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【第二章】赤い地球
第六十七話……ハンニバル VS 巨大タコ
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「右舷より触手らしきもの来ます!」
「取り舵一杯! 全速後進!!」
両舷に備わる小型の水中推進用の水流ジェットで操艦されるハンニバル。
しかし、星間航行用の戦闘艦であり、乗組員の技量を含め水中戦闘は苦手だった。
「右舷接触!」
「外部装甲に亀裂!」
「第32装甲区画浸水!」
亀裂が入ると自己修復する力が装甲区画には備わっているのだが、30000mを超える超水圧下ではうまく機能しない。
「第32装甲区画は遮蔽!」
「了解!」
「右舷下部よりエネルギー反応!」
「熱水鉱床です!!」
タコ以外にもここには自然という敵がいたのだ。
強酸性の熱水が下から押し寄せ、船体が大きく揺れる。
「どうしたらいいポコ?」
「どうしましょう?」
深海の為、真っ暗で相手の位置が分かりにくい。
極めて水圧がたかく、潮流も激しいため、レーダーが巧く機能しない。
さらには、直下に海底火山があるらしく、熱源を捕捉する赤外線探知機も役に立たなかった。
「タコの位置が分かりませんわ!」
目隠しをした状態でスイカ割をしているようなハンニバル。
さりとて、サーチライトを使えば、格好の目標になる可能性が高かった。
「アクティブソナー開始!」
超長波は水中で有用だったのだ。
しばらくしてコーンという音が戻ってくる。
「左舷下部に敵らしきもの造影!?」
音探モニターに解像された巨大なタコの姿が映る。
「左舷方向へ回頭! 主砲にて攻撃!」
「一番二番砲塔、斉射ポコ!」
ハンニバルの砲塔より、青白い光軸が黒い水中を切り裂く。
海水が摩擦熱で沸騰し、白い泡が沢山発生した。
「着弾! 命中しました!!」
「やったポコ?」
「応射きますわ!」
「え!?」
「電磁障壁出力最大!!」
「了解!」
巨大なタコからのレーザービームがハンニバルの左舷下部に命中。
大きな音と衝撃が走る。
「左舷下部損傷軽微!」
「第23装甲区画浸水!」
電磁障壁にて軽減されるが、ここにおいては少しの隙間でも高圧の水圧が襲い来る。
「提督! 撤退するべきではありませんか?」
「……う、うん」
副官殿に言われて、撤退することにした。
どうやら、地の利と相手が悪すぎるのだ。
ハンニバルには海で戦うための魚雷や爆雷といった兵器は積んでいなかったのだ。
「メインタンクブロー! 浮上開始!」
「了解! 浮上開始!」
こうして、ハンニバルから臨んで正面切って初めて負けた相手は、宇宙船では無くて深海のタコだった……。
☆★☆★☆
「タコに負けるなんてダサイメェ~♪」
「提督は弱いニャ♪」
ベースキャンプで留守番をしていたバフォメットさんとマルガレーテ嬢に笑われる。
……いや、そのタコが本当に強いんだってば。
入り江の中でハンニバルは外装区画と接合し、再び800mの大型艦の姿に戻った。
しかし、もしフル装備状態なら、あのタコに勝てるのだろうか?
――翌日。
「魚雷とかを作るクマ?」
「水中装備は絶対にいるポコ!」
クマ整備長に頼み、ハンニバルに内蔵された簡易工廠にて水中兵器を制作することにする。
……今度出会ったら、絶対タコ焼きにしてやる!!
