葉は少し贅沢なものを食べようとするといつも、この様に聞いてくる。
贅沢なんていい。俺は和葉が居ればーー食べ物なんてなんでも良いのだ。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
そう言って和葉は、嬉しそうに鼻を鳴らす。
ゴゴゴゴゴ
ふと、地面が揺れた気がした。
「?」
不思議に思い俺は、隣をてくてくと嬉しそうに歩いている和葉に視線を送るが、和葉はなんとも無いようで。
そりゃそうか
こんなコンクリートで覆われた地面が揺れる訳が無い。
もしそうだとしても、近くに電車でも通っただけであろう。
そう思うと俺は、そのまま考えるのを止める。
和葉がこんなに嬉しそうなのに、和葉意外の事を考えるなんて勿体ない。
こういうのを世間ではシスコンと言うのだろうか。
俺がそんな事を思い、結局なんか色々と考えていると。
「お兄ちゃん、鍵は?」
いつの間にか家に着いていた様だ。
俺は1度和葉の手から自分の手を離し、鍵を取り出すためズボンのポケットにそれを突っ込んだ。
すると生地の薄い安物ズボンだからか、程よく生ぬるくなった飾りのない鍵が当たる。
「ちゃんと手を洗ってから食えよ、和葉」
「うん!」
言いながら俺は、鍵穴に刺さっている鍵を回し扉を開けた。
ドタドタドタ…
待ってましたと言わんばかりに和葉は、ポイポイと靴を脱ぎ、手早く洗面所に走っていく。
妹の和葉が、大好物のコンビニメロンパンを抱きしめながら言った。
「大丈夫大丈夫。和葉は金の事なんて気にすんな」
そう言って俺は、和葉の綺麗な髪を撫でる。
すると和葉は、メロンパンなんかもりも嬉しそうに上目遣いで俺に微笑みかけた。
…俺の家は、貧乏だ。
母親は和葉を産んだ後病気で他界し、父親はその反動からか、俺に手紙を書いて自ら命を経った。
その手紙には、「リク、お前は俺には勿体ないくらいに出来た子だ。だから和葉の事を頼んだぞ」と、涙で滲んだ文字で書いてあった。
…ふざけるなと思った。
なんで……なんでそんな事言っておいて、自分から命をたったのかーー幼い和葉を残して。
本当に、ふざけるなと思った。
ーー「ねぇお兄ちゃん、今日はとっても贅沢な夕食だね!」
和葉が天使のような笑みを浮かべ、先程買ったメロンパンを大事そうに抱きしめながら言った。
メロンパンなんていつぶりだろうか。
思えば父親が死んでから俺は、1度も食べていなかったと思う。
まぁ────────
「だな。和葉、それは和葉のものだから、遠慮せずに食べていいからな」
俺はそれでもーーメロンパンなんかよりも、この天使のような笑みの方が好きなのだが。
「本当に良いの…?」
「もちろん」
父親を亡くして家が貧乏になってから、和葉は少し贅沢なものを食べようとするといつも、この様に聞いてくる。
贅沢なんていい。俺は和葉が居ればーー食べ物なんてなんでも良いのだ。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
そう言って和葉は、嬉しそうに鼻を鳴らす。
ゴゴゴゴゴ
ふと、地面が揺れた気がした。
「?」
不思議に思い俺は、隣をてくてくと嬉しそうに歩いている和葉に視線を送るが、和葉はなんとも無いようで。
そりゃそうか
こんなコンクリートで覆われた地面が揺れる訳が無い。
もしそうだとしても、近くに電車でも通っただけであろう。
そう思うと俺は、そのまま考えるのを止める。
和葉がこんなに嬉しそうなのに、和葉意外の事を考えるなんて勿体ない。
こういうのを世間ではシスコンと言うのだろうか。
俺がそんな事を思い、結局なんか色々と考えていると。
「お兄ちゃん、鍵は?」
いつの間にか家に着いていた様だ。
俺は1度和葉の手から自分の手を離し、鍵を取り出すためズボンのポケットにそれを突っ込んだ。
すると生地の薄い安物ズボンだからか、程よく生ぬるくなった飾りのない鍵が当たる。
「ちゃんと手を洗ってから食えよ、和葉」
「うん!」
言いながら俺は、鍵穴に刺さっている鍵を回し扉を開けた。
ドタドタドタ…
待ってましたと言わんばかりに和葉は、ポイポイと靴を脱ぎ、手早く洗面所に走っていく。
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