上 下
2 / 59
1章 学園

2話 神

しおりを挟む
「なっ!ここは……どこなんだ」

俺は少しでも情報を得ようと周りを見渡すが、 本当に一面真っ白。地平線みたいなのもない。

突如、上空が輝き出した。

「次から次へと……次は何だ?」

俺は手で目を隠しながら、必死に上を見ようとするが、ピカピカ光っているだけで何も見えない。目に痛い光では無いのだが、本当にピカピカ光っているのだ。

「すまないな。人間にこの光は眩し過ぎるか」

男とも女とも取れる中性的な声が聞こえた後、眩しい光がやんだ。

俺は目を慣らすようにゆっくりと目を開ける。そして目の前にいたのは”戦神”という言葉がぴったりな美少女だった。
髪の毛は肩にかかるくらい伸ばしているが、その目は鋭い。かといって怖いかと聞かれたらそうでも無い。普通に可愛い。それに着ている服も体に張り付いているため魅惑の体つきが俺の目にはっきりと映し出されている。

「そんなにおかしいか?」

「い、いや、そうでもない。普通に似合ってるぞ」

「そうか?まぁ、いい。それよりお前を呼び出したのには訳がある」

「それは俺たちが異世界に来たことの説明と謝罪か?または、俺たちの世界が異世界になってたことの説明と謝罪か?」

俺の頭にはそれしか思い浮かばなかった。俺がオークと対面した時に、学園の姿がはっきりと見えたのだ。

そう考えれば、学園全体で異世界に召喚された。または俺たちの世界に魔物だかモンスターが現れて、ラノベ化したとしか考えられない。

そしてこのタイミングの呼び出しである。こう考えれば、説明と謝罪に行き着く。

「ほう、なぜそう思う?」

たった今頭の中で整理したところなんですけど………。

「ははっ!それは知ってるさ。我は神だぞ?相手の思考くらい読めて当然だ」

「………………そっか、そうだよな。俺がいくら頑張っても上には神がいるんだ。だから自惚れるのは間違いだ。うん、ありがとうございます。あなたのおかげでスッキリしました」

さっきまで自惚れてた自分がバカみたいだ。それに部屋でも神様のことを考えたじゃないか。何が天才だ。こんな簡単なことすら考えつかないなんてな。

「あ、うん。何が起きたのか分からないけど、スッキリしたなら良かったよ。
それで今から話したいんだけど、大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

この人キャラ作ってるな?今、一瞬だが素が出たぞ?
しかしそんなことを考えたことは神に追求はそれなかった

「分かった。コホン。それで今回は我々神側のミスで起こったことだ。本来ならそなたの所にいる_天上結衣てんじょうゆいをこの世界に送るはずだったのだ」

天上結衣………?ああ、女子剣道部主将の人か俺は高一で帰宅部で、天上先輩は2年で部活有りだからあんまり関わりがないんだよねぇ

「その天上をこちらの世界に勇者として召喚するはずだったのだが、天上以上に強者の気配を感じてな。その者も呼ぼうと思ったのだが、その力の強さが想像以上でな。逆にこちらが力に振り回されそれを抑えるために力をさらに注いだ結果、時空の軸が、歪み、その歪みにそなたたちの学園が入り込んでしまったという訳だ。そして我々はどうにかして天上だけでもその世界に送り込もうとしたのだが、それすらも失敗し、学園ごとその世界に送り込んだ訳だ」

「………それは俺の考えが正しければ、神様達は天上先輩以外の人も巻き込もうとした結果、俺たちを時空軸に飛ばして、その俺たちをみ話そうしたけど、勝手に着いてきたってことだよな?」

「うむ、そうなるな」

「はぁ!?ふざけんなよ!そんなの立派な誘拐じゃねぇかよ!それなら俺たちを元の世界に戻せよ!」

「すまないが、それは出来ない。我は神ではあるが、我以上に強い力を持った神もいる。そして世界間の移動ができるのは創造神様だけだ」

「だったら、その創造神ってやつを連れてこいよ!直接文句を言ってやる!」

「おい!バカ野郎!その言葉遣いを辞めろ!創造神様にそのような口をきくな!」

「よいよい、気にするな」

その声ば後ろから聞こえた。俺は驚きで咄嗟に飛びずさる。さっきの神も含めると三つ巴のような形になる。

俺は背後にいた神を見ると、その神はさっきの神よりもいい体つきだった。正直、あんなことをした神にこんなことを言いたくないが、人外じみた美しさだ。それだけを言っておこう。

