宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

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第五十話……惑星ドーヌルからの援軍

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『ワープアウト完了！　現在位置ユーストフ星系外縁部！』

「了解！」

　私はクリシュナの戦術コンピューターの報告に応じる。

「機関点検！」

『エンジンに異常ありません』

　クリシュナはユーストフ星系外縁部へ到達後、第四惑星ドーヌルへと向かった。
　第二惑星であるアーバレストの周辺宙域は、既に多数のマーダの艦隊に抑えられていたからだ。

　また、惑星ドーヌルには、既にセーラさんやフランツさんが逃げ延びていた。
　クリシュナはとりあえず、ドーヌルの衛星軌道上に駐留することにしたのだった。

☆★☆★☆

「……で、現在の戦況はどうなのです？」

　私は超高速通信で、モニターの向こうのフランツさんに問う。

『アーバレストの正規軍は壊滅状態だ。Ａ－２２基地は組織的な抵抗ができているが、そう長くはもたないだろう。早く救援に行ってくれ』

「はい、わかりました。善処します」

『……うむ』

　私は『善処する』と言うにとどめた。
　今は正確な敵情が分からず、敵が予想より多ければ、クリシュナとて多勢に無勢ということになりかねなかったのだ。

――二時間後。
　詳しい敵情偵察には、ポコリンの乗った艦載機が向かっていた。

「こちらクリシュナ、敵情はどうだ？」

『ぽこここ……、ぽこ』

　ポコリンの乗る艦載機から敵情の画像データが入る。

　それによると、戦艦のような大型艦が４隻、その他の中小型艦が１００隻以上といった陣容だった。
　とてもクリシュナ一隻で相手にできる数では無かった。

　私はすぐにフランツさんに通信を入れた。

「敵は予想を上回る数です、どうしたものでしょう？」

『……それについてだが、惑星ドーヌルの政府から、防衛艦隊を派兵してもらえることになった。力を合わせて頑張ってほしい！』

「わかりました」

　通信を切るや否や、惑星ドーヌルから多数の艦が離陸してくるのが見えた。

　数は約８０隻といった陣容だった。
　その中には、大型の戦艦や巡洋艦の姿も多数見える。

　ドーヌルとアーバレストは同じ星系の惑星だ。
　アーバレストが陥落すれば、マーダの次の侵略目標はドーヌルとなることは必然だった。
　それゆえ、ドーヌルの政府が援兵を出すのには、ある意味当然の選択だった。

　その後、私はドーヌルの防衛艦隊旗艦に挨拶に出向くことにした。

☆★☆★☆

「君がライス家の雇われ軍師さんのカーヴ君だね」

「はい、この度の御援軍感謝です。力を合わせてマーダを撃滅しましょう！」

　私はドーヌルの艦隊司令官に挨拶をしたのち、おもむろに共同作戦を提示した。
　但し、我がライス家の戦力は既にマーダに敗れ、クリシュナ以外は僅か４隻の中型艦のみといった惨状であったが……。

「いや、それには及ばん！」

「はい？　それはどういう意味で？」

「指揮系統の問題もあるのでな。この戦いは鍛えられた我がドーヌルの艦隊だけで行う。もはや敗残兵である貴官らは、おとなしく後ろで見ていてもらおう！」

　ドーヌルの艦隊司令官は、私達との共同作戦を断ってきた。
　司令官の周りの参謀たちの私を見る目線も冷たい。
　クリシュナと我々は、もはや戦力外といった雰囲気であった。

「……では、ご武運をお祈りいたします！」

「若いのにわきまえておって、よろしい！」

　司令官は立派な髭をさすりながら、自慢げにそう答えた。
　私の外見は若いが、既に１００年以上も生きているのだが……。

「……この仕打ちはあんまりなのでは？」

　帰り道の途上、副官としてついてきたブルーが不満を鳴らす。

「まぁ、決まったことだ。もう言うな」

　この戦力外の決定、私はあることを試すのに好機だと思っていたのだった。

☆★☆★☆

『……なんと！？　敵の大型母艦が近くにあると！？』

　クリシュナに帰還後、超光速通信モニターの向こうでフランツさんが驚く。
　私は共同戦線を断られた報告と共に、新たな提言をしたのだった。

「そうです、マーダの小型艦艇にはワープエンジンらしきものが付いていませんでした。……ということは、あの多数の艦艇を運んできた巨大な母艦が近くにあると思われます」

『……分かった。それを探して破壊したいということだな？』

「確証がありませんが、この際やってみたいと思います」

『うむ、カーヴ殿の思うとおりにやってくれ。私は軍事に疎くてな』

　モニターの向こうで、フランツさんは白髪頭をかいている。

「あと、もう一つ」

「なんだね？」

「ご領主さまと共に、惑星ライスに退避してほしいのです！」

　そう言うと、フランツさんは少し険しい顔になる。

「……それはつまり、このドーヌルの地も安全ではないと？」

「はい」

「分かった。すぐにお嬢様には準備をしてもらう！」

「有難うございます！」

　私はこうしてできるだけリスクを減らすことに務めたのだった。

――その二時間後。

　惑星ドーヌルの防衛艦隊が、陣形を整え整然と惑星アーバレストに進軍。
　その反対方向へ同時刻、惑星ライスへ向かうセーラさんとフランツさんの乗る宇宙船が飛び立っていった。
　そのどちらでもない方角に向けてクリシュナは始動。

「エンジン始動。速力は第二宇宙速度へ！」

『了解！』

　まだ見ぬ敵の宇宙母艦を探しに、再びユーストフ星系外縁部を目指したのだった。

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