上 下
51 / 59
1章 学園

51話 配分

しおりを挟む
『マリー、後ろから圧力をかけろ。絶対に生きて返すな』

『御意ですわ』

『だがマリー、ローマ、ヒミコ、リアンは絶対に姿を見せるな。配下たちだけで戦わせろ』

『もちろんでごさいます』

そう言って俺のマップの反応にチラホラとオーク達を囲い込むように戦い始めた。オークジェネラルとオーククイーンが階級5だが、それより高いのが多いので問題は無いだろう。

俺はマップで反応がある未来達のところに戻った。そこはかなりの激戦区と化しており、四方八方か、攻められる状態だった。しかし未来が的確にカバーしている。水谷先生が盾職で木で作った盾を使っていた。正直見ていて危なっかしい戦い方だが、縦を選んだ理由も想像はつく。

「全員、オークキングは倒した。後はただの掃討戦だ。だが今回はオークリーダーとクイーン、まだ残っているジェネラルが引っ張っている。だから油断だけは絶対にするな」

『マリー、ほかの魔物たちに絶対に俺らの前に姿を見せないよう厳命してくれ』

『既にしてあるのでご安心を』

俺はマリーに感謝を伝えて、次は武器を配布する。

「森崎さん、この武器を使ってくれ。オークジェネラルが持っていたんだ。使いたくないなら別にいいけど……」

「そんなことないわ。もちろん使わせてもらうわよ」

「森崎さんってたまに話し方変わるよね」

森崎さんの普段の話し方は誰にでも敬意を持って話す敬語が多い。しかし今のように咄嗟の時は素が出るのかな

「っ!べ、別にいいじゃない」

俺はそんな森崎さんを見てホッコリとしていると、今度は隣にいた未来からほっぺをつままれた。

「お兄ちゃん、私たちが必死に戦ってる間に何森崎先輩口説いてるのかなぁ?」

言い方は優しいが目も口も笑ってない。

「へふにひひふんなへふにひひふんなべつにきにすんなははほっほりひへははへはほははほっほりひへははへはほただホッコリしてただけだよ

「ふーん。どうなんだか」

そう言って未来は手をほっぺから話してくれたが、同時にそっぽを向いてしまった。

「はいはい、この武器を上げるから許してくれ」

俺はオーククイーンとの平和的交渉種族間戦争によって手に入れた杖を未来に渡す。この杖は一見ただの鉄製の杖だが、その実魔法の威力を高める効果を持つかなり貴重な杖なのだ。

未来に効果の程を説明すると、すっかり機嫌を直して、杖を貰って言った。あんな単純でいいのかと思ってしまうが、あれが未来のいい所でもあるのでなんとも言えない。それに危険が迫ったら俺が守ればいいだけの話だからな。

そして宿木にも何かをあげようかと思ったが、短剣は持ってなかったし、盗賊の効果を高めるような効果を持つ道具もなかったので、渡すことが出来なかった。

その後も料理部メンバー優先で、戦利品を与えていく。三浦さんが使うナックルや少し違うクローなども見つからなかった。

そして珍しいオークナイトと戦っていたのか盾を手に入れていた俺は水谷先生にそれを差し上げる。

「水谷先生、その木の盾よりこっちの盾を使ってください。オークナイトが使っていたのでかなり強いと思いますよ」

「それはありがとう!でもタダで貸してくれるの?嬉しいけど何か不安ね」

それもそうだな。タダほど怖いものはないと言うほどだ。ならばこちらも対価を示した方が良さそうだ。

「なら、今回の戦いの戦利品はオーク肉や武具も含めて7:3の分け方でどうですか?もちろんキングの肉はこちらで貰いますけど」

「…………………ええ、それで問題ないわ。でも余っている武器があるのなら渡して欲しいわね」

「いえ、既に森崎さんなどが渡しているようです。なのでその心配はないかと」

森崎さんが倒したオークの武器を与えて、その武器でレベルを上げさせていた。女子寮は後衛希望が多いから杖がいいのだろうが、杖はメイジやプリースト、クイーンが持っているのが上限であり、それは今回の10%も満たなかった。

流石に盾ひとつで要求はしすぎだと思うので、武器の分配は当然するつもりであった。その前に森崎さんや雪谷、未来なら俺がダメと言ってもこっそり渡しそうな程優しいからな

そしてオークの動きが統制の取れた動きから徐々に散漫な動きに変わっていった。どうやらキングが殺られたことが末端にも知れ渡ったようだな。

「未来、ここで畳み掛けろ。ポイントを今振る必要は無い。今のうちに上げられるだけレベルを上げろ。でも他の子も一緒に上げてやってくれ」

「お兄ちゃん…………うん!分かったっ!」

未来は俺の事を見つめていたが、すぐに目を逸らし指示に戻った。何度も言うが目線だけで長文会話ができるのはラノベだけだぞ。

俺はその様子を遠くから見守っていた。俺はさっきの戦いで疲れた脳を癒すため、多重行動を解除し、超速思考も解除する。

木の枝に飛び乗り戦場を見回す。全員が俺の言った通りにレベル上げのためにオークを手当り次第狩っている。瀕死の状態まで追い込んで、トドメだけ譲っているのも見かけた。

その遠くではテイムしたモンスターが姿を表さずにオーク達を囲い込むように立ち回っていた。体躯の大きい魔物ばかりだが、スパイのように足音を減らして戦っている。しかし倒すことはせず、牽制にとどめている。

俺は満足して木の枝に腰を掛け──────

『……マスター緊急事態です!未来達がオークアサシンが狙っています。至急援助に!』
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

処理中です...