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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国
第百十三話……新帝擁立と帝国議会
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「率直に述べる。小官はアルフォンス殿下に帝位についてほしいと思う!」
クレーメンス公爵元帥が発言すると、会議室は騒然となった。
この司令部で行われる会議の政治力は極めて大きい。
内政TOPのアーベライン伯爵がいない今、彼と軍部の力は台頭していたのだ。
「そんな馬鹿な!」
「あるえませんぞ! 公爵閣下!」
反対するのは軍部の重鎮バールケ大将とヘルツオーゲン大将。
彼らは仲が悪かったが、皇帝への忠誠は篤かったのだろう。
「しかし、このまま皇帝不在という訳にもいきますまい!」
リーゼンフェルト大将が現実論を述べる。
「うむむ……」
私も含め中将たちは発言しない。
処世術というやつだろうか。
議論は紛糾したものの、新帝擁立の運びとなった。
やはりクレーメンス公爵元帥の力は大きかったのだ。
――その三日後。
文武百官を集め、新帝アルフォンスがカリバーン帝国の皇帝位についた。
交戦国とはいえ、後日グングニル共和国とルドミラ教国からも形式上の祝辞をうけた。
この時、帝国宰相にクレーメンス公爵元帥が就任している。
……彼こそが帝国の真の実力者だった。
さらに彼の娘婿であるリーゼンフェルト提督が上級大将に昇進。
帝国統合軍NO2の地位に着いた。
しかし、帝国の支配力は落ちており、各地の在地貴族の力は増し、中央集権国家としての態は成していない状態だった。
帝国とは名ばかりで、実情は在地貴族連合による共和制国家といった実情だった。
☆★☆★☆
カリバーン帝国は28もの星系を統べる星間国家である。
しかし、そのほとんどが過疎星系であり、総人口である約一億人の5割は首都星系であるツエルベルク星系に集中していた。
そのほか5割を軍閥や地方貴族が治めていた。
支配力低下に悩む帝国首脳部の勧めで、新帝アルフォンスは地方貴族による議会を制定。
合議制を開始していた。
今日は私もラム星系の領主として議会に出席していた。
隣の席はエールパ星系の蛮王様の代理のヘッツアー軍務卿だ。
「……採決を行います!」
議事は暇なものが多かった。
私も次は代理で誰かに出てもらうと思った。
サボっているように見えるかもしれないが、現実の議会と同じく、議題にでるまえに根回しが終わっており、新たに議論することなどほぼ何もなかったのだ。
一つだけいいこととしては、エールパ星系を我が第10艦隊の担当地としてもらえた。
これでエールパ星系の艦隊は正式に私の支配下となった。
コツコツと戦力拡大に乗りだしてはいたのであった。
☆★☆★☆
帝都の貴族議会に出た後は、総司令部にも顔をだす。
いわゆる交友関係の構築である。
もし、という場合に備えて味方は多い方が良かったのだ。
現在の帝国軍の布陣は、5個の宇宙艦隊と5個の惑星地上軍団から成る。
第一惑星地上軍、軍団長キストラー中将。
第二艦隊、司令官ベーデガー中将
第三惑星地上軍、軍団長メッケンドルガー中将。
第四艦隊、司令官キルンベルガー中将。
第五惑星地上軍、ゾルガー中将。
第六艦隊、司令官トロスト中将。
第七惑星地上軍、ディセル中将。
第八艦隊、フライシャー中将。
第九惑星地上軍、クレーマン中将。
第十艦隊、ヴェロヴェマ中将。
……という、10個の実戦部隊で構成されていた。
一個艦隊は約50隻の艦艇、一個軍団は約5万人の兵力を擁していた。
この戦力はグングニル共和国の約半分であり、ルドミラ教国の約1.5倍であった。
防衛星系の数から言えば、過去の戦力の統計上は妥当といえたが、現在は国力の減退が大きく、維持には高税率が必要だった。よって、各星系では反乱が頻発していた。
これは帝国に限ったことではなく、共和国も教国も同じような状態だった。
頻発する食料不足と、輸送インフラである宇宙船の不足が、各陣営の政権支持率を大きく引き下げていたのだ。
よって敵を外に作り、対外戦争により支持率を上げようとの公算が蠢く。
なにも敵地を奪うだけが戦争では無かった。
頻発する対外戦争は内政の一環だったのである……。
……それが更なる食糧不足と、さらなる宇宙船の不足を招いていたのだったが。
☆★☆★☆
私は、本来の皇帝であるパウリーネ様が住む、ガス状惑星アメーリアの防御構築に勤しんでいた。
濃いガス状大気の中に、防御衛星を複数浮かべる。
ハンニバルを遊弋させ、衛星軌道上にも機雷原も多数作った。
もし、ここにパウリーネ様がいると分かれば、間違いなく攻められるからである。
それは帝国からだけではなく、その身柄から他勢力からの侵攻もあり得た。
身柄を確保すれば、帝国の統治権の正統性が担保されるからである。
「砲台を作るポコ!」
「戦車も配備するクマ!」
地上施設の構築は、シャルンホルストさんの指導で行われていた。
彼の高射砲陣地の構築は超一流だったのである。
攻撃は相手のあることだが、防御の成立は自分たちの準備が大きかったのだ。
