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第二話……招かれざる客 ~少女と老人~
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「助けていただいたようで、誠に感謝いたします!」
「……いや、助けたのは私ではありません。お助けしたのは我が主です」
白髪交じりの銀髪の老人に礼を言うが、私の命の恩人はどうやら彼ではないらしい。
「どうぞ、こちらへお越しなされ」
案内されるがままに廊下を歩き、大きな部屋に入った。
そこにはテーブルに上品な料理が並べられ、上座には小さな少女が座っていた。
「まずは座りなされ」
「……は、はい」
私は老人に促され席に着く。
【通知システム】……状況異常。
周囲の組成原子などの配列が、異なるものが見当たります。
至急センサー等の点検を求めます。
脳を補佐する機械製の副脳が、つぶさに周囲の異常を通知してくる。
周囲の物質がおかしいか、それとも私のセンサーがおかしいか。
多分、可能性からして後者であるのだろう……。
「もう体の方はよろしいのですか?」
「……あ、助けて頂いて、誠にありがとうございます!」
上座に座る少女に話しかけられ、我に返り、慌てて立ち上がる。
そして、丁寧に御礼を述べた。
少女の肌は象牙色で、眼はライトブラウン。
髪の毛は美しい金褐色であった。
「お元気におなりでなによりですね」
少女は好意的だが、老人の方はそうでもないらしい。
彼は咳ばらいを一つした後、
「お嬢様! この傀儡(くぐつ)は敵対生命体であるマーダ連邦のものかもしれないのですぞ!」
傀儡とは操り人形という意味だ。
私は人に作られし戦闘用バイオロイド。
操り人形とは言い得て妙であった。
……この老人は彼女が私に好意を抱くことに嫌悪感を感じているようだ。
「敵性物体ではないと言ったのは、そもそも爺でしょう? 彼の組成構造には、この世界には存在しない物質が含まれると……」
……私が存在しない物質で出来ているだと?
一体どういうことだ。
「お主の正体はなんだ?」
唐突に老人に聞かれる。
「はっ、地球連合軍所属、戦術兵器U-837。通称カーヴと申します!」
「地球連合軍だと!? 聞いたことのない勢力じゃな?」
……ぇ?
聞いたことがないって?
あんた等の姿格好は、どうみても地球人なのだが。
「ところで、ここは一体どこなのです?」
今度は此方が聞いてみた。
少女と老人は顔を見合わせ、不思議そうに答える。
「ここは開放同盟軍所属、ライス伯爵領です」
老人が主人と敬う少女が凛と答える。
……やばい。
全然聞いたことがない地名だ。
そもそも地球連合組織に伯爵領なんて聞いたことがないぞ。
一体ここはどこなのだろうか?
「まぁいい。お主は別次元から来たのだろうて……。さて、お嬢様、まずはご夕食といたしましょう!」
老人は冗談めかしてそういったが、、少女は厳しい表情を崩さないまま、我々は食事をとった。
お嬢様というだけあって、コース料理がメイドによって順次運ばれてくる。
新鮮な魚や肉といったものをしばらくぶりに口にした。
実に風味もあり美味しい。
軍での私の食事は、普段は食用固形燃料ばかりだったからだ……。
☆★☆★☆
「あはは、カーヴさんの言う地球というところは、面白そうですね!」
「……では、次は木星や火星の話を致しましょう!」
食事の途中、地球の思い出話をしてみると、思いのほか彼女にも好評だった。
どうやら、この人たちとは住む世界が違うらしい。
ひょっとして、ここはいわゆる死後の世界だろうか?
確かに頬を捻っても痛いし、料理も実においしかった。
二人ともうち解け、その後も楽しい食事となった。
「……でな、お主に尋ねたいものがあるのだが」
「なんでしょうか?」
食後に老人に問われたのは、私が乗っていた亜光速戦闘機のことだった。
屋敷の中庭におかれた愛機の説明をする私。
技術者でもなかったので、専門的な話は出来なかったのだが……。
「……ふむう、お嬢様! やはりこれは我々より遥かに進んだ科学技術で作られていますぞ!」
「やはり、そうなのですわね……」
少女と老人は顔を見合わせて頷く。
「次の物件の説明も頼むぞ!」
「私にわかるものでしたら……」
居住コロニーを出て、車に乗って二時間ほど連れていかれたのは、砂漠の真ん中だった。
というか、この地域一帯は乾燥地帯のようである。
ラクダのような動物が、オアシスで楽しそうに水を飲んでいたのが見えた。
さらに車を降り、砂漠を歩くこと30分。
大きな構造物を前にして、彼らは立ち止まる。
「この宇宙船はなんなのだ?」
「……!?」
老人に問われ、私は少しショックだった。
半格納式の電磁カタパルトに、角ばった武骨なモジュール構造。
傷は多くついていたが、その巨大な船体は見覚えがあったのだ。
「それは宇宙空母クリシュナです……」
「……ほう」
砂にほとんど埋もれていたが、船体はほぼ無事のようだった。
懐かしい我が母艦。
ここに墜落しているということは、撃破されてしまったのだろうか?
戦友たちの顔が脳裏に浮かぶ……。
「……やはりな」
船体について解説すると、老人は頷き少女に応えた。
「お嬢様、やはり彼やこの宇宙船も、この世界の物体では無いようです」
「……!?」
【システム通知】……この老人の見解は正しいと思います。
現在の惑星の特定は不可能。
気候や地理条件に合う地理に検索一致なし。
地球連合軍各所への通信も不能。
つまりは、認めたくはないですが、全くの別次元へ遭難したと思われます。
……げ!?
