宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

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第二十六話……圧壊深度

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「お帰り、ご苦労だったね！」

「いえ、失礼します！」

　惑星アーバレストに帰り、フランツさんに挨拶するも、すぐ彼の執務室を退室する。
　どうも高級ホテルで腑抜けていた自分が嫌なのだ。

　その後、アーバレストの港湾設備を見に回る。
　何故ならば、先に出撃した艦艇の殆どがドック入り若しくは撃沈されていたのだ。
　これを解決するのが、軍師たる私の務めでもあった。

「修理は順調かな？」

「いえいえ、全然ですね」

　港湾の技術者に尋ねるも良い返事はない。

　その原因は、宇宙船の重要パーツが、失われた過去の文明に依存している物が大きかったのだ。
　新造艦と言えども、エンジンや中枢管理コンピューターなどは過去の文明の遺産に依存していたのだ。

　その遺産を何百年も使いまわし、再利用する世界がこの惑星アーバレストだったのだ。
　再利用とは聞こえがいいが、一度重要パーツを失えば、二度とワープできるような宇宙船は作れないということだった。
　せいぜいがイオンエンジンを作るのが精いっぱいといった感じである。

「カーヴさん、重要パーツの方を、新規でなんとかなりませんかね？」

「ええと、とりあえずは今のところないですね！」

　逆に技術者に問い詰められる。

　何を問われたかと言うと、私が鉱山を採掘しているため、掘っている間に、稀に過去の文明の遺産が出てくるのだ。
　つまりは地下の中から、高性能なエンジンやコンピューターがでてくるのだ。
　それを技術者たる彼らは当てにしているのだった。

　過去の大戦争から生き残った人類は、多かれ少なかれ、こういう技術鉱山の傍らに住んでいる。
　失われた技術の恩恵が、多少は得られるからだ。
　なにも好き好んで、砂嵐の荒野にコロニーを建てているわけでは無かったのである。

「……では、また顔を出しますね」

「パーツ頼んましたよ！　高くても買いますからね！」

「はい、頑張ります」

　頼まれたら出てくるわけがないが、マーダ連邦との新たな戦いの為に、重要な部品は一つでも多いのが良いのが事実だった。
　私は港湾地区の技術者に別れを告げ、Ａ－２２基地へと車を飛ばす。

「旦那、もっと鉱山掘りましょうよ、お金が儲かりますよ！」

「うーん、掘るってどこを掘るんだよ？」

　助手席で気軽に掘れと言ってくるブルー。
　ただ闇雲に掘るだけでは、お金と時間の無駄だったのだ。
　なにか、いい方法はないかなぁ、と考えていると。

「掘るのが嫌なら、潜ればいいんじゃない！？」

「そ・れ・だ！」

　ブルーの発言に大声を出してしまい、驚かれる。

　が、地中を掘るだけが採掘ではない。
　きっと、海の中にも沈んでいるはずだったのだ。

　このアーバレストの人たちが探していない深海に限ってだろうけど、逆に考えれば、深い海は探していない可能性が高かったのだ。

　私はＡ－２２基地の外れで、魚の畜養施設で餌をやっているトムを見つける。
　このＡ－２２地区は、若干ではあるが海に面した地域だったのだ。
　ただこの海は酷く汚染されており、海水浴などは無理であったが……。

「親分、お帰りです！」
「トム、今からすぐに来てくれ！」

　私はトムを見つけるなり、急いでクリシュナまで同行してもらう。
　彼は我が第３８鉱区の開発担当であり、いわば重要パーツ探索の先任者であった。

「親分どこへいくんでさぁ？」

「お金がザックザクなとこですわ！」

　ブルーがいい加減なことを言った後に、ちゃんと説明をする。

「……ぇ？　海の中から重要部品を？」

「ああそうだ！　ありそうかな？」

「やってみないと分かりませんが、ありそうな地層を見分けることなら出来ますぜ！」

「よし、頼んだぞ！」

　私達はクリシュナを離陸させ、近くの海へと着水する。
　すぐ近くでは、汚染された海に似合う大きなハゲタカが、小さな海獣を捕って運んでいく。

「耐圧シャッター降ろせ！」

『了解、各区画気密ハッチ閉鎖！』

　次々にクリシュナの戦術コンピューターに音声指示。
　通常モードから海中潜航モードへとシステムを移行させていった。

「ベント開け！　潜航開始！」

『タンク注水します！　潜航開始！』

　機械音声が水中へと潜ることを伝えて来る。
　太陽光による電力補充が難しいので、艦橋も非常灯のみでの操艦に切り替わる。

『深度、２０、３０……』
『５０……１００、……１５０、２００』

『３００……３５０、４００』

　戦術コンピューターが音声で深度を知らせて来る。
　窓からは不思議な形の深海魚がときおり見えた。

　確かにクリシュナは宇宙空間での気密性はある。
　……が、しかし、深深度での圧力にどれだけ耐性があるのかは疑問だった。

　この世界に不時着してから、傷ついて弱くなっている箇所が不安だったのだ。
　時折ギシギシと嫌な音がする。

『第６３区画進水！』

「いかん、６３区画ごと凍結させろ！」

『了解！　急速冷凍開始！』

　クリシュナは高圧で傷ついた外殻部分を、凍結させることで浸水を食い止める。
　応急処置であるが、外部は海水であるので、容易に解けることはなさそうである。

　……が、

『第６９区画、第１３６区画進水！』
『第８９区画圧壊。第２８区画進水！』

　けたたましい警戒音が響き、次々に浸水を知らせて来た。
　どうやらクリシュナは、見えない部分で満身創痍のようであった。

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