守りを固めさえしておけば、すくなくとも心理的に優位だったのである。
「提督! ご飯ですよ!」
……あ、その前に腹ごしらえだった (ノ∀`)
クレーメンス公爵元帥が発言すると、会議室は騒然となった。
この司令部で行われる会議の政治力は極めて大きい。
内政TOPのアーベライン伯爵がいない今、彼と軍部の力は台頭していたのだ。
「そんな馬鹿な!」
「あるえませんぞ! 公爵閣下!」
反対するのは軍部の重鎮バールケ大将とヘルツオーゲン大将。
彼らは仲が悪かったが、皇帝への忠誠は篤かったのだろう。
「しかし、このまま皇帝不在という訳にもいきますまい!」
リーゼンフェルト大将が現実論を述べる。
「うむむ……」
私も含め中将たちは発言しない。
処世術というやつだろうか。
議論は紛糾したものの、新帝擁立の運びとなった。
やはりクレーメンス公爵元帥の力は大きかったのだ。
――その三日後。
文武百官を集め、新帝アルフォンスがカリバーン帝国の皇帝位についた。
交戦国とはいえ、後日グングニル共和国とルドミラ教国からも形式上の祝辞をうけた。
この時、帝国宰相にクレーメンス公爵元帥が就任している。
……彼こそが帝国の真の実力者だった。
さらに彼の娘婿であるリーゼンフェルト提督が上級大将に昇進。
帝国統合軍NO2の地位に着いた。
しかし、帝国の支配力は落ちており、各地の在地貴族の力は増し、中央集権国家としての態は成していない状態だった。
帝国とは名ばかりで、実情は在地貴族連合による共和制国家といった実情だった。
☆★☆★☆
カリバーン帝国は28もの星系を統べる星間国家である。
しかし、そのほとんどが過疎星系であり、総人口である約一億人の5割は首都星系であるツエルベルク星系に集中していた。
そのほか5割を軍閥や地方貴族が治めていた。
支配力低下に悩む帝国首脳部の勧めで、新帝アルフォンスは地方貴族による議会を制定。
合議制を開始していた。
今日は私もラム星系の領主として議会に出席していた。
隣の席はエールパ星系の蛮王様の代理のヘッツアー軍務卿だ。
「……採決を行います!」
議事は暇なものが多かった。
私も次は代理で誰かに出てもらうと思った。
サボっているように見えるかもしれないが、現実の議会と同じく、議題にでるまえに根回しが終わっており、新たに議論することなどほぼ何もなかったのだ。
一つだけいいこととしては、エールパ星系を我が第10艦隊の担当地としてもらえた。
これでエールパ星系の艦隊は正式に私の支配下となった。
コツコツと戦力拡大に乗りだしてはいたのであった。
☆★☆★☆
帝都の貴族議会に出た後は、総司令部にも顔をだす。
いわゆる交友関係の構築である。
もし、という場合に備えて味方は多い方が良かったのだ。
現在の帝国軍の布陣は、5個の宇宙艦隊と5個の惑星地上軍団から成る。
第一惑星地上軍、軍団長キストラー中将。
第二艦隊、司令官ベーデガー中将
第三惑星地上軍、軍団長メッケンドルガー中将。
第四艦隊、司令官キルンベルガー中将。
第五惑星地上軍、ゾルガー中将。
第六艦隊、司令官トロスト中将。
第七惑星地上軍、ディセル中将。
第八艦隊、フライシャー中将。
第九惑星地上軍、クレーマン中将。
第十艦隊、ヴェロヴェマ中将。
……という、10個の実戦部隊で構成されていた。
一個艦隊は約50隻の艦艇、一個軍団は約5万人の兵力を擁していた。
この戦力はグングニル共和国の約半分であり、ルドミラ教国の約1.5倍であった。
防衛星系の数から言えば、過去の戦力の統計上は妥当といえたが、現在は国力の減退が大きく、維持には高税率が必要だった。よって、各星系では反乱が頻発していた。
これは帝国に限ったことではなく、共和国も教国も同じような状態だった。
頻発する食料不足と、輸送インフラである宇宙船の不足が、各陣営の政権支持率を大きく引き下げていたのだ。
よって敵を外に作り、対外戦争により支持率を上げようとの公算が蠢く。
なにも敵地を奪うだけが戦争では無かった。
頻発する対外戦争は内政の一環だったのである……。
……それが更なる食糧不足と、さらなる宇宙船の不足を招いていたのだったが。
☆★☆★☆
私は、本来の皇帝であるパウリーネ様が住む、ガス状惑星アメーリアの防御構築に勤しんでいた。
濃いガス状大気の中に、防御衛星を複数浮かべる。
ハンニバルを遊弋させ、衛星軌道上にも機雷原も多数作った。
もし、ここにパウリーネ様がいると分かれば、間違いなく攻められるからである。
それは帝国からだけではなく、その身柄から他勢力からの侵攻もあり得た。
身柄を確保すれば、帝国の統治権の正統性が担保されるからである。
「砲台を作るポコ!」
「戦車も配備するクマ!」
地上施設の構築は、シャルンホルストさんの指導で行われていた。
彼の高射砲陣地の構築は超一流だったのである。
攻撃は相手のあることだが、防御の成立は自分たちの準備が大きかったのだ。
守りを固めさえしておけば、すくなくとも心理的に優位だったのである。
「提督! ご飯ですよ!」
……あ、その前に腹ごしらえだった (ノ∀`)
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