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第十九話……アッシはトム ~やせた髭男~
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「出来ることなら討伐してください!」
「お任せください!」
結局、宇宙海賊の対処は一切を私に任された。
セーラさんは、こと軍事や警備に関しては、私に信頼を置いているようで嬉しかった。
「全艦離陸! 最大戦速!」
A-22基地からクリシュナが飛び立ち、それを追うかのように、老朽艦5隻が続いた。
「旦那、どうしますか?」
クリシュナの艦橋でブルーが聞いてくる。
「電磁防壁出力最大! そのまま突っ込め!」
「了解!」
燃料のコストパフォーマンスが悪いが、惑星アーバレストの重力圏を全速力で離脱。
そのまま衛星軌道上に展開する海賊船に艦首を叩きつけた。
――ドコァアア!
漆黒の空間に眩い光球が生じる。
油断していたであろう海賊船は、横っ腹にクリシュナの体当たりを受けて真っ二つ。
寸時を置いて、海賊船は爆発炎上した。
「敵、爆散! 残骸は炎上中!」
「よし! 次だ!」
クリシュナの艦首部分は鏡面加工された30メートルもの巨大な装甲区画があり、艦体はフロントヘビーなマッコウクジラのような形をしていた。
これによりミサイルや重粒子弾などを弾き、電磁防壁を貫いてくる高出力レーザービームをも無力化するのだ。
クリシュナは空母でありながら、単純に前方向防御力に限って言えば、無双の力をもちえていたのだ。
もちろん体当たりも得意分野である。
「敵部隊、算を乱して逃走します!」
迎撃にあがってきた部隊が、いきなり体当たりしてきたので、相手は肝を潰したのだろう。
次に衝突の標的にされては堪らない。
大体そんな感じだろうか。
「砲撃始め!」
私は戦術コンピューターに砲撃を指示。
36cm砲塔型レールガンが次々に破壊の鉄槌を吐き出していく。
交戦僅か15分といったところで、宇宙海賊部隊は壊滅。
戦果は8隻を撃沈、1隻の大破。
損害を免れた海賊船3隻も降伏し、順次エンジンの火を消した。
「ご領主様、敵は残らず降伏いたしました。どういたしますか?」
私はセーラさんに戦況を報告。
降伏者の処遇を尋ねた。
なにしろ、衛星軌道上から地上攻撃を行おうとしてきたのだ。
普通に暮らす市民を纏める立場としては、降伏しても許されないところだろう。
『ご苦労様、捕虜の一切は任せますわ!』
「はい?」
メインモニター越しの指示が、一瞬よくわからない。
『だから、軍師さんのいいと思う方向でやってね!』
「……は、はい」
フランツさんが居ないので、ややこしいことは私に丸投げしたい雰囲気の様だ。
無邪気に手を振って通信を切る様子が、若干小悪魔に見えた。
「ブルー、どうしたらいいと思う?」
「油で揚げて食いますか?」
「お前はマーダ星人か!?」
「あはは!」
無邪気にブルーが応じてくれたことで、私は少し気が楽になる。
その後、クリシュナにブルーを残し、私は捕虜の引見に臨むことにした。
☆★☆★☆
「貴様が敵将か? ガハハ! ワシがこんな小僧に負けただと!?」
「うるさい!」
私は手にしていたレーザー拳銃で、不遜な対応をしてきた宇宙海賊を殴りつける。
「ぐはっ!」
倒れたところを足で踏みつけ、更に腹を蹴飛ばした。
人権主義者に言わせれば、これは不当な暴力なのかもしれない。
しかし、地上に暮らす市民を脅すやつに、人権など要らないというのが私の信条だった。
「私に従える奴だけこちらに来い! そうでない奴はこの船に残れ!」
「……けっ、誰が貴様みたいな若造に!」
従うものは3割。
なんと、残りの7割は海賊船に残る様子だ。
……完全に舐められている。
このままでは、こいつらを地上に連れ帰っては危険であった。
「ブルー、もう一隻を藻屑にしろ!」
『了解!』
