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第五十六話……脱出
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「敵影確認! 数は小型艦2隻!」
「戦闘配備!」
「各砲塔、砲撃戦用意!」
クリシュナは大気圏を脱したところで、迫りくる敵艦の追撃にあった。
敵の船影は小型の駆逐艦といったところだった。
「主砲斉射!」
「了解!」
クリシュナの主砲塔が唸り、あっという間に敵艦二隻を葬る。
……だが、敵はこれだけでは無かった。
「さらに一隻接近、中型の巡洋艦の模様!」
「反対方向に、小型駆逐艦3隻が接近!」
「敵砲撃来ます!」
「応戦しろ!」
クリシュナは敵からの左右の方角から、挟み撃ちにあった。
敵味方が入り乱れ、数十秒の応戦の後。
「敵艦、ミサイルを射出!」
……件のミサイルが接近する。
「対空レーザーで、迎撃しろ!」
「了解! 左舷対空砲用意!」
……が、……唐突にミサイルは消えた。
目をこするも、やはり消えたのは事実だった。
クリシュナのセンサーと連動する私の副脳にも反応が無かったのだ。
一瞬間をおいて、巨大な衝撃音が走る。
「左舷被弾、ミサイルです!」
「!?」
衝突部をよく見ると、ミサイルは爆発しておらず、さらに装甲部に食い込もうとあがいているように見えた。
その姿はまるで生き物のようにうねり、クリシュナにめり込もうとしていた。
「敵ミサイル、我が艦の装甲部と同化していきます!」
「外殻装甲剥離、分離しろ!」
慌てて装甲ブロックの放棄を指示。
刹那、分離した装甲ブロックと敵ミサイルは融合して爆発した。
「なんだ、あれは!?」
……不味いな。
敵のミサイルは消えて迎撃しにくいだけではないのだ。
宇宙船の装甲部を、何らかの方法で物理的に融合し、侵食する謎の兵器であった。
今まで、人類側が苦戦するわけだった。
「敵ミサイルさらにきます!」
「構うな! 敵艦のみを攻撃しろ! そして、被弾したブロックは即放棄。分離してダメージを食い止めろ!」
「了解!」
クリシュナは敵艦に全力応射。
消えるミサイルへの迎撃は諦めたが、回避のためにクリシュナは右へ左へと急回頭。
凄まじいGがシートに縛られた私の体をよじった。
回避できるものは回避するべく全力を務めたのだった。
突き刺さるミサイルには、装甲区画を分離して放棄するという手段を取った。
クリシュナは多層的な多重装甲を誇ったが、だんだんとパイの薄皮を向く様に装甲部を捨てることになった。
……が、それと引き換えに重要区画は守られ、有効な時間を稼ぐことに成功した。
「敵艦に主砲弾命中、敵艦爆発!」
「敵艦炎上!」
「了解!」
クリシュナは3隻の敵駆逐艦を爆沈。
のこった巡洋艦も大破し炎上、撃退に成功したのだった。
「よし、全速離脱だ!」
「了解、機関全速!」
クリシュナは第三宇宙速度を超え、無事に惑星アーバレストの重力圏を離脱した。
そしてさらに加速を続け、ユーストフ星系外縁まで一気に脱出したのだった。
☆★☆★☆
「旦那、不発弾がありましたぜ!」
「何!?」
ユーストフ星系から他星系へワープするために各所を点検していると、困った顔をするブルーから報告があった。
船外宇宙服を纏い、現場に赴いてみると、件のミサイルがクリシュナの装甲にめり込んだまま停止していた。
……うわっ、危ない。
「みんな、さがれ!」
私は装甲区画にいた汎用ロボットであるコンポジットたちを退避させ、このミサイルのコンピューターに接続することを試みる。
右腕から、生体伝導コネクタをだし、ミサイルの弾頭に突き刺した。
……不意の爆発の予感に体が震え、背筋に冷や汗が流れる。
――20分後。
【システム通知】……ハッキングに成功しました。
私の副脳はミサイルのコンピューターを乗っ取ったことを知らせてくる。
どうやら成功だった。
「ブルー、このミサイルは完全に停止させた。分解の方を頼む!」
「了解!」
――その後。
ミサイルはブルーの手により解体され、クリシュナの戦術コンピューターにより解析されることになった。
☆★☆★☆
クリシュナは満身創痍の中、惑星アルファへと向かう。
現在ほとんどの装甲区画を失い、赤剥けのような状態であった。
現状、クリシュナをきちんと修理できるのは、この惑星アルファにある宇宙船アルファ号だけであった。
「着陸開始!」
「了解!」
吹きすさぶ極寒の世界にアルファ号はあった。
それは遥か古の人たちの残した巨大宇宙船。
しかし、ゆっくりと眠りにつくかのように、ほとんどの機能は停止していた。
その後。
クリシュナの巨体は、惑星アルファの氷の大地に無事着陸した。
☆★☆★☆
「邪魔するよ」
「いらっしゃいませ!」
私はこの宇宙船アルファ号の一角にお店を持つウーサのところへよく行った。
「ウイスキーをロックで、あと煙草も頼む!」
「……はい、わかりました」
何故か私にはこの店が好きだ。
古びたカウンターに錆びた椅子。
オマケに灯はついたり消えたりするほどガタがきていた。
紫煙に包まれ、アルコールの意識をもうろうとさせる感覚に酔う。
『……旦那、解析できましたよ!』
「う~い、何の話だっけ?」
私は明け方まで飲み続け、ブルーの報告に対する返事も、ろれつが回らなくなっていたのだった。
