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【第四章】さらば地球、遥かなる銀河へ

第百三十八話……新首都星セイレーン

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「貴官を元帥に任じる、又、宇宙艦隊司令長官にも任ずる。もって帝国艦隊の全数を指揮下に収めよ!」



「はっ!」



 レオナルド星系の仮宮廷において、私は皇帝陛下から元帥杖を賜る。

 二階級昇進。

 この世界では不吉なことではなく、たまにあるらしい……。



 任命式会場は、現在避難先という感じの為、文武百官が居並ぶ中というほどではなかったが、それなりの来賓の中での任命式だった。



 ちなみに、非人族での元帥に任命は初。

 クリームヒルトさんも同時に、准将に昇進した。

 こちらも、アンドロイド史上初の将官である。





 ……その後、立食式のパーティーとなった。





「ヴェロヴェマ殿、おめでとうございます!」

「ありがとうございます!



「……」

「……」



 名士と思しき方から、次々に祝辞を受けるが、正直誰が誰やらわからない。

 凋落の感がある、パウリーネ朝でもこれだけの来賓がくるのだ。

 皇帝陛下のご威光は凄いものがあった。





「小僧! おめでとう!」

「あ、ありがとうございます!」



 シャルンホルスト退役中将に肩を叩かれる。

 私の師ともいえる人だ。

 この先も、地上戦では永遠に勝てないだろうが……。



 パウルス元帥など、歴戦の諸将は帝都バルバロッサへの惑星破壊砲の攻撃によって、現在も行方不明だ。

 よって、現在のパウリーネ様を奉じる戦力は、1個艦隊と惑星地上軍2個師団に過ぎない。

 また、宇宙艦隊司令長官と言っても、現在はわずか一個艦隊250隻余りの長といった感じだった。



 ……まぁ、これから増やせばいいよね。





「お料理が美味しいクマ♪」

「お肉が美味しいポコ♪」



「……あ、メインのお肉でてきたの? 食べに行かなきゃ!」

「おくれると、なくなりますわ!」



 宇宙一、食い意地の張った元帥と、その幕僚たちだった……。







☆★☆★☆



「この書類もお願いしますね!」

「これにもサインをお願いします!」



「はい!」



 宇宙艦隊司令長官にもなると、軍政の比率も大きくなった……。

 前線の一提督という訳にもいかない。



 ……しかし、事務仕事の裁量幅も大きかった。





「新規工廠計画は如何しましょう!?」

「ハンニバル開発公社に発注して!」



「了解です!」



 ……え?

 汚職?

 きっと、きのせい (´・ω・`)







 このころになると、トロスト提督を失い凋落気味の新カリバーン帝国に対して、グングニル共和国が協定を破棄して、宣戦布告。

 ……両国が戦闘状態に入る。





「また、宇宙船の発注入りましたわ!」

「すぐヨハンさんに伝えて!」



「了解ポコ!」



 資材や鉱石価格の上昇と、宇宙船価格の上昇。

 再びハンニバル開発公社は、造船活況で潤っていったのだった……。







☆★☆★☆



 惑星破壊砲によって、首都バルバロッサがあった惑星を破壊されていたため、パウリーネ政権はレオナルド星系に、新首都建設を予定していた。



 新首都建設予定惑星は、第三惑星セイレーンに定められた。

 いくらか寒冷惑星だが、気候が安定していたのがメリットだった。





「浚渫工事ポコ!」

「ガンガン掘ってね!」



 私は、首都建設に伴い、港湾施設建設の任務を帯びていた。

 水上型の港湾の予定で、海上船舶と宇宙航行船舶兼用の施設の予定だった。



 港の予定地の横では、高炉を設置し、鋼材を大量生産した。

 新規の居住地など、鋼材と硬質セメントはいくらあっても足りなかった。



 食料生産プラントを建設し、衛星軌道上には、簡易の小型防衛衛星も打ち上げた。

 雲に飛び込むロケットの灯が美しい……。





「……並んで下さい!」

「押したらダメポコ!」



 新規に建設した仮宇宙港には、早速大量の移民が押し寄せてきた。

 建設ラッシュにおける好景気が、人々の利益と雇用を大量に生み出したからだ。

 すぐに住宅プラントは埋まり、下水処理プラントはフル稼働した。



すぐにも公害が発生し、治安問題も浮上してきた。

……にぎやかになれば良いと言ったものでもなかった。







――三か月後。



「……全人類に告げる、朕はここを全宇宙発展の中心の礎となす!」



 皇帝パウリーネ様の宣言と共に、惑星セイレーンはカリバーン帝国正統政府の首都星となった。

 街はお祭り騒ぎとなり、にぎやかな喧騒に包まれた。



 次々にお祝いの花火が揚がる。

 出店がでており、パレードも行われた。

 道化師の催し物に、小さな子供たちが喜んでいた……。



 大きな皇帝の住居である美しく荘厳な宮殿も完成し、各種役所も整備された。

 警察本部、入国管理施設、外交部、中央銀行。

 さまざまな建設物が、次々と建っていった……。



 ……そう、私のオフィスである帝国艦隊司令本部も完成した。

 各作戦課の施設も入り、惑星地上軍の司令部も併存した。

 他に人材もいないので、一応は本部長も兼務予定である。



 ちなみに、この本部の倉庫には、『ヴェロヴェマ元帥府』の一室を設けた。

 今は、畳三畳の寂しい小さな部屋である。



 何時かは予算を付けてもらって、大きな施設にしてみたいものだ……。



 私の夢は広がる。

 目指せ! 銀河一の宇宙艦隊の提督へ!

 ハンニバルも宇宙最強の戦艦を目指して……。



 翌日の朝日はまぶしく、のぼる太陽は帝国の前途を祝福しているように思えた。

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