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第一章
9 side悠
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俺の部屋に着くと、薫の顔色は先ほどよりも悪くなっていて、呼吸も荒かった。
「早く外してくれ。」
「わかりました。」
そう言うと、那はチョーカーに触れながら、何か呪文のようなものを唱えた。すると、チョーカーが青白く光り輝き、その光が消えると、彼の顔色も良くなっていた。額に触れると、もう熱はなく、穏やかな寝息をたてていた。ふぅ、と俺は安堵のため息をついた。よかった、彼が助かったようで。俺がチョーカーを外そうとすると、那が、
「兄上、今は外せませんよ。」
と言う。えっ、と思い那の方を見ると、
「兄上が正式な手続きをなさるまでは、体力を弱める効果はなくしますが、獣化を防ぐ機能はそのままにしておきます。」
「約束が違うじゃないか!外すって言ってたのに…」
「やはり念には念を、と思いまして。では、父上に会いに行くことにしましょう。」
仕方なく、俺は那と共に部屋を出て父上のもとへ向かった。
父上は、俺が那に王位継承権を譲ることを言うと、大いに驚き、目を丸くした。
「どうしてだ?そんなに急に言われても、すぐに変えることはできぬぞ。」
「私より那の方が王にふさわしいと思いまして。」
俺は那から、事前に薫のことを言うな、と言われていた。またチョーカーで体力を弱められては困るので、何を聞かれても自分より那の方がふさわしいと繰り返すことにした。父上が言うように、当然国の未来に関わることをすぐに変えることはできないため、今日のところは一旦帰ることとなった。
俺が自室に帰っている途中で、部屋で薫を見ていた暖が嬉しそうな顔をして、走ってきた。
「悠様!薫様が目を覚まされました!」
「本当か?!よかった。」
俺は急ぎ足で部屋へと向かった。
部屋に入ると彼は、キョロキョロとあたりを見回していた。
「起きたか?」
と声をかけると少しの間俺を見つめていた。俺の顔に何かついているのだろうか?そう思っていると、彼はハッとした様子で小さく
「はい。」
と言った。そういえば、彼にとってははじめましてなんだと気づき、挨拶をすると、
「はじめまして。薫と申します。」
とあまり声を出していなかったからか、掠れている声で返してくれた。俺が、意識のある彼を見るのは初めてだった。名前の読みと同じ、雪のように白く、きめの細かい肌に、栗色のサラサラな髪。そして、印象的なのは、その瞳だった。右目が空のように透き通った青色で、左目が俺と同じ翡翠色の、オッドアイ。以前、暖が彼に会った後に美少年だ、と言っていたのが頷ける容姿を彼はしていた。これが、薫との出会いだった。
「早く外してくれ。」
「わかりました。」
そう言うと、那はチョーカーに触れながら、何か呪文のようなものを唱えた。すると、チョーカーが青白く光り輝き、その光が消えると、彼の顔色も良くなっていた。額に触れると、もう熱はなく、穏やかな寝息をたてていた。ふぅ、と俺は安堵のため息をついた。よかった、彼が助かったようで。俺がチョーカーを外そうとすると、那が、
「兄上、今は外せませんよ。」
と言う。えっ、と思い那の方を見ると、
「兄上が正式な手続きをなさるまでは、体力を弱める効果はなくしますが、獣化を防ぐ機能はそのままにしておきます。」
「約束が違うじゃないか!外すって言ってたのに…」
「やはり念には念を、と思いまして。では、父上に会いに行くことにしましょう。」
仕方なく、俺は那と共に部屋を出て父上のもとへ向かった。
父上は、俺が那に王位継承権を譲ることを言うと、大いに驚き、目を丸くした。
「どうしてだ?そんなに急に言われても、すぐに変えることはできぬぞ。」
「私より那の方が王にふさわしいと思いまして。」
俺は那から、事前に薫のことを言うな、と言われていた。またチョーカーで体力を弱められては困るので、何を聞かれても自分より那の方がふさわしいと繰り返すことにした。父上が言うように、当然国の未来に関わることをすぐに変えることはできないため、今日のところは一旦帰ることとなった。
俺が自室に帰っている途中で、部屋で薫を見ていた暖が嬉しそうな顔をして、走ってきた。
「悠様!薫様が目を覚まされました!」
「本当か?!よかった。」
俺は急ぎ足で部屋へと向かった。
部屋に入ると彼は、キョロキョロとあたりを見回していた。
「起きたか?」
と声をかけると少しの間俺を見つめていた。俺の顔に何かついているのだろうか?そう思っていると、彼はハッとした様子で小さく
「はい。」
と言った。そういえば、彼にとってははじめましてなんだと気づき、挨拶をすると、
「はじめまして。薫と申します。」
とあまり声を出していなかったからか、掠れている声で返してくれた。俺が、意識のある彼を見るのは初めてだった。名前の読みと同じ、雪のように白く、きめの細かい肌に、栗色のサラサラな髪。そして、印象的なのは、その瞳だった。右目が空のように透き通った青色で、左目が俺と同じ翡翠色の、オッドアイ。以前、暖が彼に会った後に美少年だ、と言っていたのが頷ける容姿を彼はしていた。これが、薫との出会いだった。
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