宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
上 下
10 / 56

第十話……拘束、そして収監。

しおりを挟む
「お代は1600クレジットになります!」
「……ご来店、有難うございました!」

 私は二人分の昼食代を払い、ブルーと定食屋をでた。


「旦那、この店の卵料理は美味しかったですね!」

「オムライスとかいうやつだな、また来ようや!」

「はい!」

 楽し気にブウブウ言う相方を連れて、A-22地区へと装輪式の装甲車に乗って戻る。
 最近はこれが愛車だ。
 今日もこの惑星は凄い量の砂ぼこりで、洗車したての愛車は、あっという間に土色になっていった。



☆★☆★☆

「カーヴ軍師殿! 外周の壁がほぼ出来上がりました!」

「了解! 出来るだけ完成を急いでくれ!」

 A-22地区の基地は段々と形に成って来ていた。
 我々の現状の主任務は、正規部隊の支援をして、先ずはテロ組織を壊滅させることにあった。


「やっとるようだね?」

「はい、お陰様で!」

 私に声を掛けてきたのは、この惑星の正規軍司令官メビウス氏。
 髭が似合う、ガッシリとした体躯の壮年の将軍だった。


「今度、新規の基地計画があってな。是非君にも視察に同行してほしい!」

「わかりました!」

 話によると、新規の飛行場の建設計画があるらしい。
 建設予定地は、比較的に砂嵐の起こりにくい地形とのことだった。

 私は次の日の夕方、ネメシス将軍と共に、6人乗りの偵察機にて飛び立ったのだった。



☆★☆★☆

「左前方に敵機!」

「なに!?」

 上空での敵襲とは、青天の霹靂だった。
 ここはテロリストの支配地から遠いはずだったのだ。


「退避しろ!」

「逃げきれません!」

 操縦士が悲鳴を上げる。
 敵機は一世代ほど古いが、制空用の戦闘機。
 こちらは鈍重な偵察機で、勝負になりはしなかったのだ。

 銃撃を受け、我々が乗る機はすぐに火を噴いた。


「左翼エンジン被弾、不時着します!」
「総員、衝撃用意!」

 操縦手の腕がよく、砂漠に上手に不時着を成功させる。
 人間ではない私と違い、他のメンバーは負傷してしまったようである。
 だが、命には別状ないようであった。


 ……が、


「手を挙げろ!」

 地上で待っていたのは、敵側のテロリストの地上部隊だった。
 黒光りする銃口が、我々に多数向けられており、我々は抵抗を諦めた。


☆★☆★☆

「きびきび歩け!」

 我々は縛り上げられ、目隠しをされ、アジトへと長い道のりを連行される。
 砂漠での日差しは暑く、歩くのは苦痛でしかなかった。


「テロリストには屈さぬぞ!」

「うるさい! 我々は反政府組織だ! 断じてテロリストではない!」

 凛としたネメシス将軍の言に、敵側の兵士がイラつく。
 頼むから、敵側の兵士を怒らせないでほしいものだ。


「貴様はこっちだ!」

 将軍と私は、別の部屋に分かれて収監された。
 まぁ、服装や見た目が全然違うのだ。
 相手の待遇が違うのも当然かもしれない。


「……ふう」

 窓から見る景色は、奇しくも晴れており、星空が奇麗だった。
 その日、私は囚われの身のままで、不安な夜を過ごしたのだった。



☆★☆★☆

――翌朝。


「そこの貴様、出ろ!」

 兵士に促され、収監施設を出る。
 そして、私は敵方の司令官のような人物と対面した。


「貴様、名は?」

「カーヴと言います」

 ……この声に、美しく長い赤い髪。
 長身でありながら、グラマラスな風貌。
 相手の司令官は女性であった。


「貴様たちは、何しにこの上空を飛んでいた?」

「……」

 尋問に容易く屈するわけにはいかない。
 ……かといって、拷問されれば、情報を吐くしかないのではあるが。


「貴様の情報が無い。さては新入りの士官だな?」

「……」

 確かに私は新入りだ。
 だからと言って、何があるというのだろう?

 敵の司令官は事情を察したかと言わんばかりに、フォルダされた書類を私の前に放り投げてきた。


「……まぁ、読め!」

「……」

 私は書類を受け取り、丁寧にページを捲っていった。

 ……!?
 なんだと。

 そこには、ネメシス将軍を始めとした軍組織の不正が、写真などの資料と共に綴られていた。
 水や食料、資源などの横領が行われているとのことだった。


「やはり、知らなかったか?」

「……」

【システム通知】……この資料のデータを照合。
 記載は真実である可能性98.64%

 私の副脳は、この不正が真実であろうと予測した。
 思えば、フランツさんが正規軍とは別区画で、私に新規戦力組織を整備させたのも不思議に思っていたのだ。
 そもそも戦力組織は一つである方が良いのだ。

 多分、フランツさんは薄々、軍高官の不正を知っていたのだろう。
 そう考えると、私に新規に区画を割り当てたのに合点がいった。


「……で、どうしろと?」

「やっと口を開いたか! では、条件を言おう。貴様はこの資料が欲しい……、違うか?」

「……イエス、欲しい」

 敵の司令官は、私の回答と表情を読み比べているようで、一呼吸おいてから話を続けた。


「我々が望むのは、支配地域の自治独立だ。是非検討してもらいたい!」

 彼女は要求書を私に突き付ける。
 読んでみろといった感じであったが、為政者では無い私が読むべき内容では無かった。


「帰って、主人に見せてみようかと存じます」

「良かろう。では、貴様だけ解放してやろう。他の奴は人質だ。良い回答を期待しているぞ!」

「……」


――その後。
 私は再び目隠しをさせられ、夜半に居住コロニー近くの荒れ地にて解放された。


「痛てて……」

 手首についた電子手錠の痕が痛い。
 私は預かった資料を手にして、フランツさんのもとへと急いだのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...