上 下
72 / 148
【第二章】赤い地球

第七十二話……カリバーン帝国貴族の兵役負担制度

しおりを挟む
「損益分岐点は単位あたり75帝国ドルといったところでしょうか?」



「75……、微妙ポコね……」

「微妙ですわね……」



 惑星ベルの海洋型アダマンタイト掘削施設の見積もりを、内政型アンドロイドであるヨハンさんに計算してもらう。

 ここ最近のアダマンタイトの単位当たりの相場は、70~80帝国ドル。

 カリバーン帝国経済は戦役の期間がおわると、資源価格はさがる傾向があった。



 現在の市況では、この掘削プラントを稼働しても利益はほぼないという試算だった。





「じゃあ、掘りましょう!」

「利益が出ないのに掘るポコ?」



「うん、掘ろう!」



 タヌキ砲術長殿は『お金にならないのに何故掘るのか?』という表情をしているが、私は開発プラントを建設することに決めた。

 確かに利益がでる公算は薄かったが、ここ惑星ベルには海産物の養殖以外にこれといった産業がない。

 開発プラントを作れば新たな関連産業が産まれ、大量の雇用が発生する見込みがあった。



 他にも、資源開発事業というものは継続して行わないと、保守やメンテナンスなどの技術が育ちにくく、結局それが長い目で見れば採算や経営力に直結する可能性が高かったのだ。



 ……継続は力なり、である。







☆★☆★☆



「ほう、これがアダマンタイト精製プラントですか?」



「左様でございます!」



 近隣のフェーン星系の統治者であるシャフト王が、惑星ベルに施設見学に来ていた。



 辺境星系連合国家群の構成星系の一つ、フェーン星系はカリバーン帝国の技術を導入し、高度な産業の機械化を目指している最中だった。





――フェーン星系。



 水棲型文明生物が多く住む星系で、形状は二足歩行型のナマズといったところ。

 年をとった男性は独特な髭がより長い場合が多い。



 概ね温厚な民族が多数派な人口構成だった。

 主要産業は漁業と牧畜と耕作。

 辺境連合国家群で勢力最大の穀倉地帯と人口を抱えていた。





「我が星系にもこのプラントが欲しいですな!」



 快活で立派な髭を生やしたナマズ族であるシャフト王は、ハンニバル開発公社の資源プラント資設がお好みの様だった。





「この金額でお譲りいたしますよ♪」



 私はすかさず電卓を叩き、それを王に見せ、セールスを行う。





「……しかしですな、買っても使い方がわかりませんでな」



 自嘲気味に笑うシャフト王に、更に叩き直した電卓を見せる。

 ……この好機、逃がしてなるものか。





「初期作業員講習と6か月のメンテナンス代込みで、こちらの額ではいかがでしょう?」



「おう! これなら買わせてもらうぞ!」



「有難うございます!」



「……し、しかし、ヴェロヴェマ君は軍人というより商人といった感じだな!?」



 ……バレたか?

 むしろ、そのとおりである。

 この一つ目ギガースの中身は、しがない中小企業の元営業マンであるのだから。





「毎度有難うございます!」

「ありがとうポコ!」



 タヌキ砲術長殿もハンニバル開発公社の番頭さんが板についてきた。

 最近、彼も売り上げへの貢献を熱心に行ってくれている



 好きな艦船を作るための予算の捻出は、ハンニバル開発公社の売り上げがあってこそだった。



 ……かの織田信長や武田信玄も、楽市楽座や金山開発で得た財で、無敵の軍団を作り上げたのだ。

 きっとこのやり方は間違いではないはずだった。



 (`・ω・´)シ きっと戦は金である!





 ……そのような冗談はさておき。



 特上のお得意様であるシャフト王をお見送りし、納品設備の選定を準備する。



 この取引の利益で、新たな戦闘艦を作れるのだ。

 新造艦の建造が愉しみな私であった。







☆★☆★☆



――ヴェロヴェマ子爵家。



 つまるところ私の処のことなのだが、帝国中央への納付金とは別に、負担兵役というものがある。



 俗にいう『御恩と奉公』や『いざ鎌倉!』の為の兵役の負担である。

 正確な使い方は違うかもしれないが、平時より兵力を保有し、帝国の有事の為に備える制度である。



 我がラム星系のヴェロヴェマ子爵家への負担は、戦闘艦10隻の保有が求められていた。





 現在、ハンニバル、オムライス、ジンギスカンの3隻しかいないので、あと7隻の新造艦が必要なのである。

 よって、新規の星系支配者である私は、ビジネス等の財テクで建造などの初期費用を捻出する必要があったのだ。



 他の貴族様の御家はどうして経費を捻出しているのか大いに疑問である。





 ……新造艦は大きな経済的負担ではあるものの、貴族家のものとして建造する船は、完全にその貴族家の船になるということだった。

 今までは蛮王様の為の船だったが、完全に自分の為のお船が作れるのだ。



 よって、今まで蓄積してきた資材が存分に使える。

 今回の設計の自由度は、お金が許す限りどんなものでもほぼ自由に作れたのだった。





「はやく作るポコ!」

「私にも設計させるメェ~!」



「私も船が欲しいですわ!」

「私も二隻目の船が欲しいニャ♪」





 ……みんな、やかましいな (´・ω・`)



 我が幕僚たちは、美味しいご飯か新造艦の設計の話となると、どこからともなく集まってくるのだ。





 やっぱり、自由な船が好きに作れるというのは、少し意味が違ったかもしれないな……( ˘ω˘)





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

達也の女体化事件

愛莉
ファンタジー
21歳実家暮らしのf蘭大学生達也は、朝起きると、股間だけが女性化していて、、!子宮まで形成されていた!?

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...