宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
上 下
19 / 56

第十九話……アッシはトム ~やせた髭男~

しおりを挟む
「出来ることなら討伐してください!」

「お任せください!」

 結局、宇宙海賊の対処は一切を私に任された。
 セーラさんは、こと軍事や警備に関しては、私に信頼を置いているようで嬉しかった。


「全艦離陸! 最大戦速!」

 A-22基地からクリシュナが飛び立ち、それを追うかのように、老朽艦5隻が続いた。


「旦那、どうしますか?」

 クリシュナの艦橋でブルーが聞いてくる。


「電磁防壁出力最大! そのまま突っ込め!」

「了解!」

 燃料のコストパフォーマンスが悪いが、惑星アーバレストの重力圏を全速力で離脱。
 そのまま衛星軌道上に展開する海賊船に艦首を叩きつけた。


――ドコァアア!
 漆黒の空間に眩い光球が生じる。

 油断していたであろう海賊船は、横っ腹にクリシュナの体当たりを受けて真っ二つ。
 寸時を置いて、海賊船は爆発炎上した。


「敵、爆散! 残骸は炎上中!」

「よし! 次だ!」

 クリシュナの艦首部分は鏡面加工された30メートルもの巨大な装甲区画があり、艦体はフロントヘビーなマッコウクジラのような形をしていた。
 これによりミサイルや重粒子弾などを弾き、電磁防壁を貫いてくる高出力レーザービームをも無力化するのだ。
 クリシュナは空母でありながら、単純に前方向防御力に限って言えば、無双の力をもちえていたのだ。
 もちろん体当たりも得意分野である。


「敵部隊、算を乱して逃走します!」

 迎撃にあがってきた部隊が、いきなり体当たりしてきたので、相手は肝を潰したのだろう。
 次に衝突の標的にされては堪らない。
 大体そんな感じだろうか。


「砲撃始め!」

 私は戦術コンピューターに砲撃を指示。
 36cm砲塔型レールガンが次々に破壊の鉄槌を吐き出していく。


 交戦僅か15分といったところで、宇宙海賊部隊は壊滅。
 戦果は8隻を撃沈、1隻の大破。
 損害を免れた海賊船3隻も降伏し、順次エンジンの火を消した。


「ご領主様、敵は残らず降伏いたしました。どういたしますか?」

 私はセーラさんに戦況を報告。
 降伏者の処遇を尋ねた。

 なにしろ、衛星軌道上から地上攻撃を行おうとしてきたのだ。
 普通に暮らす市民を纏める立場としては、降伏しても許されないところだろう。


『ご苦労様、捕虜の一切は任せますわ!』

「はい?」

 メインモニター越しの指示が、一瞬よくわからない。


『だから、軍師さんのいいと思う方向でやってね!』

「……は、はい」

 フランツさんが居ないので、ややこしいことは私に丸投げしたい雰囲気の様だ。
 無邪気に手を振って通信を切る様子が、若干小悪魔に見えた。


「ブルー、どうしたらいいと思う?」

「油で揚げて食いますか?」

「お前はマーダ星人か!?」

「あはは!」

 無邪気にブルーが応じてくれたことで、私は少し気が楽になる。
 その後、クリシュナにブルーを残し、私は捕虜の引見に臨むことにした。



☆★☆★☆


「貴様が敵将か? ガハハ! ワシがこんな小僧に負けただと!?」

「うるさい!」

 私は手にしていたレーザー拳銃で、不遜な対応をしてきた宇宙海賊を殴りつける。


「ぐはっ!」

 倒れたところを足で踏みつけ、更に腹を蹴飛ばした。
 人権主義者に言わせれば、これは不当な暴力なのかもしれない。
 しかし、地上に暮らす市民を脅すやつに、人権など要らないというのが私の信条だった。


「私に従える奴だけこちらに来い! そうでない奴はこの船に残れ!」

「……けっ、誰が貴様みたいな若造に!」

 従うものは3割。
 なんと、残りの7割は海賊船に残る様子だ。

 ……完全に舐められている。
 このままでは、こいつらを地上に連れ帰っては危険であった。


「ブルー、もう一隻を藻屑にしろ!」

『了解!』

 クリシュナの主砲塔が火を噴く。
 我々がいる窓の外で、一隻の海賊船が一瞬で爆発し、宇宙の藻屑と化した。


「……で、助けてほしい奴は誰だ!?」

「ひえぇぇえ」

 再び捕虜たちに問うと、一名を除き、膝をついて降伏。
 電子手錠をかけ、老朽船の船室へとぶち込んだ。



☆★☆★☆


「……で、お前だけは降伏しないと?」

 私は脅しても膝をつかなかった一名の海賊に問う。
 族長といった形では無く、むしろ下っ端な雰囲気の痩せた貧相な髭男だった。


「ああ、俺の家族はお前たちの仲間に殺された。死んでも頭はさげねぇ!」

「……ん?」

 私に仲間と言えば、この世界には数名しかいない。
 だが、こいつからしたら、為政者全てが私の仲間なのだろう……。

 私は考える。
 普通、命の危険が及べば誰しも怯える。
 しかし、この髭男、貧相な形とは違って、なかなかに気骨がある風だった。


「……では提案だ、頭は下げなくていい。が、私に雇われろ! 給料は一日当たり10000クレジットだ!」

「え? 何でですかい?」

 私はマーダ星人と戦ってくれる命知らずの戦士が欲しいと説明した。
 それは人間と戦わず、為政者の為に死ぬのでもないと説いてみた。


「事情は分かりました。でも、お断りですぜ!」

 彼はマーダ星人のことは知らなかった。
 最近の世情に疎いようであった。

 ……であっても、駄目なようであった。


「なにしろ給料が高すぎまさぁ……、アッシは一日5000クレジットもあれば十分でさぁ!」

 明るく答える、彼の名はトム。
 とうに姓は捨てたらしい。

 彼を早速クリシュナの臨時乗組員として登録。
 クリシュナの戦術コンピューターも賛同を示してくれたのだった。



☆★☆★☆

【DATE】

カーヴ

【性別】男性
【種族】バイオロイド
【給料】20000クレジット/日


ブルー

【性別】男性
【種族】バイオロイド
【給料】謎


ポコリン

【性別】???
【種族】謎なタヌキ


レイ

【性別】女性
【種族】人間
【給料】50000クレジット/日

トム

【性別】男
【種族】人間
【給料】5000クレジット/日

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...