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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国

第百十七話……昇進!作戦部長ヴェロヴェマ大将

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――カリバーン歴855年12月31日深夜。

 装甲戦艦ハンニバル艦内。



「明けましておめでとうございますわ!」

「明けましておめでとうポコ!」



「みんなおめでとう!」



 私はいわゆるお誕生日席に座り、みんなと新年を祝った。

 ちなみに来年からは、ルドミラ教国に配慮して標準歴というものが使われる。



 今年は標準歴元年という訳だ。

 艦内の一般クルーたちもそれぞれの部屋で新年を祝った。

 食料倉庫から真新しいシャンパンや温かい料理が配られる。





「美味しそうニャ♪」



 マルガレーテ嬢の尻尾は今日も可愛い。



「お塩と油は健康に良いメェ~♪」



 性別不明なバフォメットさんもいつもながらに危険なセリフを吐いていた。





 ハンニバルの艦橋から銀河は、いつになく美しく煌めいていた。







☆★☆★☆



「こちらバルバロッサ管制室! 貴艦の入港を歓迎する!」

「了解!」



「大気圏降下用意! 耐熱シャッター降ろせ!」



 ハンニバルは帝国首都星系であるツエルベルク星系に到達。

 首都星系主星であるバルバロッサの地表へと降下した。



 青い空に大気圏降下、すぐさま摩擦熱で艦体は赤く光る。





「逆噴射開始!」

「了解!」



 ハンニバルは海へと着水し、管制室の誘導に従いバルバロッサの水上宇宙港に到着した。





「人が多いですわね♪」

「にぎやかだポコ♪」



 入港した後、副官殿と砲術長を連れ、帝都の街を散策する。

 目的である、復位した皇帝パウリーネ様の皇帝再就任式にはまだ時間があったのだ。



 時間に合わせ、リニアモーターカーにて宮殿へと出向く。

 電磁走行で振動が全くない優れモノだった。





「ようこそ!」



 宮廷の門を守る衛兵は、いつ尋ねても愛想がよく気持ちがいい。

 その後、私達は宮殿で行われる式典に出席した。





「ようこそ! 救国の英雄殿!」



 式典後のパーティーで声を掛けてくるのは、パウルス元上級大将である。



「いえいえ、若輩の身で心苦しい限りです」



 私はそう答える。

 謙遜ではない。氏は帝国の歴戦の老将だ。

 お世辞なしに、皆が一目も二目も置く存在だった。





「私も今度軍に復帰できることになってな、君の第十艦隊には期待しておるよ!」



 優しく肩を叩かれた。

 公正で名高い氏が復帰すると、軍も風通しがいい組織になりそうだ。





「おう、元気にやっとるか?」

「お陰様で」



 元上級大将と別れた次に話しかけてきたのは、帝国の辣腕内政家のアーベライン伯爵だ。

 今回の反乱劇の真の首謀者かもしれない。





「伯爵はお元気でしたか?」



「ははは、地下での潜伏期間中はパンとワインがまずかったくらいかの?」



 パウルス氏と違って、私はこの伯爵は苦手だ。

 歴戦の政治家らしく、何を考えているのか分からない。



 ……きっと、私は権謀術数な政治の世界には向いてないのだろうと思った。





「ヴェロヴェマよ! 朕は此度のこと嬉しく思うぞ!」

「はっ! 有難き幸せ!」



 伯爵様の次は、なんと皇帝陛下にお声を掛けてもらった。

 しかし、まだあどけなさは残る少女だ。

 これからの皇帝の職務も大変だろうに……。





「お酒がおいしいクマ!」

「お肉も美味しいポコ!」



 それから堅苦しい挨拶を何回か潜り抜けたあとは、みんなとパーティー会場での美味しい料理に舌鼓をうった。

 高級なタダ飯食べ放題だ。頑張って食べねば。



 ……そういえば私は貴族だった。

 なんだか悲しいくらい、はしたない貴族な気もする (´・ω・`)







☆★☆★☆



 翌日、総司令部に出頭する。

 上品な赤絨毯の廊下を歩いていると、





「また会ったな!」



 軍に復職したパウルス氏に声を掛けられる。

 ふと老将の襟章を見ると、





「げ……元帥ご昇進おめでとうございます!」



「ありがとう!」



 どうやらパウルス氏は元帥に昇進したようだった。

 カリバーン帝国の元帥号は、今まで公爵位にないと任命されなかったので、平民出のパウルス氏が就任するのは異例だった。





「しかしな、君もおめでとう!」

「……は?」



 この後の親補式にて、私は大将に昇進した。



 今回の皇帝復帰の功績が絶大との評価だった。

 正直いうと、今まで『中将』に憧れがあったのに、あっという間に通り過ぎた寂しさというのもあったのだが……。





「君には作戦部長を頼むぞ!」

「はっ!」



 今回の宇宙艦隊の人事は、TOPの宇宙艦隊総司令官としてパウルス元帥。NO2の総参謀長としてヘルツオーゲン大将。そして序列第三位の作戦部長には私が就くことになった。



 ちなみに人族ではない者が、宇宙艦隊の上級幕僚になったことはカリバーン帝国史上にはない。

 ……異例の躍進だった。



 しかし、現在帝国は二分化されてしまっている。

 以前の作戦部長よりは格下なのも事実だった。





 そもそも、二分した帝国を早く糾合したいのが、アーベライン伯爵などの政府首脳の意見だろう。



 ちなみにアーベライン伯爵は、今回の人事で帝国宰相となっていた。

 次に会うのがなんだか嫌であった……。







☆★☆★☆



「全エネルギーを主機関へ移送!」

「長距離跳躍開始!」



 私はハンニバルに乗り、再び本拠であるラム星系の準惑星ツーリアに戻った。

 今後の作戦は、実は作戦一課長に丸投げしてきた。



 私はあんまり細かく頭を使うのが得意では無かったのだ。

 ……まぁ、作戦部長などある程度名前だけでよかったのである。



 机上の作戦より前線である。

 私にとっては、前線に立ってこその提督稼業であった。







☆★☆★☆



カリバーン帝国



【中枢スタッフ一覧】



皇帝及び帝国最高司令官……パウリーネ



宰相……アーベライン伯爵

防衛大臣……ヘルツオーゲン大将(宇宙艦隊参謀長を兼務)



宇宙艦隊総司令官……パウルス元帥

惑星地上軍総司令官……バールケ大将





【惑星地上軍】



第三軍……メッケンドルガー大将(惑星地上軍作戦部長兼務)

第五軍……ゾルガー中将

第七軍……デッセル中将



【宇宙艦隊】



第二艦隊……ベーデガー中将

第四艦隊……キルンベルガー中将

第十艦隊……ヴェロベマ大将(宇宙艦隊作戦部長兼務)



【エールパ星系】



帝国公爵位……ブルー(蛮王様)

星系防衛艦隊司令……パルツアー少将

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