雪を溶かすように

春野ひつじ

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第二章

46 side那

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 しかし、そのあと母上からお使いを頼まれて兄の部屋に行った時、どんなふうにいつも過ごしているのかがふと気になった私は、窓の外からこっそりと兄の様子をしばらく眺めた。

「悠様、また那様に振られたのか?」

「あぁ、残念なことに」

 確か暖とかいうものにそう聞かれて、しょんぼりした様子でそう答えている。

「また今度誘ってみるよ」

 そう言って暖が部屋から出て行ったあと、兄は大人でも読むのが難しそうな分厚い本を棚から取り出し、懸命に読み始めた。その時は時間がなかったため、私はそのあとすぐに帰ったが、それから気になって何回か見に行った。兄はその度に一生懸命勉強をしていた。

 多分その時にはもう気づいていたと思う。兄は出来がいいわけではなくて、ただひたすらに努力をしているから、周りに人が集まってくるということに。そして、自分は兄には敵わないことにも気付いていた。やっぱり兄こそが王に相応しい。
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