「お前が話の流れからして創造神だな?俺たちを元の世界へ返せ!」

「このバカ!創造神様にそんな口をきくな!消されても知らないぞ!」

「そんなことなんかどうでもいい!たかが俺一人の命で未来が救えるなら安いもんさ!」

「ふむ、未来とな。それはそなたの義理の妹のことだな?」

「なんでそんなこと……そうか。神だったな」

「お主、よくここに来れたな?どうやって来た?」

俺もよく分からないと伝えた。創造神の目が鋭くなる。きっと俺の心を読んでいるのだろう。しかし、しかしいくら読んだところで、知らないものは知らないから、気にする事はない。そんなことより早く世界間の移動を頼まねば。

「この際、俺の考えを覗いてもしょうがないだろ。なら早く答えを出してくれ」

「それもそうだ。なら率直に言うと、そなたたちを元の世界に戻すのは不可能だ」

「はぁ!?なんでだよ!」

「それを今から伝える。そうだな………ならばこう考えるのだ。水の中に石を入れても水はすぐに馴染み、石の部分を空けて適応する。時空軸もそれと同じように考えれば良い。水の中にある石はすぐに抜くことができる。しかし、その水が深海だったらどうなる?水圧で簡単には取り上げられないだろう?それと同じだ」

確かにそう言われたら難しいことだ。

「それは初めの状態でも言えるだろ?俺たちの学校は築50年だ。今の状態は一日すら経ってない。初めにやったのができたなら、今でもできるはずだ」

「………お主は鋭いの。一番面倒なタイプだ。なら説明しようか。さっきアマトから聞いただろう?強者の力に引っ張られたと。その力が人族の枠を超えて、そんじょそこらの神を上回るような資質を持っておってな。その力を抑えるために、他に神々も本気で抑えたのだそうしなければ、その世界どころか他の世界にも影響が与えられるからな。その力を抑えるために妾とアマト、後は下級神や初級神を残してあらかた消えてしまったのだ。だから創造神の妾でも、その強者を戻すのは不可能なのだ。そんなことをしたら妾まで消えてしまうからの。そうしたら今いる世界だけではなく、お主のいた世界まで、全ての世界が滅びてしまうからの」

確かにそうだ。その前に髪を消滅させる力を持った奴が同じ学園にいたことに驚きだ。でもそいつも俺と同じく退屈な日常だったに違いない。俺は既に目標を見つけたが、そいつは目の前にいる創造神くらいしか目標はなさそうだな。後はアマトってやつ。

「………ならばその強者と天上先輩を残してそれ以外を戻してくださいよ」

「ずいぶん自分勝手な意見だ。お主はそういうことを言わないと思っていたが?」

「俺だって重々承知だ。でも未来を助けるにはそれしかないだろう。それ以外の方法で未来を助けられるならそれでも構わないが」

「先程からお主、ずいぶん無礼ではないか?妾は寛大ゆえ許しておるが、これでも人族が、崇める神を束ねているだぞ?」

「はぁ、こちらこそ失望したよ。創造神ならそれくらい分かると思ったけど、期待しすぎだったな。
しょうがない。俺がお前に対して無礼なのは、どう考えてもお前たち神側が、悪いから。それに目の前にいる人族を相手して、そんな酷いこと言われて、崇められる方が凄いだろ」

「海翔!早く創造神様に謝れ!その言葉はダメだ!」

「馬鹿なのはそっちだろ?地球でも神話として残ってるぞ?それに宗教もあるしな。神は信賞必罰をモットーにしてるってな。だから俺は当然の主張をしてるだけ。悪いのはそっち。だから俺は裁判官でお前たちは被告人ってところ。それに戦いになっても絶対に負けない。だって背負ってる物の重みが───」

違いすぎる。俺はそう言おうとしたが、俺の目の前に火の塊が生まれた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

処理中です...