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第三章
3 side悠
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ビュンビュンと風が耳の横を通り過ぎて行く。知らなかった、こんなに速いなんて。凱はユフの街への道を知っているようだが、俺にはただただ彼の背中にしがみついて、振り落とされないようにするので精一杯だった。
「ここら辺で休憩するか」
森の中で急に立ち止まり、俺に降りろと目線で促してきたため、降りたら凱は人間の姿になってこう言った。もう辺りは暗くなり始めていて、日が沈む頃だ。なんとか着いてきたという様子の葉は、肩で息をしている。葉は相当体を鍛えていて、体力もあるはずなのに、げっそりとした顔。対照的に、凱は全く息が切れていなくて、あともう少しは進めたな、とまだまだ体力が有り余っている様子だ。大陸一強い男、恐ろしいな。
「乗せてくれてありがとう」
「いや、気にするな。今日は野宿だが大丈夫か?王子様は」
その言葉にムッとなる。俺だって野宿くらいはできる。
「ああ、できる」
「そうか、それは良かった」
そんな会話の後、俺たちは手分けして、川に水を汲みに行ったり、薪を集めて火を起こしたりする。驚いたことに、葉は火をつけるのがとても上手だった。俺といる時には、火を起こしたりするのは見たことないのに。そう思って、どうしてか尋ねたところ、納得のいく答えが得られた。
「悠様にお会いする前に、兄と二人で野宿をして過ごしていたことがありまして。その時に身につけました」
お役に立てて良かったです、と嬉しそうに言う葉を見て、俺も頑張ろう、と気合を入れ直した。
「ここら辺で休憩するか」
森の中で急に立ち止まり、俺に降りろと目線で促してきたため、降りたら凱は人間の姿になってこう言った。もう辺りは暗くなり始めていて、日が沈む頃だ。なんとか着いてきたという様子の葉は、肩で息をしている。葉は相当体を鍛えていて、体力もあるはずなのに、げっそりとした顔。対照的に、凱は全く息が切れていなくて、あともう少しは進めたな、とまだまだ体力が有り余っている様子だ。大陸一強い男、恐ろしいな。
「乗せてくれてありがとう」
「いや、気にするな。今日は野宿だが大丈夫か?王子様は」
その言葉にムッとなる。俺だって野宿くらいはできる。
「ああ、できる」
「そうか、それは良かった」
そんな会話の後、俺たちは手分けして、川に水を汲みに行ったり、薪を集めて火を起こしたりする。驚いたことに、葉は火をつけるのがとても上手だった。俺といる時には、火を起こしたりするのは見たことないのに。そう思って、どうしてか尋ねたところ、納得のいく答えが得られた。
「悠様にお会いする前に、兄と二人で野宿をして過ごしていたことがありまして。その時に身につけました」
お役に立てて良かったです、と嬉しそうに言う葉を見て、俺も頑張ろう、と気合を入れ直した。
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