地球連合軍が誇る我が副脳の最終判断。
それは次元の狭間から、別の次元の世界へと遭難したとの見解だった。
「……いや、助けたのは私ではありません。お助けしたのは我が主です」
白髪交じりの銀髪の老人に礼を言うが、私の命の恩人はどうやら彼ではないらしい。
「どうぞ、こちらへお越しなされ」
案内されるがままに廊下を歩き、大きな部屋に入った。
そこにはテーブルに上品な料理が並べられ、上座には小さな少女が座っていた。
「まずは座りなされ」
「……は、はい」
私は老人に促され席に着く。
【通知システム】……状況異常。
周囲の組成原子などの配列が、異なるものが見当たります。
至急センサー等の点検を求めます。
脳を補佐する機械製の副脳が、つぶさに周囲の異常を通知してくる。
周囲の物質がおかしいか、それとも私のセンサーがおかしいか。
多分、可能性からして後者であるのだろう……。
「もう体の方はよろしいのですか?」
「……あ、助けて頂いて、誠にありがとうございます!」
上座に座る少女に話しかけられ、我に返り、慌てて立ち上がる。
そして、丁寧に御礼を述べた。
少女の肌は象牙色で、眼はライトブラウン。
髪の毛は美しい金褐色であった。
「お元気におなりでなによりですね」
少女は好意的だが、老人の方はそうでもないらしい。
彼は咳ばらいを一つした後、
「お嬢様! この傀儡(くぐつ)は敵対生命体であるマーダ連邦のものかもしれないのですぞ!」
傀儡とは操り人形という意味だ。
私は人に作られし戦闘用バイオロイド。
操り人形とは言い得て妙であった。
……この老人は彼女が私に好意を抱くことに嫌悪感を感じているようだ。
「敵性物体ではないと言ったのは、そもそも爺でしょう? 彼の組成構造には、この世界には存在しない物質が含まれると……」
……私が存在しない物質で出来ているだと?
一体どういうことだ。
「お主の正体はなんだ?」
唐突に老人に聞かれる。
「はっ、地球連合軍所属、戦術兵器U-837。通称カーヴと申します!」
「地球連合軍だと!? 聞いたことのない勢力じゃな?」
……ぇ?
聞いたことがないって?
あんた等の姿格好は、どうみても地球人なのだが。
「ところで、ここは一体どこなのです?」
今度は此方が聞いてみた。
少女と老人は顔を見合わせ、不思議そうに答える。
「ここは開放同盟軍所属、ライス伯爵領です」
老人が主人と敬う少女が凛と答える。
……やばい。
全然聞いたことがない地名だ。
そもそも地球連合組織に伯爵領なんて聞いたことがないぞ。
一体ここはどこなのだろうか?
「まぁいい。お主は別次元から来たのだろうて……。さて、お嬢様、まずはご夕食といたしましょう!」
老人は冗談めかしてそういったが、、少女は厳しい表情を崩さないまま、我々は食事をとった。
お嬢様というだけあって、コース料理がメイドによって順次運ばれてくる。
新鮮な魚や肉といったものをしばらくぶりに口にした。
実に風味もあり美味しい。
軍での私の食事は、普段は食用固形燃料ばかりだったからだ……。
☆★☆★☆
「あはは、カーヴさんの言う地球というところは、面白そうですね!」
「……では、次は木星や火星の話を致しましょう!」
食事の途中、地球の思い出話をしてみると、思いのほか彼女にも好評だった。
どうやら、この人たちとは住む世界が違うらしい。
ひょっとして、ここはいわゆる死後の世界だろうか?
確かに頬を捻っても痛いし、料理も実においしかった。
二人ともうち解け、その後も楽しい食事となった。
「……でな、お主に尋ねたいものがあるのだが」
「なんでしょうか?」
食後に老人に問われたのは、私が乗っていた亜光速戦闘機のことだった。
屋敷の中庭におかれた愛機の説明をする私。
技術者でもなかったので、専門的な話は出来なかったのだが……。
「……ふむう、お嬢様! やはりこれは我々より遥かに進んだ科学技術で作られていますぞ!」
「やはり、そうなのですわね……」
少女と老人は顔を見合わせて頷く。
「次の物件の説明も頼むぞ!」
「私にわかるものでしたら……」
居住コロニーを出て、車に乗って二時間ほど連れていかれたのは、砂漠の真ん中だった。
というか、この地域一帯は乾燥地帯のようである。
ラクダのような動物が、オアシスで楽しそうに水を飲んでいたのが見えた。
さらに車を降り、砂漠を歩くこと30分。
大きな構造物を前にして、彼らは立ち止まる。
「この宇宙船はなんなのだ?」
「……!?」
老人に問われ、私は少しショックだった。
半格納式の電磁カタパルトに、角ばった武骨なモジュール構造。
傷は多くついていたが、その巨大な船体は見覚えがあったのだ。
「それは宇宙空母クリシュナです……」
「……ほう」
砂にほとんど埋もれていたが、船体はほぼ無事のようだった。
懐かしい我が母艦。
ここに墜落しているということは、撃破されてしまったのだろうか?
戦友たちの顔が脳裏に浮かぶ……。
「……やはりな」
船体について解説すると、老人は頷き少女に応えた。
「お嬢様、やはり彼やこの宇宙船も、この世界の物体では無いようです」
「……!?」
【システム通知】……この老人の見解は正しいと思います。
現在の惑星の特定は不可能。
気候や地理条件に合う地理に検索一致なし。
地球連合軍各所への通信も不能。
つまりは、認めたくはないですが、全くの別次元へ遭難したと思われます。
……げ!?
地球連合軍が誇る我が副脳の最終判断。
それは次元の狭間から、別の次元の世界へと遭難したとの見解だった。
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