……まぁ、とにかく、例のミサイルの解析はある程度成功した。
後は対応策の問題だった。
「戦闘配備!」
「各砲塔、砲撃戦用意!」
クリシュナは大気圏を脱したところで、迫りくる敵艦の追撃にあった。
敵の船影は小型の駆逐艦といったところだった。
「主砲斉射!」
「了解!」
クリシュナの主砲塔が唸り、あっという間に敵艦二隻を葬る。
……だが、敵はこれだけでは無かった。
「さらに一隻接近、中型の巡洋艦の模様!」
「反対方向に、小型駆逐艦3隻が接近!」
「敵砲撃来ます!」
「応戦しろ!」
クリシュナは敵からの左右の方角から、挟み撃ちにあった。
敵味方が入り乱れ、数十秒の応戦の後。
「敵艦、ミサイルを射出!」
……件のミサイルが接近する。
「対空レーザーで、迎撃しろ!」
「了解! 左舷対空砲用意!」
……が、……唐突にミサイルは消えた。
目をこするも、やはり消えたのは事実だった。
クリシュナのセンサーと連動する私の副脳にも反応が無かったのだ。
一瞬間をおいて、巨大な衝撃音が走る。
「左舷被弾、ミサイルです!」
「!?」
衝突部をよく見ると、ミサイルは爆発しておらず、さらに装甲部に食い込もうとあがいているように見えた。
その姿はまるで生き物のようにうねり、クリシュナにめり込もうとしていた。
「敵ミサイル、我が艦の装甲部と同化していきます!」
「外殻装甲剥離、分離しろ!」
慌てて装甲ブロックの放棄を指示。
刹那、分離した装甲ブロックと敵ミサイルは融合して爆発した。
「なんだ、あれは!?」
……不味いな。
敵のミサイルは消えて迎撃しにくいだけではないのだ。
宇宙船の装甲部を、何らかの方法で物理的に融合し、侵食する謎の兵器であった。
今まで、人類側が苦戦するわけだった。
「敵ミサイルさらにきます!」
「構うな! 敵艦のみを攻撃しろ! そして、被弾したブロックは即放棄。分離してダメージを食い止めろ!」
「了解!」
クリシュナは敵艦に全力応射。
消えるミサイルへの迎撃は諦めたが、回避のためにクリシュナは右へ左へと急回頭。
凄まじいGがシートに縛られた私の体をよじった。
回避できるものは回避するべく全力を務めたのだった。
突き刺さるミサイルには、装甲区画を分離して放棄するという手段を取った。
クリシュナは多層的な多重装甲を誇ったが、だんだんとパイの薄皮を向く様に装甲部を捨てることになった。
……が、それと引き換えに重要区画は守られ、有効な時間を稼ぐことに成功した。
「敵艦に主砲弾命中、敵艦爆発!」
「敵艦炎上!」
「了解!」
クリシュナは3隻の敵駆逐艦を爆沈。
のこった巡洋艦も大破し炎上、撃退に成功したのだった。
「よし、全速離脱だ!」
「了解、機関全速!」
クリシュナは第三宇宙速度を超え、無事に惑星アーバレストの重力圏を離脱した。
そしてさらに加速を続け、ユーストフ星系外縁まで一気に脱出したのだった。
☆★☆★☆
「旦那、不発弾がありましたぜ!」
「何!?」
ユーストフ星系から他星系へワープするために各所を点検していると、困った顔をするブルーから報告があった。
船外宇宙服を纏い、現場に赴いてみると、件のミサイルがクリシュナの装甲にめり込んだまま停止していた。
……うわっ、危ない。
「みんな、さがれ!」
私は装甲区画にいた汎用ロボットであるコンポジットたちを退避させ、このミサイルのコンピューターに接続することを試みる。
右腕から、生体伝導コネクタをだし、ミサイルの弾頭に突き刺した。
……不意の爆発の予感に体が震え、背筋に冷や汗が流れる。
――20分後。
【システム通知】……ハッキングに成功しました。
私の副脳はミサイルのコンピューターを乗っ取ったことを知らせてくる。
どうやら成功だった。
「ブルー、このミサイルは完全に停止させた。分解の方を頼む!」
「了解!」
――その後。
ミサイルはブルーの手により解体され、クリシュナの戦術コンピューターにより解析されることになった。
☆★☆★☆
クリシュナは満身創痍の中、惑星アルファへと向かう。
現在ほとんどの装甲区画を失い、赤剥けのような状態であった。
現状、クリシュナをきちんと修理できるのは、この惑星アルファにある宇宙船アルファ号だけであった。
「着陸開始!」
「了解!」
吹きすさぶ極寒の世界にアルファ号はあった。
それは遥か古の人たちの残した巨大宇宙船。
しかし、ゆっくりと眠りにつくかのように、ほとんどの機能は停止していた。
その後。
クリシュナの巨体は、惑星アルファの氷の大地に無事着陸した。
☆★☆★☆
「邪魔するよ」
「いらっしゃいませ!」
私はこの宇宙船アルファ号の一角にお店を持つウーサのところへよく行った。
「ウイスキーをロックで、あと煙草も頼む!」
「……はい、わかりました」
何故か私にはこの店が好きだ。
古びたカウンターに錆びた椅子。
オマケに灯はついたり消えたりするほどガタがきていた。
紫煙に包まれ、アルコールの意識をもうろうとさせる感覚に酔う。
『……旦那、解析できましたよ!』
「う~い、何の話だっけ?」
私は明け方まで飲み続け、ブルーの報告に対する返事も、ろれつが回らなくなっていたのだった。
……まぁ、とにかく、例のミサイルの解析はある程度成功した。
後は対応策の問題だった。
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