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第二十八話……ゲルラッハ要塞のホールマン伯爵
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『ワープアウト完了。現在位置はメドラ星系外縁部、第111-B8宙域』
「了解!」
我々はメドラ星系の外縁部へとワープアウト。
ここは依然としてマーダ連邦の勢力が残っていたのだ。
それゆえに、我々は援軍としてここに来たのだった。
この星域の支配者は、ゲルラッハ要塞に立て籠もるホールマン伯爵。
挨拶と諸々を済ませるべく、クリシュナはゲルラッハ要塞へと入港したのだった。
『こちら管制、クリシュナへ入港を歓迎する』
「歓迎を感謝する!」
ゲルラッハ要塞は、直径20kmの小惑星をくりぬいた半人工の天体だった。
宇宙港などの軍事施設のみならず、民生用の施設も多くあり、それはまさに賑やかな繁華街といった趣だった。
「いやあ、カーヴどのでしたかな? 来ていただき光栄ですぞ!」
「伯爵直々にお出迎えいただき、恐縮です」
宇宙港ではホールマン伯爵が出迎えてくれた。
彼はきらびやかなマントを纏う恰幅の良い男であった。
彼と一緒に水素自動車に乗り、彼の館へと出向く。
「おおっ!? 旦那、凄いご馳走ですな!」
ブルーが喜ぶようなご馳走が沢山の晩餐がひらかれる。
もちろん、私も嬉しくない訳では無いのだが……。
テーブルの上には山海の珍味が並び、立食パーティー形式で我々をもてなしてくれた。
出席者は200名以上もいた盛大な晩餐だった。
……しかし、思うのだが、メドラ星系とて長い戦乱の影響で、決して豊かではないはず。
このような支配者の贅沢が、宇宙海賊などの出没に起因しているのだ。
庶民がこのパーティー会場をみれば、マーダ星人に味方してしまいかねない華美さであった。
「……で、カーヴ殿。貴公の艦隊は我が要塞に駐留してくだされ」
「え!? 任務は星域の開放と聞いておりましたが!?」
フランツさんからは、マーダ連邦に支配された惑星を取り返す作戦と聞いていたのだ。
「ふはは、庶民の生活などどうでもよいではありませんか? この要塞にいれば我々は安全なのですぞ!」
ホールマン伯爵は我々と一緒にこの要塞を守ってほしいという。
不本意ではあるが、我が艦隊は5隻のみで、単独ではマーダ連邦の艦隊とは到底に戦えない。
そもそも、我々は援軍なので、援軍先の将に従うべき現状ではあった。
「敵の戦力はいかほどですか?」
私は、伯爵の傍で実務を束ねていそうな将官に聞いてみる。
「概ね80隻というところです。我が方は貴公を含めて65隻。よって要塞での防衛戦でよろしいかと……」
じっとりとした汗を拭きながらに答える将官。
しかし、実は数というのはあまり当てにならない。
クリシュナは比較的大きな艦艇であるし、連れて来た僚艦のレーザー艦艇は100m級の小型のものだった。
もっとも小型のミサイル艦艇は60m級であるし、逆に戦艦ともなれば400m級の船もあったのだった。
「マーダの船は大型艦なのですか!?」
「いえ、小型ばかりと聞いております。正確な情報ではないかもしれませんが……」
将官は言葉を濁らせる。
彼も内心は戦うべきだと思って言うのであろう。
……だが、所詮は宮仕えだ。
主に逆らうことは不義であり、任務外の行動こそは、ご法度であった。
「わかりました。とりあえずは防衛戦ということで」
「有難い、ご理解感謝しますぞ!」
将官は喜んで伯爵の下へと報告に行った。
彼の今後の胃袋を心配してやまない。
クリシュナと僚艦4隻は要塞内のドックへと入り、整備と補給へと移っていった。
☆★☆★☆
――二週間後。
私は要塞司令部の片隅に席を構えていた。
『敵は惑星ロードスにて破壊行為を継続中!』
『これに乗じて宇宙海賊どもが、略奪行為をしている模様!』
「かまわん、好きにさせておけ!」
偵察機の報告に、ホールマン伯爵は煙草を咥えながらに、悠然と答える。
マーダ連邦は異星人だが、宇宙海賊は同じ人類。
実際には違うのだが、彼らはまるで共闘しているようであった。
「伯爵、出撃許可を願いたい!」
「なに? 我等の方が寡兵なのですぞ! フランツ殿には追加の援軍を要請してある。暫し待たれよ!」
ホールマン伯爵は怪訝な顔で、私の出撃具申を却下してきた。
「いえ、マーダとは戦いません。民の敵である宇宙海賊だけを撃滅するのです!」
「……ふうむ、賊だけなら構わんか」
意外にもホールマン伯爵が折れる。
「そのお役目私にも!」
意外なホールマン伯爵の返答に、要塞内の将官達が次々に手を挙げる。
「馬鹿もんが、皆で行けばここの守りが手薄になるわ!」
ホールマン伯爵が激怒し、結局はクリシュナと僚艦4隻のみでの出撃となった。
羨ましそうな将官各位の顔が苦々しい。
行きたければ、もっともな自分で口実を探すべきである。
それが優秀な将官たりえるはずである。
「出航用意!」
『管制よりクリシュナへ、8番ゲートを開いた。幸運を祈る!』
「了解!」
クリシュナは要塞ゲルラッハを出航。
