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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国

第百十話……皇帝襲撃事件

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「ややこしいことになってね……」



 私は、兄に先日小池勝議員に言われたことについて、電話で相談してみた。

 しかし、兄から返ってきた答えは意外なものだった。





「気にしなくていいんじゃないか?」

「……え? 大切なことじゃないの?」



「そもそも大切なことだったら、N国はお前に官房長官や外務大臣を差し向けるだろう?」

「あ……、言われてみたらそうだね」



「つまるところ、お前が向こうの世界でお偉いさんだってことは、N国政府は信じちゃいないってことさ。ひょっとすると小池勝議員さえもな……」



「……」

「……あ、でも気が楽になったよ、ありがとう!」



「まぁ、もう少し気楽にやれってことさ……」



 兄に相談してよかった。

 とても気が楽になった……。



 ちなみに地球上の情勢については、いくらか良くなったそうだ。

 南極にはびこるルドミラ教国は、自国に繋がるワームホールを帝国に奪取されて、地球上の戦況も劣勢だそうな。





 ……N国政府とクレーメンス公爵元帥が敵対関係になったのは気がかりだけど、まずは自分が強くならないとね。

 お金も増やして艦隊も強化しなくては……。



 私はゲームカプセルに入り、意識をゲーム世界に移した。







☆★☆★☆



 多額の建造費を費やした宇宙空母【ドラグニル】が就航。

 同じくして、【オムライス】と【ジンギスカン】も高速戦艦として改修を終えた。



 戦力が整ったと同時に、予算にいくらか余裕もできてきた。

 先の戦役で失った補助艦艇の就航のめども立っていた。



 以前に発見した未知の宙域の鉱山も、通常稼働にこぎ着けていた。

 ハンニバル開発公社は資源不足の世間様を尻目に、資源を潤沢に使って造船に励んでいたのだった。





「ミスリル鉱石を売ってくれって人が来たポコ!」

「旦那様! 断ってください!」



「はいはい」



 執事のヨハンさんが言うには、資源ではなく製品として売って、より大きな利ザヤを稼ぐべきだという。

 この場合は、製鋼したミスリル鋼を買って貰うように営業するのだ。

 できれば、鋼材では無くて、船などの製品にして売った方が良いらしい。



 ……しかし、そこまですると反感を買いそうなので、鋼材として売っていたのだった。





 衛星アトラスと準惑星ツーリアの造船所はフル稼働し、多くの輸送用の宇宙船をカリバーン帝国全土に販売した。

 売り上げは莫大なものとなり、ハンニバルの次期改装代もすんなり出そうな勢いだった……。







☆★☆★☆



 カリバーン帝国全土に臨時ニュースが流れる。



『本日未明、財務大臣のアーベライン伯爵の私邸が襲われました。この私邸には皇帝陛下が招かれていた模様……、繰り返します……』



 皇帝であるパウリーネ様と、内政TOPのアーベライン伯爵が襲撃され、行方不明になったらしい。

 ……その重大ニュースは私が住む辺境宙域まで騒がせた。



 アーベライン伯爵は、クレーメンス公爵元帥と違い、親皇帝の派閥だった。

 正確はひねくれていたが、いわゆる忠臣といった類の人だった。

 その忠臣と主君が一度に行方不明になってしまった……。



 その暗雲は帝国を徐々に蝕んでいった……。





 ……その一週間後。



 クレーメンス公爵元帥は、パウリーネの弟であるアルフォンスを傀儡の摂政に据えた。

 アルフォンスはわずか3歳であった。

 流石に、パウリーネは行方不明なので、幼帝擁立とまではいかなかったのだが……。



 ……帝国の全権はほぼクレーメンス公爵元帥の手に落ちていった。







☆★☆★☆



 ……衝撃的なニュースが帝国中央を襲ってはいたが、庶民の生活は変わらなかった。

 貴族とは言え、辺境域の私もあまり変わった事案がない。



 朝食を終え、執務室でのんびり新聞を読んでいると……、





「お客様が来たポコ」

「はい、応接間にお通しして……」



 ……少しして、私が応接間に向かうと、





「ヴェロヴェマ! 邪魔をしているぞ!!」



 Σ( ̄□ ̄|||) ぎゃひ~ん!?

 お客様は皇帝陛下であるパウリーネ様だった。



「砲術長! 急いでお茶を用意して!!」

「りょ、了解ポコ!!」





 ハンニバルの艦橋は大騒ぎ。

 なにしろ、行方不明の皇帝陛下のお出ましなのだ。

 至急、緘口令も布いた。





「賊に襲われてな……、アーベラインがお前のところに隠してもらえと言ったのでな……」



「アーベライン伯爵様は?」

「今、帝都の地下に隠れて、犯人を捜し中だ!」



「ははは……左様でございますか……」



 私は頭をかくしかない。





「下女扱いでも構わぬ! 朕を匿ってくれ!」

「……げ、下女とかトンデモございません! 至急お部屋を用意いたします!」



「すまんな!」



 急いで皇帝陛下用の部屋を用意する。

 ハンニバルの艦内は広いので、部屋の用意は簡単だった。



 ……それらしき調度品は、全く無かったのだが……。





「このようなところでよろしいですか?」



 大慌てで設えた部屋に、皇帝陛下と侍女2名をお通しする。





「悪いが今日は休ませてもらうぞ!」

「ははっ!」



 退室した私は、急いでエールパ星系の蛮王様に相談することにした。



 ……(;'∀') えらいこっちゃでぇ~。

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