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第三章
15 side凱
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「取れたぞ!」
笑顔でこちらを見て俺たちに宣言した悠は、次の瞬間体勢を崩す。ガラガラッ、という音も同時に聞こえて、数拍遅れて崖の下からゴロゴロッ、という音が聞こえた。
「悠様、ご無事ですか?!」
何よりも先に、葉が下を覗き込みつつ悠に声をかける。
「なんとか……」
身体にロープをくくりつけてはいるが、どうなるかはわからない。見ると、悠は近くにあった飛び出た岩を咄嗟に掴んでいたようだ。
「どうしましょう!?」
オロオロと落ち着きのない葉。俺は葉のがっちりとした肩をガシッと掴み、目を覗きつつ言う。
「おいっ!しっかりしろ!心配なのはわかるが、落ち着いて行動すべきだろ!」
葉は俺の言葉にハッとなったようで、すぐに気持ちを切り替える。
「すみません。その通りですね」
葉はロープの端を掴む。
「私がロープを引っ張りますので、凱様は悠様が近くにいらっしゃったら引き上げていただけますか?」
「わかった」
崖に駆け寄り、いつでも悠を引き上げられるようにする。葉がロープを引っ張り始める。
「悠!もう少しだぞ」
悠は頷く。手にはしっかりとロープを握っている。
「手を伸ばせ!」
悠の手を掴み、引き上げる。途中で葉もロープを離れて、悠を引き上げるのを手伝う。
「はぁっ」
どうにか引き上げることができた。三人で崖から離れた場所で大の字になって、地面に寝転ぶ。しばらく呆然としていると、悠が口を開く。
「みんな、ありがとう」
笑顔でこちらを見て俺たちに宣言した悠は、次の瞬間体勢を崩す。ガラガラッ、という音も同時に聞こえて、数拍遅れて崖の下からゴロゴロッ、という音が聞こえた。
「悠様、ご無事ですか?!」
何よりも先に、葉が下を覗き込みつつ悠に声をかける。
「なんとか……」
身体にロープをくくりつけてはいるが、どうなるかはわからない。見ると、悠は近くにあった飛び出た岩を咄嗟に掴んでいたようだ。
「どうしましょう!?」
オロオロと落ち着きのない葉。俺は葉のがっちりとした肩をガシッと掴み、目を覗きつつ言う。
「おいっ!しっかりしろ!心配なのはわかるが、落ち着いて行動すべきだろ!」
葉は俺の言葉にハッとなったようで、すぐに気持ちを切り替える。
「すみません。その通りですね」
葉はロープの端を掴む。
「私がロープを引っ張りますので、凱様は悠様が近くにいらっしゃったら引き上げていただけますか?」
「わかった」
崖に駆け寄り、いつでも悠を引き上げられるようにする。葉がロープを引っ張り始める。
「悠!もう少しだぞ」
悠は頷く。手にはしっかりとロープを握っている。
「手を伸ばせ!」
悠の手を掴み、引き上げる。途中で葉もロープを離れて、悠を引き上げるのを手伝う。
「はぁっ」
どうにか引き上げることができた。三人で崖から離れた場所で大の字になって、地面に寝転ぶ。しばらく呆然としていると、悠が口を開く。
「みんな、ありがとう」
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