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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国

第百三十一話……共和国休戦 ~新たなる戦い~

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 久しぶりに地球のアパートで過ごす。



 といっても、シャワーを浴びたり、食料を買い出しに行ったりするのが主だが……。





「……よしっと!」



 他にやったこと。

 それは遺書の作成。

 あっちの世界から戻ってこれなくなった時の為に、両親や兄たちに向けてしたためたものだった。



 ……もはや、向こう側の世界は、私にはかけがえのない世界になったのだ。

 此方の世界と違い、確かに必要とされている。



 万一、向こうの世界が、幻の世界であったとしてもだ……。



 電脳の世界をリアルではないとよく言われるが、しかし、確かにその時間は向こう側に、私のもう一つの大切なリアルがあったはずなのだ。







 遺書を書き終わった後は、PCに電源を入れて、ハンニバルの設計に勤しんだ。

 向こうの世界での私に、最も価値があるとすれば、それはハンニバルで勝ち続けることだ。



 ……間違っても負けていい軍人なんていないはずだ。

 平和な世界の会社員だって、うかつにノルマを落とせないのだから……。





「これでいっか!」



 ダメージコントロールを重視した設計にした。

 今回、安易に沈まないことを優先にしている。

 その分、大きさの割に、攻撃力が若干物足らなくなったかもしれないが……。





「ふう」

「いってきます……」



 机の上の遺書にそう告げて、私はVRカプセルの蓋を開けて中に入った。

 内側から『START』という赤いボタンを押すと、白い神経ガスが充満し、心地よい世界にいざなわれた……。







☆★☆★☆



――ドシィィィーン!



 宇宙海獣により、艦艇が破壊される。



 グングニル共和国は、多数の冒険者や有志の義勇艦艇を集め、通商破壊を行う謎の宇宙海獣に対処した。

 ……しかし、それは正規軍より練度が低い艦艇の残骸が、ただ増えるだけの結果となっていた。

 正規軍でも対処が難しい宇宙海獣を、安易に撃退できるという考えが、甘かったのかもしれない。







「……やむを得まい」



「残念です」

「無念であります」



 グングニル共和国の議会は、クレーメンス帝国に休戦和解案を提示することに合意。

 彼等の首班である大統領の名でそれは合意された。





 ……合意内容は、



1)クレーメンス帝国が唯一無二のカリバーン帝国と承認。

2)毎年1000億帝国ドル(約10兆円)を納付すること。

3)2以外に、賠償金5兆帝国ドルを支払うこと。

4)10星系の領土割譲。



 これにより、共和国の財政は債務超過となり、将来的な衰退が予想された。

 よって共和国の債券価格は値下がりし、利回りは跳ね上がることとなる。



 また、皇帝パウリーネを擁するカリバーン帝国は、正式には逆賊勢力と呼ばれることとなってしまったのであった。







☆★☆★☆



「くっくっく……、次はようやくルドミラ教国か……」

「まぁ、地球との連絡線であるアルデンヌ星系しか、興味はないがな……」



 トロスト中将は、不敵に笑う。

 彼の野心は、まさしくワームホールの向こう側にある地球であった。







――グングニル共和国と協定を結んだ2週間後。



 新生カリバーン帝国はルドミラ教国に宣戦布告。

 同日、2時間後にアルデンヌ星系に侵入した。







「敵艦多数見ゆ!」



「要塞砲用意! 艦載機発進用意!」

「対空砲要員、配置急げ!」



「惑星地上軍にも緊急連絡!」





 ……これは予期されていたことであった為。

 艦隊戦を不利と見たルドミラ教国側は、惑星や防御要塞での地上戦に、引きずりこむ形となっていった。



 しかし、多種多様な宇宙怪獣を投入する帝国に、ルドミラ側は次第に劣勢になることが予想された……。







☆★☆★☆



「……ち、朕が逆賊だと!?」

「ヴェロヴェマ提督、それは正気で言っているのか?」



「いえ、当方が言っているわけではありません」



「そんなこと、わかっておるわ!」



 皇帝パウリーネ様に怒られる。



 この世界において、グングニル共和国の発言力は大きい。

 よって、星間ギルドなどの中立勢力においても、我々は反乱軍、もしくは逆賊と明記されるようになってしまった……。





「なんとかして、汚名を返上しろ!」



「はっ! 全力を尽くします!」



 私は敬礼して、超光速通信のモニターを切る。





「……ふう」



「怒られましたわね」

「怒られたポコね」



「……うん」



 ……(´・ω・`) しょぼ~ん





「「よしよし」」



 しょげていると、副官殿とタヌキ砲術長が、私の頭をポンポンしてくれた。



 ……まぁ、これはこれで、モフモフしてていい気持ちだった。







☆★☆★☆



(……二週間後)



 ……私が、領地開発に勤しんでいると。

 ハンニバルの超高速通信のモニターに、苦情が入ってきた。



 それは、包帯グルグル巻きの小池勝議員だった……。





「どうかなさいましたか?」



「どうかしたじゃないよ!」

「我が国の英雄、金山豪君に連絡が、つかなくなってしまったんだよ!」



 ……だれだったかな?

 ああ、TVの会見に、でていた若者だったかな。





「君、また要らないことをしてないだろうね?」



「……いえ、何もしていませんが?」



 私と違って、金山という男は、N国の防衛省の幹部と、連絡を密に取っていたらしい。



 いままで、それによってN国は、相対的に世界情勢を上手く立ち回れた。

 しかし、その情報源が無くなってしまったため、私に苦情が舞い込んできた形となったのだ……。





「これからは君が情報源になり給え!」

「頼んだよ!」



「ぇぇ!?」





――ブチン。



 連絡は一方的に切られた。

 ……てか、情報なんてわかんないぞ!?



 なんだか重荷を背負う形となってしまった (´・ω・`)

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