クリシュナの主砲塔が火を噴く。
我々がいる窓の外で、一隻の海賊船が一瞬で爆発し、宇宙の藻屑と化した。
「……で、助けてほしい奴は誰だ!?」
「ひえぇぇえ」
再び捕虜たちに問うと、一名を除き、膝をついて降伏。
電子手錠をかけ、老朽船の船室へとぶち込んだ。
☆★☆★☆
「……で、お前だけは降伏しないと?」
私は脅しても膝をつかなかった一名の海賊に問う。
族長といった形では無く、むしろ下っ端な雰囲気の痩せた貧相な髭男だった。
「ああ、俺の家族はお前たちの仲間に殺された。死んでも頭はさげねぇ!」
「……ん?」
私に仲間と言えば、この世界には数名しかいない。
だが、こいつからしたら、為政者全てが私の仲間なのだろう……。
私は考える。
普通、命の危険が及べば誰しも怯える。
しかし、この髭男、貧相な形とは違って、なかなかに気骨がある風だった。
「……では提案だ、頭は下げなくていい。が、私に雇われろ! 給料は一日当たり10000クレジットだ!」
「え? 何でですかい?」
私はマーダ星人と戦ってくれる命知らずの戦士が欲しいと説明した。
それは人間と戦わず、為政者の為に死ぬのでもないと説いてみた。
「事情は分かりました。でも、お断りですぜ!」
彼はマーダ星人のことは知らなかった。
最近の世情に疎いようであった。
……であっても、駄目なようであった。
「なにしろ給料が高すぎまさぁ……、アッシは一日5000クレジットもあれば十分でさぁ!」
明るく答える、彼の名はトム。
とうに姓は捨てたらしい。
彼を早速クリシュナの臨時乗組員として登録。
クリシュナの戦術コンピューターも賛同を示してくれたのだった。
☆★☆★☆
【DATE】
カーヴ
【性別】男性
【種族】バイオロイド
【給料】20000クレジット/日
ブルー
【性別】男性
【種族】バイオロイド
【給料】謎
ポコリン
【性別】???
【種族】謎なタヌキ
レイ
【性別】女性
【種族】人間
【給料】50000クレジット/日
トム
【性別】男
【種族】人間
【給料】5000クレジット/日
「お任せください!」
結局、宇宙海賊の対処は一切を私に任された。
セーラさんは、こと軍事や警備に関しては、私に信頼を置いているようで嬉しかった。
「全艦離陸! 最大戦速!」
A-22基地からクリシュナが飛び立ち、それを追うかのように、老朽艦5隻が続いた。
「旦那、どうしますか?」
クリシュナの艦橋でブルーが聞いてくる。
「電磁防壁出力最大! そのまま突っ込め!」
「了解!」
燃料のコストパフォーマンスが悪いが、惑星アーバレストの重力圏を全速力で離脱。
そのまま衛星軌道上に展開する海賊船に艦首を叩きつけた。
――ドコァアア!
漆黒の空間に眩い光球が生じる。
油断していたであろう海賊船は、横っ腹にクリシュナの体当たりを受けて真っ二つ。
寸時を置いて、海賊船は爆発炎上した。
「敵、爆散! 残骸は炎上中!」
「よし! 次だ!」
クリシュナの艦首部分は鏡面加工された30メートルもの巨大な装甲区画があり、艦体はフロントヘビーなマッコウクジラのような形をしていた。
これによりミサイルや重粒子弾などを弾き、電磁防壁を貫いてくる高出力レーザービームをも無力化するのだ。
クリシュナは空母でありながら、単純に前方向防御力に限って言えば、無双の力をもちえていたのだ。
もちろん体当たりも得意分野である。
「敵部隊、算を乱して逃走します!」
迎撃にあがってきた部隊が、いきなり体当たりしてきたので、相手は肝を潰したのだろう。
次に衝突の標的にされては堪らない。
大体そんな感じだろうか。
「砲撃始め!」
私は戦術コンピューターに砲撃を指示。
36cm砲塔型レールガンが次々に破壊の鉄槌を吐き出していく。
交戦僅か15分といったところで、宇宙海賊部隊は壊滅。
戦果は8隻を撃沈、1隻の大破。
損害を免れた海賊船3隻も降伏し、順次エンジンの火を消した。