幸い、タコは深海よりあまり這い出てこないらしく、しばらく放置することにした。
戦っても利がない相手なのである。
昼頃には、スツーカ大佐の海底都市以外の水棲都市からも外交使節が訪れ、概ね友好的に交渉は進んだ。
どうやらあのタコと戦って、無事に帰ったことが、外交的に良い噂を呼んだらしかった。
……しかし、どうやらこの惑星の海中には、47個も海底都市があるらしい。
人口0名とかは全くの嘘で、実際には100万人は水棲人がいるらしい。
帝国の情報部もいい加減だな、と思う。
当たり前かもしれないが、おもな産業は漁業のようだった。
よって我々は森を切り開き、陸地にて耕作や放牧を行って彼らの利となることにした。
ほぼそれは、内政担当のヨハンさん頼みなのだが……。
その後、ベースキャンプのある入江はアップルと名付けた町となる。
近くの森に、小さなリンゴが成る木が自生していたからだ。
重機を使い、簡易の宇宙港を建設する。
核融合発電施設や各種プラントも、水棲人たちの力も借りて次々に建造していった。
オムライスとジンギスカンには、衛星アトラスから物資を運んでもらい、安全な航路も確立していった。
……その後3か月で、海洋惑星ベルの開発は一定程度の成功を見たのだった。
☆★☆★☆
「衛星軌道上に防御施設を作ろう!」
「そんなものいるポコ?」
「もったいなくありませんか?」
私は防御衛星を保有してみたかったのだが、副官殿も砲術長殿も反対の様だった。
まぁ確かに、ルドミラ教国やグングニル共和国から遥かに離れた立地なのだが。
「せっかくだから水上基地を作るポコ!」
「そちらの方がいいかもしれませんね♪」
幕僚たちの意見により、水上に半フロート式の防御施設を作ることにした。
防衛設備だけではなく、油田発掘リグなども取り付けた経済的な水上施設の予定にする。
夢がないような気もするが、コストを考えると経済的である必要もあったのである。
その後、洋上の測量も行い、より有用な航路も定めた。
港湾都市アップルには造船施設を建造する。
主にソーラーシステムを積載した洋上帆船を就航させるつもりである。
ハンニバル開発公社の主力事業は、言うまでも無く造船であった。
更には宇宙港も増築し、宇宙船用のドックも併設。
海宙併用の航行管制システムを備えた管制タワーも建造した。
……こう聞くと、華々しい近代都市のような気がするが、水棲人が移り住んできた街並みは、好んで木造や茅葺が多かった。
惑星ベルの地上部は、意外と風流な街並みになったのであった。
「取り舵一杯! 全速後進!!」
両舷に備わる小型の水中推進用の水流ジェットで操艦されるハンニバル。
しかし、星間航行用の戦闘艦であり、乗組員の技量を含め水中戦闘は苦手だった。
「右舷接触!」
「外部装甲に亀裂!」
「第32装甲区画浸水!」
亀裂が入ると自己修復する力が装甲区画には備わっているのだが、30000mを超える超水圧下ではうまく機能しない。
「第32装甲区画は遮蔽!」
「了解!」
「右舷下部よりエネルギー反応!」
「熱水鉱床です!!」
タコ以外にもここには自然という敵がいたのだ。
強酸性の熱水が下から押し寄せ、船体が大きく揺れる。
「どうしたらいいポコ?」
「どうしましょう?」
深海の為、真っ暗で相手の位置が分かりにくい。
極めて水圧がたかく、潮流も激しいため、レーダーが巧く機能しない。
さらには、直下に海底火山があるらしく、熱源を捕捉する赤外線探知機も役に立たなかった。
「タコの位置が分かりませんわ!」
目隠しをした状態でスイカ割をしているようなハンニバル。
さりとて、サーチライトを使えば、格好の目標になる可能性が高かった。
「アクティブソナー開始!」
超長波は水中で有用だったのだ。
しばらくしてコーンという音が戻ってくる。
「左舷下部に敵らしきもの造影!?」
音探モニターに解像された巨大なタコの姿が映る。
「左舷方向へ回頭! 主砲にて攻撃!」
「一番二番砲塔、斉射ポコ!」
ハンニバルの砲塔より、青白い光軸が黒い水中を切り裂く。
海水が摩擦熱で沸騰し、白い泡が沢山発生した。
「着弾! 命中しました!!」
「やったポコ?」
「応射きますわ!」
「え!?」
「電磁障壁出力最大!!」
「了解!」
巨大なタコからのレーザービームがハンニバルの左舷下部に命中。
大きな音と衝撃が走る。
「左舷下部損傷軽微!」
「第23装甲区画浸水!」
電磁障壁にて軽減されるが、ここにおいては少しの隙間でも高圧の水圧が襲い来る。
「提督! 撤退するべきではありませんか?」
「……う、うん」
副官殿に言われて、撤退することにした。
どうやら、地の利と相手が悪すぎるのだ。
ハンニバルには海で戦うための魚雷や爆雷といった兵器は積んでいなかったのだ。
「メインタンクブロー! 浮上開始!」
「了解! 浮上開始!」
こうして、ハンニバルから臨んで正面切って初めて負けた相手は、宇宙船では無くて深海のタコだった……。
☆★☆★☆
「タコに負けるなんてダサイメェ~♪」
「提督は弱いニャ♪」
ベースキャンプで留守番をしていたバフォメットさんとマルガレーテ嬢に笑われる。
……いや、そのタコが本当に強いんだってば。
入り江の中でハンニバルは外装区画と接合し、再び800mの大型艦の姿に戻った。
しかし、もしフル装備状態なら、あのタコに勝てるのだろうか?
