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第三十六話……激闘! アルデバラン

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 警戒しながらも、森を駆けまわること、丸二日。

 私はもうすこしで、森から出ようとしていた。



 ……が、森の外で気配がする。

 敵だろうか?





「旦那様、あれは味方の気配ですぞ!」



「え!?」



 スコットさんに言われ、森を出ると、そこにいたのはバルガスが率いるオーク族の一隊だった。





「おお、旦那様! ご無事ですか?」



「こっちのことは良い、マリーたちは無事か?」



「はい、それはもちろんです!」



 どうやら、マリーたちが先に古城に逃げ帰り、バルガス達を呼んできてくれたらしかった。





「マリー様は古城にてご無事です!」



「わかった! 出迎えありがとう!」



「はっ!」



 バルガスが用意してくれた軍馬に乗り、私は無事古城に引き返すことが出来たのだった。







☆★☆★☆



 古城で傷の手当を一通りすると、すぐさまケンタウロスの集落めがけて出発する。





「皆のもの! 反撃だ!」



「「「おお!」」」



 今度はバルガスを含むオーク族の戦士50名に、ルカニ率いる武装したゴブリン族の戦士250名を連れて行く。

 相手に数がいるなら、こっちも数で対抗する予定だったのだ。





「先頭は松明掲げろ!」



「駆け足!」



 部隊が部隊なので、人目を避け、夜間に脇道を行軍する。

 人里や集落の近くは極力避け、回り道をしながら進んだ。



 夜間強行軍開始二日目には、ケンタウロスの集落の手前まで来た。

 まだ夜明けには時間があり、フクロウの鳴き声があたりに響く。







☆★☆★☆



「火矢を撃ちかけよ!」



 バルガスの指示の下、オーク族の戦士たちが自慢の強弓を引き絞る。

 放たれた火矢は、ケンタウロスの集落の幕舎に次々と刺さる。





「突撃!」



 更には、松明を掲げたゴブリン族の戦士が、鉄製の剣と盾を手にしてケンタウロスの集落に突撃した。





「敵襲! 敵襲!」



――ガンガンガン!



 ケンタウロスの集落全体に、警戒用の鳴り物が響く。

 火災の喧騒を知ったケンタウロスの戦士たちは、バルガス達のいる方向へと急いだ。





「旦那様! 予想通りですぞ!」



「よし、作戦通り、傭兵団のメンバーを探せ!」



「はっ!」



 バルガス達とは反対方向の茂みから、我々傭兵団救出部隊が忍び込む。

 ここに彼らが囚われている確証は無かったが、他に当ても無かったのだ。



 暗闇でも真昼のように見えるスコットさんを先頭に、集落中を探し回る。





「いらっしゃいましたぞ! こっちです!」



 スコットさんが先導した先には、木製の檻があり、確かにジークルーンの姿があった。





「あ、小隊長!」



「……しっ! 静かに!」



 こちらに気づいたジークルーンを、マリーが制する。

 他にも、傷ついたライアン団長や、疲れ果てた団員たちの姿があった。





「下がって、今壊します!」



――ドカッ!



 用意してきた斧で、木製の檻を次々に壊す。





「こっちです、急いで!」



 マリーとポココは、明かりの魔法を使いながら、傭兵団が逃げるのを先導する。

 バルガス達正面部隊が、時間を稼いでくれる間に、できるだけ遠くに逃げる必要があったのだ。





「旦那様、私も逃げたいんですが……」



「お前はだめじゃろう?」



 スコットさんが、しゃべる盾であるデルモンドに嗜められる。

 ……なんだか、死霊と盾の奇妙な会話だった。





――ドン



 照明弾のようにファイアーボールの魔法を、私は空高くに打ち上げる。

 作戦成功の合図であった。



 ……が、それを見たであろう、ひと際大きい高さ8mもありそうなケンタウロスが近づいてくる。





「貴様が敵将か!?」



「……いかにも!」



 盾であるデルモンドが答えた……。





「我こそはこの集落の族長、アルデバラン! いざ尋常に勝負!」





――ブォォォ!



 いきなりデルモンドが口から炎を噴くも、ケンタウロスの族長に素早く回避される。





「魔界の英雄たちよ、我が召喚に応えたまえ!」



 駆けつけてきた通常サイズののケンタウロスの前には、スコットさんが召喚した骸骨剣士が立ちふさがる。





「食らえ!」



 族長ケンタウロスが、こちらを目掛けて大きな剣を叩きつけてくる。





――ガキッ



 盾で受け止めると、デルモンドが可哀そうなので、こちらも剣で受けとめる。

 デカい分だけ、相手の斬撃は重たかった。



 ……くそっ、手が痺れる。



 さらに、二度三度と斬撃を受けながら、後ずさりする。





「ふはは、小童サイクロプスよ! 逃げるだけでは勝てんぞ!」



「……まだまだ!」



 デルモンドが、『まだまだ』と言い放つ。





「喧しい盾共々死ね!」



 さらにこちらに重たい斬撃を与えようと、族長ケンタウロスが大きく足を踏み出した瞬間。

 その足元には、魔法のスクロールがおかれていた。





「今だ! 出でよ、地獄の刃歯!」



 予めスクロールがおかれた地面に、巨大な魔法陣が浮かび上がる。

 そこから巨大な漆黒の蛇頭が現れ、ケンタウロスの足に食いついた。





「迷わず地獄に還るがいい!」



 私は足が止まった族長ケンタウロスの首を、愛剣をもって一撃で跳ね飛ばす。





「ア……アルデバラン様が!?」



 それを見ていた普通のケンタウロス達が、一斉に動揺する。

 少数魔族の部族にとっては、族長の力こそが全てだったのだ。





「まだ戦うか!? か弱きものよ!」



 たちどころに、尊大な態度で吹っ掛けるスコットさん。





「出でよ、地獄の番兵たちよ! スケルトンウォーリアー!」



 ……さらに隙を見て、私が複数の骸骨剣士たちを召喚。





「おとなしく武器を捨てなさい! さもなくば、魔法で丸焼きにするわよ!」



 さらに、戦場に戻ってきたマリーの姿に、ついにはケンタウロス達は武器を捨て、降伏の意思を示したのだった。

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