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1章 学園

56話 鍛錬

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「今日はみんなありがとう。全員で協力できたからこそオークの軍団を全滅させることが出来た。でも大元を潰さない限り俺らが常に危機にさらされているのは変わりない。だから先に勇者である天上先輩と協力したいって思ってるんだけど、どう思う?」

「私は賛成だよ!天上先輩が勇者なら早めに連携はしておきたいし、もし街に行くようなことになるなら天上先輩はいないとダメだからね」

俺らの意見はほとんど一致している。ただ1人だけ言っていることが違う。

「ふむ、海翔よ。妾達だけでも十分ではないか?勇者である天上も必要なのは承知している。しかし天上と連携をするのであれば天上をこの中に入れるのか?」

厨二病。そんな言葉が当てはまるような言葉遣いの彼女の名前は小合天良。

「確かに小合の言った通りだね。でも天上先輩には道場の方にいて欲しい。俺らで校門の方は何とかなるけど、裏門の方は戦力が整ってないと思う。もしかすると天上先輩がいるからギリギリ保ってられるのかもしれない。だから天上先輩には裏門を守って欲しい。これでいいかな?」

「確かにその通りだ。ならば勇者は要らんのではないのか?勇者がいなくとも妾達で十分戦える。海翔もいるし、今日の戦いを経て妾達も進化した」

「うん、その通りだね。でも相手の戦力がまだ把握しきれてないから、戦うならこちらの最高戦力で戦いたい。そうなった時に勇者は絶対に必要になる」

俺がそう真摯に説得をする。料理部の人達は全員が自分の頭を使って考えて、話し合うことが出来る。疑問があったら聞いてくれるし、間違っていたら注意もしてくれる。だから小合も話せば分かってくれると信じてる。

「…………うむ、その通りだ。海翔の策で行こう」

「ありがとう。分かってくれて。なら誰か天上先輩に話してくれない?俺から話すと怪しまれそうだからね」

そう話すと数人の女子が会話から外れていった

「今は……10時くらいか。何しようか」

普通に暇だった。レベル上げしに行ってもいいが、始めるならご飯を食べてからの午後がいい。天上先輩にアポ取るのも時間がかかるだろうし。

『……ならばそれぞれのスキルの練習時間を当てればいいのではないですか?スキルを得れば直ぐにそれに適応した動きになりますが、その動きに慣れない限り違和感がつきまとい、結果として本来の動きが発揮できません』

『それはいいね。確かにゲームでもそうだしね』

「今からご飯の時間までは自主練の時間にしようと思う。それぞれのスキルの練習をしてその動きになれて欲しい。分からないことがあれば相談に乗るから遠慮なく行って欲しい」

そして上の風呂場となっていた多目的室の大理石を破壊して、上でも練習できるようにする。

茶道室でもかなりの大きさなので、多目的室も含めれば全員が暴れても問題ないくらいの大きさはある。

「魔法を使う組は茶道室で。武器を使う子は多目的室でやろう。多目的室に行くから、未来は茶道室で魔法を教えてくれ」

「分かった!」

俺らは移動する。武器を使うのは俺、桜、ダブル小合、三浦、宿木の6人。

「とりあえず組手をやって自分の実力を確認しようか。桜は宿木と、小合の2人で。三浦は俺とだな」

「ん、武器は真剣?」

「ああ、そうだったね。真剣でいいよ。俺がシールドを使うから攻撃を受けても大丈夫だよ。でも先にシールドが割れた方の負けね」

俺らは部屋を3等分にして俺は三浦と向き合った。三浦は俺から受けとったガントレットを使っている。かなり粗悪な物だがないよりはマシだろう。

「俺は剣を使うがいいか?」

「勿論!」

威勢のいい奴だ。なんて思わない。彼女はそれに見合った実力があるし、スキルも中では十全に使いこなせているから、レベル差はあるが実力は周りよりも飛び抜けていると思っている。

「それじゃあ、始めっ!」

俺の合図とともにほかの二箇所で戦いが始まる。桜VS宿木では、宿木が気配を消して暗殺者のように動き、桜の不意を突こうとするが、桜が巧みに動き死角を突かせないように立ち回る。双子の戦いは杖VS槍と似たり寄ったりの戦い方だが、リーチの長い槍の方に分があるようで天良の方が有利に立ち回っている。しかし結城も押されているだけでなく、時々反撃して甲種逆転のチャンスを伺っている。