――翌日。
「魚雷とかを作るクマ?」
「水中装備は絶対にいるポコ!」
クマ整備長に頼み、ハンニバルに内蔵された簡易工廠にて水中兵器を制作することにする。
……今度出会ったら、絶対タコ焼きにしてやる!!
幸い、タコは深海よりあまり這い出てこないらしく、しばらく放置することにした。
戦っても利がない相手なのである。
昼頃には、スツーカ大佐の海底都市以外の水棲都市からも外交使節が訪れ、概ね友好的に交渉は進んだ。
どうやらあのタコと戦って、無事に帰ったことが、外交的に良い噂を呼んだらしかった。
……しかし、どうやらこの惑星の海中には、47個も海底都市があるらしい。
人口0名とかは全くの嘘で、実際には100万人は水棲人がいるらしい。
帝国の情報部もいい加減だな、と思う。
当たり前かもしれないが、おもな産業は漁業のようだった。
よって我々は森を切り開き、陸地にて耕作や放牧を行って彼らの利となることにした。
ほぼそれは、内政担当のヨハンさん頼みなのだが……。
その後、ベースキャンプのある入江はアップルと名付けた町となる。
近くの森に、小さなリンゴが成る木が自生していたからだ。
重機を使い、簡易の宇宙港を建設する。
核融合発電施設や各種プラントも、水棲人たちの力も借りて次々に建造していった。
オムライスとジンギスカンには、衛星アトラスから物資を運んでもらい、安全な航路も確立していった。
……その後3か月で、海洋惑星ベルの開発は一定程度の成功を見たのだった。
☆★☆★☆
「衛星軌道上に防御施設を作ろう!」
「そんなものいるポコ?」
「もったいなくありませんか?」
私は防御衛星を保有してみたかったのだが、副官殿も砲術長殿も反対の様だった。
まぁ確かに、ルドミラ教国やグングニル共和国から遥かに離れた立地なのだが。
「せっかくだから水上基地を作るポコ!」
「そちらの方がいいかもしれませんね♪」
幕僚たちの意見により、水上に半フロート式の防御施設を作ることにした。
防衛設備だけではなく、油田発掘リグなども取り付けた経済的な水上施設の予定にする。
夢がないような気もするが、コストを考えると経済的である必要もあったのである。
その後、洋上の測量も行い、より有用な航路も定めた。
港湾都市アップルには造船施設を建造する。
主にソーラーシステムを積載した洋上帆船を就航させるつもりである。
ハンニバル開発公社の主力事業は、言うまでも無く造船であった。
更には宇宙港も増築し、宇宙船用のドックも併設。
海宙併用の航行管制システムを備えた管制タワーも建造した。
……こう聞くと、華々しい近代都市のような気がするが、水棲人が移り住んできた街並みは、好んで木造や茅葺が多かった。
惑星ベルの地上部は、意外と風流な街並みになったのであった。
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