宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

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第四十六話……培養液の中の創造主

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 私はステレス戦車【バトルマスター】を降りて、大きな機械虎に歩み寄る。
 襲ってくる気配はなく、何かを言いたそうな不思議な雰囲気だったからだ。


「グルル……」

 虎は私に向け少し唸った後、踵を返してゆっくりと歩いていく。

 ……ついてこいということか?
 虎は何も語らないが、とてもそんな気がしたのだ。


「ブルー! 行くぞ!」

「了解!」

 私はブルーと共に、この機械虎の後についていった。
 我々は機械生物の多いこのジャングルの奥地へと進んでいったのだった。



☆★☆★☆

――三時間後。

 我々はジャングルの中にある薄暗い洞窟の中を歩いていた。
 機械製の虎は、私たちを先導するかのように、ゆっくりと洞窟の奥へ奥へと進んでいく。


「!?」

 洞窟の突き当りには、機械類の満載された部屋に行きついた。
 見たことのない物もあるほどの、高度な文明が成し得る機械類が所狭しと並ぶ。

 よく見ると、その中央部には巨大な培養層みたいなものがあった。

 その中には、巨大な脳みそと眼球、そして延髄らしきものが入っていた……。
 しかし、それらの血色は総じて悪く、今にも死に絶えそうな気配だった。


「よく来たな!」

 ……!?
 培養層らしきものから声が聞こえてくる。

 しかも、この世界の言葉ではない。
 懐かしき地球語だ!

 ……しかし、なんでこの世界に!?


「……ほう、戦術兵器のUタイプか……、懐かしいな」

 なに!?
 私の製造シリーズも知っているだと!?
 こいつ何者だ!?


「なにも驚くことはない。私はこの世界を作りし、創造主こと地球人の成れの果てよ……、私の他にはもう一人しかいないが……」

「創造主だと!? それに二人しかいないだと? 地球人はゆうに360憶はいたはずだ」

「……あはは、お主は長い間寝てでもいたのではないか? まぁ、教えてやるか。……我々はその昔。より優れた種となるべく交配を続けた。その成れの果ては、優れた者同士の近親交配に落ち着く。それに伴い地球人は凄まじい勢いで数を減らしたのだ……」

「そんな馬鹿な!?」

 私は驚いた。
 近親交配が種を絶やす道だというのは、はるか昔から解っていたことだ……。


「……ふふふ。だがな、我々地球人たちは、より優れた能力への欲望に抗しきれなかったのだ。より優れた者同士の交配が止まることはなかったのだよ……」

 確かに、ある特定の特徴や才能をもつ限られた子孫を求めれば、その究極的な手段は近親交配だ。
 そんなことをすれば、遺伝子異常を起こし、地球人は死に絶えてしまうのだが……。


「……それにな、我々地球人は対消滅機関を駆使した大戦乱を起こし、この宇宙の組成さえも変えるほどの被害を出したのも、我々が急激に数を減らした理由なのだ……」

「……」

 私とブルーは、もはや驚きに包まれ、黙って話を聞き入るしかなかった。


「……でな、組成を変えた荒れた世界でも生活できる体が欲しくなり、人類にきわめてよく似たバイオロイドを作ったのだ」

「それは今どこにいる!?」

 私が語気を強めて聞くと、培養層の主が少し笑ったように感じる。


「それはお前たちの今の主人だ。自分たちを人類だと思っているだろうがな……。すべては我々、創造神たる地球人のつくりしものよ……」

「……では、マーダ星人はどうなのだ!?」

 私は次々に疑問をぶつける。
 培養液の主人は小刻みに震える。


「我々が作りし今のお前の主人たちは、我々地球人の言うことを聞かなかった。我々の新しい肉体になりたくはないと……。それゆえ我々は彼等の天敵を創造することにした。彼らを食べるように、そして絶滅させるために設計された生物こそマーダだ……」

「……」

「……が、両者は争いつつも繫栄し、地球人だけが滅びるという滑稽な形に成ってしまったがな……」

「……つまり、今いる人類もマーダも、地球人が作りしバイオロイドだと!?」

「信じるも信じないも、君の自由だよ。U型の殺人兵器君……」

「……」

 その時、妙な雰囲気を感じる。
 よく見ると、培養液の中身が脆くも崩れ始めていったのだ……。


「待て! まだ聞きたいことがある!」

「……ふふふ、我が命もここまで。これ以上聞きたければ、のこりの最後の地球人でも探してみるんだな……。ぐふ……」

 力ない声でそれだけ発すると、培養液の主は崩れ去った。
 きっと、死んだのだろう……。

 ……最後から2番目の地球人として。


「……くうん」

 機械製の虎が、培養液に向かって悲しそうに泣いている。
 この虎も培養液の主が作ったものだろうか?


「……旦那、この脳みその話を信じるんで?」

「どうだろうな? だが、ここへきて良いものが見つかったのは事実だ……。あれを見ろ、ブルー!」

「あっ!?」

 培養液の主の部屋に置かれていたのは、我々が使える優れた生体部品もあったのだ。

 この世界にはあり得ないほどの高性能なパーツの数々。
 上手く組み込めさえすれば、かなりのパワーアップも可能だった。

 ……その部品の性能が良ければよいほど。
 この培養液の中の亡骸が、地球人である可能性が高まっていくのだが……。

 ……ヤツの話が正しければ、セーラさんもフランツさんも地球人が作ったバイオロイドの末裔なのか。


「とりあえず、奴の話を信じるかどうかは脇におこう! 今は今の主人の為に働くだけだ!」

「わかりやした!」

 誰にともなくつぶやいたのだが、ブルーの元気な返事が返ってきて、私は少し救われた気分になったのだった。



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