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【第二章】赤い地球

第七十四話……謎の惑星【前編】

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 ハンニバルの艦橋でカップ麺を啜っていると報告が入る。



「提督! 新規惑星が発見されました!」



「なんだと?」

「お宝ニャ?」



 ヴェロヴェマ子爵領であるラム星系にて、新規惑星が発見された。



 報告を詳しく聞くと、実は惑星と言っても、かなり小さい部類に入る大きさのようである。



 惑星ベルからの距離はちょうど地球と天王星ほど離れており、不規則な楕円軌道を公転していた為に今まで発見できなかったようだった。



 そもそも、帝国の情報部は惑星ベルに関しても、調査がいい加減なのである。

 現状、惑星が一つの星系といっても、鵜呑みにするわけにはいかなかった。





「早速調査ポコ!」

「調査するクマ!」



 タヌキ砲術長とクマ整備長は既にやる気まんまんで、仲良く浮き輪や水中眼鏡を装備している。

 調査に行った先に、必ずしも水や海があるとは限らないのだが……。





「しゅっぱ~つ!」

「しんこ~う♪」



 半ばハイキングのような面持ちのハンニバルの幕僚諸氏。



 私が軍を非常勤になってからというもの、怖い上官に出合うこともない。

 軍にあるまじき空気となっていた……。





「目標ロスト!」



「!?」

「目標惑星がレーダーから消えました!」



「ぽ……ポコ?」



 ……な、馬鹿な!?

 ハンニバルのレーダーは軍用に耐えうる対ステレス用の探信装置である。

 敵艦ならともかく、普通の天体の捕捉を失敗するとは考えられなかった……。





「目標の天体を再度捕捉!」



「し、しかし……再びロスト!」

「!?」



 ……これはヤバいな。



「警戒態勢発令!」

「「「了解!」」」



 私は警戒態勢をとることにした。

 小さな惑星かと思って近づいたら、大型の敵艦だったってこともあり得るからだ。





「目標、副砲射程に入ります!」



「……さらに距離縮まります!」

「……距離至近! 逆噴射開始!」





「なんでしょう? あれは?」

「奇麗ぽこ♪」



 ハンニバルの艦橋から見えた謎の星は、ところどころ美しい鏡面加工が施されているように見えた。



 ……むしろ人工物なのか!?





「高エネルギー反応! 至近!!」

「電磁障壁出力最大!!」



 突如、衝撃と閃光がハンニバルの艦橋を襲う。





「第二主砲塔破損!」

「消火班急げ!」



「敵はどこだ?」



「あの惑星ぽこ!?」



 タヌキ砲術長が指さす先に、謎の惑星の岩盤部からレーザー砲塔が顔を覗かせていた。

 さらに、岩盤があちこち割れて、次々にレーザー砲台が姿を現す。





「後退! 緊急離脱!」

「反撃用意!」



「任せろポコ!」

「前部砲塔群、射撃準備!」



 謎の惑星からのレーザービームが、次々にハンニバルに着弾する。

 今回は不意を突かれてはいないので、ある程度は電磁障壁が防いでくれた。





「砲撃開始!」

「撃てポコ!」



 タヌキ砲術長の命令一下、ハンニバルの艦体前部の近接戦用砲塔群が次々に火を噴く。

 実弾兵器も多かったので、無数の薬莢がバラまかれた。





「敵砲塔沈黙!」

「やったポコ?」



 弾幕が晴れた下から覗いてきたのは、今度は無数のミサイル発射機群だった。

 あれよあれよという間に、次々にハンニバルに向けてミサイルが発射される。





「対ミサイル防衛!」

「重力シールド展開!!」



「対空VLS発射ポコ!」

「イージス・ガトリング斉射開始!」



 謎の惑星とハンニバルの防空戦が繰り広げられる。

 惑星から飛来するミサイル群を、辛うじてハンニバルの防空システムが防いでいた。





「提督! あれを見てください!」



 もはや敵と言っていい謎の惑星の地表を、今度は無数の戦車隊が土煙を上げて走ってきた。

 どこか出入りできるハッチでもあるのだろうか。



 この戦車隊が次々にハンニバルに砲撃をしてくる。





「この惑星はインチキぽこ!」

「ハンニバルの迎撃システムが飽和します!」



 ……敵の弾幕が多すぎて、迎撃が追いつかなくなってきていた。

 このままだと危険である。





「やむを得ん! 一旦離脱だ!」

「攻撃停止! 短距離跳躍開始!」



「「「了解!」」」



「戦術距離ワープを開始します!」



 ……やむを得ず、ハンニバルは謎の惑星から距離をおいた。







☆★☆★☆



 短距離跳躍で距離を開けると、謎の惑星は追ってこなかった。



 ……まぁ、惑星が追っかけてきたら、それはそれで怖いのだが。







――急ぎ、幕僚たちとこの惑星について検討をする。





「こんな星、要らないポコ!」

「主砲で遠距離から破壊するクマ!」



 ……ハイキング気分をぶち壊された2人が息巻く。





「提督あれはいったいなんなのでしょう?」



「……さ、さあ?」



 副官どのに聞かれるが、私に分るわけがない。

 ……むしろ貴女が教えてください。





「わからないなら調査メェ~♪」



「「「え~!?」」」



 皆が驚いたのも無理はない、バフォメットさんが持ち出したのは惑星地上戦用の歩兵装備だった。





「安心して! 提督のもちゃんとあるメェ~♪」



「ええ!? 私も?」



 ……てか、むしろ安心ってなんだよ??





「当たり前メェ! 全員で行くメェ♪」



 ……マジですか!?

 あんな物騒な星に乗り込むの?







☆★☆★☆



 ハンニバルは一旦惑星ベルに戻って、ドラグニル陸戦隊を全員載せてきた。



 とてもじゃないが、ハンニバルの乗員だけでは無理だったからだ。







 その後、ハンニバルはフル艤装隠蔽モードで、謎の惑星に強行接舷。

 私達は慌ただしく謎の惑星に上陸した。





「アニキ! 後ろは安心して任せてくれ!」



 アルベルト王子が笑って私の肩を叩く。





 Σ( ̄□ ̄|||) ……え!? 私が前なの? おかしくない?



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