そして俺らは他の場所みたいなバチバチな戦いではなく、膠着していた。俺も三浦も攻めあぐねていた。相手がかなりの実力者であるせいで攻撃出来る隙が見当たらないのだ。

「こうして膠着してるだけじゃ練習にならないな」

俺が先に動く。俺は相手に向けて一直線に進み、そのまま相手に向けて剣を振るう。しかしその剣は何に当たることもせずに空ぶった

これは空ぶったんじゃない。これは………

刹那、俺を猛烈な殺意が襲った。俺は感覚に身を任せて体をよじる。俺の目に映ったのは俺の心臓をえぐるような貫手だった。

「あー!惜しかった!」

殺意に見合わない元気な声。俺はそれに恐れを抱くどころか、逆に興奮した。別にドMな変態じゃないぞ?ただ自分より圧倒的な強者と戦える。

俺は1度距離を取っていつの間にか出ていた汗をクリーンで綺麗にする。この魔法便利すぎだろ。

「じゃあ、今度は私から行くよ?」

そう言って三浦は走ってくる。彼女からしたら全速力なのだろうが、ステータス差がある俺にはそこまで早くは見えなかった。

三浦は拳を突き出す。俺はそれを剣の柄で受け止める。受け止められたことを悟ると三浦は素早く拳を引っ込めて、その勢いを使って回し蹴りを放つ。俺は手で受け止める。俺が受止めた足を足場にして受け止められてない方の足で俺にカカトを落とす。流石にやばいと思い、それを躱すが、その時に足を離してしまう。

「いいね、いいね。楽しいよ!」

「ああ、俺も楽しいよ」

俺は剣で、三浦は体をぶつけ合い語り合った。俺ら(戦闘狂)しか分からないような独自の戦い方で。









「はぁ、はぁ、はあぁぁ。超疲れた」

「あはは、私もだよ」

俺らはまさかの訓練だけでかなり疲弊してしまい地面に倒れ込んでいる。汗はクリーンでどうにかできるが、疲れは癒すことは出来ない。体力に関係すれば直せるのにな。

「ん、おつかれ。三浦先輩もフツーに強かった」

「あはは、私の家は武道一家だからね。家のしきたりで必ず1つは武術を習わないといけないんだ」

「そりゃ大変なしきたりだな」

「そうでも無いよ。やってて楽しかったし。こうして役に立ってるからね」

「ああ、そうだな。それじゃ少し休憩したら今度は個人練を───」

「海翔君、2人が戦ってるうちにもう12時よ。今は茜たちがご飯を作ってくれてるわ」

俺がギョッとして時計を見ると、本当に12時で、それよりも針が半周多く回っていた。

「マジかぁ。なら飯食ってからだな」

「海翔先輩!また戦ってくれますか……?」

「そんな不安げに聞いての来なくてもまた戦うよ。三浦と戦えて俺も楽しかったしね」

「舞って呼んでください!私と対等に張り合える人は久しぶりです!」

キラキラした目で俺の事を見てくる。三浦、いや舞のキラキラした目が俺に向いてる理由が分からんのだが。

『……舞は中学生の頃に全国大会で優勝しています。その時に自分と対等に張り合える相手がいないことを悟って、空手の大会から離れたそうです。しかしマスターが自分と対等以上に戦える相手で気持ちが暴走しているようです』

『普通ならなんて傲慢なんだろうって返すところなんだけど、あの実力を見せつけられるとなぁ』

俺と舞のステータスはかなりかけ離れてるし、スキルもそうだ。しかし舞は全てを見切って俺に攻撃をしてくる。

そして剣を拳で逸らすところが1番すごい。技術も凄いが、胆力が凄い。拳を受けるならともかく触っただけで切れる剣を逸らすなんて俺なら怖くて出来ないな。

「ああ、わかったよ舞。また戦おうな」

「はい!海翔先輩!」

俺らの間に謎のきずなが生まれた瞬間だった

俺らは昼飯ができたと未来が知らせに来たので、俺らは下に移動する。

「かいにぃ、どれだけ暴れてたの?ここまでドタドタと足音が聞こえてきたよ?」

「すまん。舞と一緒にはしゃぎすぎた」

「舞……か」

「ん?どうした?」

「ううん。なんでもないよ!早くご飯食べに行こう!」

「ああ、そうだな」
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