宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

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第四十九話……ウーサとの休日

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「気を付けて運べよ！」

『了解！』

　惑星ライスのテラフォーミングは継続的に続いていた。
　小惑星帯から氷の塊を切り出し、宇宙用クレーンを使いクリシュナで丁寧に運んでいった。

　もう惑星ライスには住民が住んでいるので、宇宙空間から氷の塊を自然落下させるという荒業は使えないでいたのだ。

　幸いと言うには語弊があるが、マーダの侵攻に遭って住戸を亡くした方々が多く、住民のなり手は沢山存在していた。
　そのため、最近は惑星ライスの近隣宙域には、移民用の大型宇宙船が多数航行するようになっていた。

　住民が増えるのは良いことだが、急激に人口が増えると犯罪率が上昇する。
　雇用や教育、交通などのインフラ整備も急ピッチで行われなくてはならなかった。

『カーヴ殿！　水が足らんよ！　もっと氷を調達してくれ！』

「了解です！」

　主に惑星ライスの行政を担当しているフランツさんから、資材や水などの調達指示が来る。
　少し人使いが荒い気もするが、私みたいな軍人などは、内政担当の下につくのが平和でいいことは、歴史が証明するところだった。

　その後も、クリシュナと私は八面六臂の忙しさで、昼夜分かたず惑星ライスの開発に尽力したのだった。

☆★☆★☆

「ウーサ、もう一杯頼む！」

「飲ミ過ギジャナイデスカ！？　オ体ニ悪イデスヨ！」

　私は、少ない休日は必ずウーサの店に来ていた。
　飲み過ぎと諫められるも、バイオロイドのアルコール中毒なんて聞いたことは無かった。

　渋々手渡された純度３７度のウイスキーを片手に、彼女の黒鉄の体を、ぼーっと見つめる。

「……ナニヲ見テイルノデスカ？」

「いや、ウーサの顔が奇麗だなって……」

「嫌ダナ、機能重視デ良イトコナンテナニモナイデスヨ」

「そうかな？　私は良いと思うけど」

　私はぼーっとしながら応答すると、彼女は思わぬ提案をしてきた。

「……モシ良ケレバ、私ニ素敵ナ体ヲ買ッテクダサイマスカ？」

「いいよ、いつもお世話になっているからね……」

　何の気なしにそう答えると、ウーサが見せてくれたのは、アンドロイド用のパーツのパンフレットだった。

「……私ニハ、購入権ガナイノデ買エナイノデス！」

「へぇ」

　酔いが回っているのもあり、うんうんと生返事をする私。
　フランツさんに貰ったボーナスがあることもあり、彼女が希望するパーツを買ってあげることにしたのだった。

☆★☆★☆

――二週間後。

「いらっしゃいませ！」

「ぇ！？　誰！？」

「ウーサですよ、うふふ」

　ウーサの店に入って、私はとても驚いた。
　機能美に溢れた機械体といった形の彼女の面影はなく、極めて女性らしい金属ボディーを持つアンドロイドが面前にいたのだ。

　しかも、発音まで量産ロボットの感が無くなった。
　これはこれで良いのだが、目のやり場に困るようなボディーだった。

「ウーサ、次は洋服を買おうよ！」

「洋服？　何でですか！？」

　彼女は金属体とはいえ、立派な胸もお尻もある女性らしいシルエットだったのだ。
　洋服を着てもらわないと落ち着かない。

「私はお金を持ってないので……」

「ああ、良いよ。今度の休みにショッピングに行こう！」

「……う、うれしい……、でもこの気持ちなんでだろう？」

　しかし、彼女は定められたこの宇宙船より外に出ることが出来ない。
　これを何とかせねば、ウーサの外出は叶わなかったのだ。

☆★☆★☆

【システム通知】……宇宙船アルファ号の中央コンピューターに侵入します！

　……ＯＫだ、続けてくれ。

　私の副脳をアルファ号のコンピューターと繋ぎ、ハッキングを試していた。
　外部に停泊しているクリシュナの演算装置も借りて、総力戦といった感じでこれに臨む。

――八時間後。

【システム通知】……ファイアーウオール突破成功、オーナー権奪取に成功しました。

　遂に巨大宇宙船アルファ号のメインコンピューターを乗っ取ることに成功する。

「旦那、なんでこんなことに必死なんです？」

「いや、うん、いろいろと便利だろうとね……うん」

「……へぇ」

　休日返上で手伝ってくれたブルーは不満そうだ。

【システム通知】……量産型ロボット、ウーサの管理権をクリシュナへ移譲完了しました。

　……よし！
　これでウーサは外に出れるぞ！

「ブルー、有難う！　これで遊んできてくれ！」

　私は１万クレジット札を２０枚ほどブルーに手渡す。
　……かなり手痛い出費だが致し方あるまい。

「旦那、話がわかるぅうう！　ではこれにて失礼します！」

　ブルーは急いでどこかへ飛んでいった。

　その後、私はウーサとともに惑星ライスの商店街でショッピングを楽しんだ。
　それは、私としても記念すべき休息日だった……。

☆★☆★☆

――更に数日後。
　私がクリシュナの艦橋で、ブルーとトランプで遊んでいると、超高速通信で緊急連絡が届いた。
　映像モニターを開くと、映ったのはフランツさんの蒼くなった顔だった。

『カーヴ殿、非常事態だ。惑星アーバレストがマーダ連邦に猛攻撃されている！』

「なんですって！？」

　惑星アーバレストは、今やクーデター派の統治下ではあるが、Ａ－２２基地周辺は友邦の居住コロニーがあったのだ。
　さらにはクーデター派と言え、友邦たる人類と言えないこともない。

　……やはり、人類対マーダの構図は変えたいものだったのだ。

　クリシュナは緊急発進して、惑星アーバレストがあるユーストフ星系に急いだ。

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