雪を溶かすように

春野ひつじ

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第三章

28

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「目覚めたら言おうと思っていたんだが、俺は薫のことが……」

 赤面する悠から、自惚れではなければ次の言葉が予想できる。慌てて悠の唇に手を当てて、次の言葉を塞ぐ。どうして? と言う顔で悠が僕の顔を見る。

「僕も一緒に言いたいっ」

 思い切って言うと、悠は驚いた顔から納得した顔に変わる。

「あぁ、わかった」

 ふわりと微笑む悠はやっぱりかっこいい。悠のせーのと言う声に合わせて、僕たちは一緒に言う。

「好きです。付き合ってください」

「好きだ。結婚してくれ」

 あれっ?結婚してくれ?

「「えっ?!」」

 悠と声が重なる。

「俺は薫以外と結婚なんて、考えられないと思っていたから……」

 そんなふうに想ってくれていたなんて。なんだか嬉しくて涙が出てきた。

「ごめんな、重かったか?」

 オロオロとしながら僕の涙を拭いてくれる悠に、ふるふると首を横に振る。

「ううん、同じ気持ちだったことが嬉しくて」

 今度は僕が、涙を拭いて悠をまっすぐ見つめる。

「はい、喜んで」

 一瞬悠が動きを止める。次の瞬間、悠が僕に抱きついてきた。

「はぁ、よかったぁ。嫌われたらどうしようかと思ってた」

「そんな、嫌うなんて絶対ないよ」

 僕らはお互いを見つめて、ふふっと笑う。

 だけど、僕は疑問に思っていたことを尋ねる。

「でも、男同士で結婚ってできるの?」
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