「ご領主様、敵は残らず降伏いたしました。どういたしますか?」
私はセーラさんに戦況を報告。
降伏者の処遇を尋ねた。
なにしろ、衛星軌道上から地上攻撃を行おうとしてきたのだ。
普通に暮らす市民を纏める立場としては、降伏しても許されないところだろう。
『ご苦労様、捕虜の一切は任せますわ!』
「はい?」
メインモニター越しの指示が、一瞬よくわからない。
『だから、軍師さんのいいと思う方向でやってね!』
「……は、はい」
フランツさんが居ないので、ややこしいことは私に丸投げしたい雰囲気の様だ。
無邪気に手を振って通信を切る様子が、若干小悪魔に見えた。
「ブルー、どうしたらいいと思う?」
「油で揚げて食いますか?」
「お前はマーダ星人か!?」
「あはは!」
無邪気にブルーが応じてくれたことで、私は少し気が楽になる。
その後、クリシュナにブルーを残し、私は捕虜の引見に臨むことにした。
☆★☆★☆
「貴様が敵将か? ガハハ! ワシがこんな小僧に負けただと!?」
「うるさい!」
私は手にしていたレーザー拳銃で、不遜な対応をしてきた宇宙海賊を殴りつける。
「ぐはっ!」
倒れたところを足で踏みつけ、更に腹を蹴飛ばした。
人権主義者に言わせれば、これは不当な暴力なのかもしれない。
しかし、地上に暮らす市民を脅すやつに、人権など要らないというのが私の信条だった。
「私に従える奴だけこちらに来い! そうでない奴はこの船に残れ!」
「……けっ、誰が貴様みたいな若造に!」
従うものは3割。
なんと、残りの7割は海賊船に残る様子だ。
……完全に舐められている。
このままでは、こいつらを地上に連れ帰っては危険であった。
「ブルー、もう一隻を藻屑にしろ!」
『了解!』
クリシュナの主砲塔が火を噴く。
我々がいる窓の外で、一隻の海賊船が一瞬で爆発し、宇宙の藻屑と化した。
「……で、助けてほしい奴は誰だ!?」
「ひえぇぇえ」
再び捕虜たちに問うと、一名を除き、膝をついて降伏。
電子手錠をかけ、老朽船の船室へとぶち込んだ。
☆★☆★☆
「……で、お前だけは降伏しないと?」
私は脅しても膝をつかなかった一名の海賊に問う。
族長といった形では無く、むしろ下っ端な雰囲気の痩せた貧相な髭男だった。
「ああ、俺の家族はお前たちの仲間に殺された。死んでも頭はさげねぇ!」
「……ん?」
私に仲間と言えば、この世界には数名しかいない。
だが、こいつからしたら、為政者全てが私の仲間なのだろう……。
私は考える。
普通、命の危険が及べば誰しも怯える。
しかし、この髭男、貧相な形とは違って、なかなかに気骨がある風だった。
「……では提案だ、頭は下げなくていい。が、私に雇われろ! 給料は一日当たり10000クレジットだ!」
「え? 何でですかい?」
私はマーダ星人と戦ってくれる命知らずの戦士が欲しいと説明した。
それは人間と戦わず、為政者の為に死ぬのでもないと説いてみた。
「事情は分かりました。でも、お断りですぜ!」
彼はマーダ星人のことは知らなかった。
最近の世情に疎いようであった。
……であっても、駄目なようであった。
「なにしろ給料が高すぎまさぁ……、アッシは一日5000クレジットもあれば十分でさぁ!」
明るく答える、彼の名はトム。
とうに姓は捨てたらしい。
彼を早速クリシュナの臨時乗組員として登録。
クリシュナの戦術コンピューターも賛同を示してくれたのだった。
☆★☆★☆
【DATE】
カーヴ
【性別】男性
【種族】バイオロイド
【給料】20000クレジット/日
ブルー
【性別】男性
【種族】バイオロイド
【給料】謎
ポコリン
【性別】???
【種族】謎なタヌキ
レイ
【性別】女性
【種族】人間
【給料】50000クレジット/日
トム
【性別】男
【種族】人間
【給料】5000クレジット/日
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