マーダ連邦の攻撃に便乗する宇宙海賊への撃滅の為に出撃した。
敵は小型艦なれども20隻。
非正規軍とは言え、油断ならない戦力であった。
「了解!」
我々はメドラ星系の外縁部へとワープアウト。
ここは依然としてマーダ連邦の勢力が残っていたのだ。
それゆえに、我々は援軍としてここに来たのだった。
この星域の支配者は、ゲルラッハ要塞に立て籠もるホールマン伯爵。
挨拶と諸々を済ませるべく、クリシュナはゲルラッハ要塞へと入港したのだった。
『こちら管制、クリシュナへ入港を歓迎する』
「歓迎を感謝する!」
ゲルラッハ要塞は、直径20kmの小惑星をくりぬいた半人工の天体だった。
宇宙港などの軍事施設のみならず、民生用の施設も多くあり、それはまさに賑やかな繁華街といった趣だった。
「いやあ、カーヴどのでしたかな? 来ていただき光栄ですぞ!」
「伯爵直々にお出迎えいただき、恐縮です」
宇宙港ではホールマン伯爵が出迎えてくれた。
彼はきらびやかなマントを纏う恰幅の良い男であった。
彼と一緒に水素自動車に乗り、彼の館へと出向く。
「おおっ!? 旦那、凄いご馳走ですな!」
ブルーが喜ぶようなご馳走が沢山の晩餐がひらかれる。
もちろん、私も嬉しくない訳では無いのだが……。
テーブルの上には山海の珍味が並び、立食パーティー形式で我々をもてなしてくれた。
出席者は200名以上もいた盛大な晩餐だった。
……しかし、思うのだが、メドラ星系とて長い戦乱の影響で、決して豊かではないはず。
このような支配者の贅沢が、宇宙海賊などの出没に起因しているのだ。
庶民がこのパーティー会場をみれば、マーダ星人に味方してしまいかねない華美さであった。
「……で、カーヴ殿。貴公の艦隊は我が要塞に駐留してくだされ」
「え!? 任務は星域の開放と聞いておりましたが!?」
フランツさんからは、マーダ連邦に支配された惑星を取り返す作戦と聞いていたのだ。
「ふはは、庶民の生活などどうでもよいではありませんか? この要塞にいれば我々は安全なのですぞ!」
ホールマン伯爵は我々と一緒にこの要塞を守ってほしいという。
不本意ではあるが、我が艦隊は5隻のみで、単独ではマーダ連邦の艦隊とは到底に戦えない。
そもそも、我々は援軍なので、援軍先の将に従うべき現状ではあった。
「敵の戦力はいかほどですか?」
私は、伯爵の傍で実務を束ねていそうな将官に聞いてみる。
「概ね80隻というところです。我が方は貴公を含めて65隻。よって要塞での防衛戦でよろしいかと……」
じっとりとした汗を拭きながらに答える将官。
しかし、実は数というのはあまり当てにならない。
クリシュナは比較的大きな艦艇であるし、連れて来た僚艦のレーザー艦艇は100m級の小型のものだった。
もっとも小型のミサイル艦艇は60m級であるし、逆に戦艦ともなれば400m級の船もあったのだった。
「マーダの船は大型艦なのですか!?」
「いえ、小型ばかりと聞いております。正確な情報ではないかもしれませんが……」
将官は言葉を濁らせる。
彼も内心は戦うべきだと思って言うのであろう。
……だが、所詮は宮仕えだ。
主に逆らうことは不義であり、任務外の行動こそは、ご法度であった。
「わかりました。とりあえずは防衛戦ということで」
「有難い、ご理解感謝しますぞ!」
将官は喜んで伯爵の下へと報告に行った。
彼の今後の胃袋を心配してやまない。
クリシュナと僚艦4隻は要塞内のドックへと入り、整備と補給へと移っていった。
☆★☆★☆
――二週間後。
私は要塞司令部の片隅に席を構えていた。
『敵は惑星ロードスにて破壊行為を継続中!』
『これに乗じて宇宙海賊どもが、略奪行為をしている模様!』
「かまわん、好きにさせておけ!」
偵察機の報告に、ホールマン伯爵は煙草を咥えながらに、悠然と答える。
マーダ連邦は異星人だが、宇宙海賊は同じ人類。
実際には違うのだが、彼らはまるで共闘しているようであった。
「伯爵、出撃許可を願いたい!」
「なに? 我等の方が寡兵なのですぞ! フランツ殿には追加の援軍を要請してある。暫し待たれよ!」
ホールマン伯爵は怪訝な顔で、私の出撃具申を却下してきた。
「いえ、マーダとは戦いません。民の敵である宇宙海賊だけを撃滅するのです!」
「……ふうむ、賊だけなら構わんか」
意外にもホールマン伯爵が折れる。
「そのお役目私にも!」
意外なホールマン伯爵の返答に、要塞内の将官達が次々に手を挙げる。
「馬鹿もんが、皆で行けばここの守りが手薄になるわ!」
ホールマン伯爵が激怒し、結局はクリシュナと僚艦4隻のみでの出撃となった。
羨ましそうな将官各位の顔が苦々しい。
行きたければ、もっともな自分で口実を探すべきである。
それが優秀な将官たりえるはずである。
「出航用意!」
『管制よりクリシュナへ、8番ゲートを開いた。幸運を祈る!』
「了解!」
クリシュナは要塞ゲルラッハを出航。
マーダ連邦の攻撃に便乗する宇宙海賊への撃滅の為に出撃した。
敵は小型艦なれども20隻。
非正規軍とは言え、油断ならない戦力であった。
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