宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
上 下
67 / 148
【第二章】赤い地球

第六十七話……ハンニバル VS 巨大タコ

しおりを挟む
「右舷より触手らしきもの来ます!」



「取り舵一杯! 全速後進!!」



 両舷に備わる小型の水中推進用の水流ジェットで操艦されるハンニバル。

 しかし、星間航行用の戦闘艦であり、乗組員の技量を含め水中戦闘は苦手だった。





「右舷接触!」

「外部装甲に亀裂!」



「第32装甲区画浸水!」



 亀裂が入ると自己修復する力が装甲区画には備わっているのだが、30000mを超える超水圧下ではうまく機能しない。





「第32装甲区画は遮蔽!」

「了解!」



「右舷下部よりエネルギー反応!」

「熱水鉱床です!!」



 タコ以外にもここには自然という敵がいたのだ。

 強酸性の熱水が下から押し寄せ、船体が大きく揺れる。





「どうしたらいいポコ?」



「どうしましょう?」



 深海の為、真っ暗で相手の位置が分かりにくい。

 極めて水圧がたかく、潮流も激しいため、レーダーが巧く機能しない。

 さらには、直下に海底火山があるらしく、熱源を捕捉する赤外線探知機も役に立たなかった。





「タコの位置が分かりませんわ!」



 目隠しをした状態でスイカ割をしているようなハンニバル。

 さりとて、サーチライトを使えば、格好の目標になる可能性が高かった。





「アクティブソナー開始!」



 超長波は水中で有用だったのだ。

 しばらくしてコーンという音が戻ってくる。





「左舷下部に敵らしきもの造影!?」



 音探モニターに解像された巨大なタコの姿が映る。





「左舷方向へ回頭! 主砲にて攻撃!」

「一番二番砲塔、斉射ポコ!」



 ハンニバルの砲塔より、青白い光軸が黒い水中を切り裂く。

 海水が摩擦熱で沸騰し、白い泡が沢山発生した。





「着弾! 命中しました!!」

「やったポコ?」



「応射きますわ!」

「え!?」



「電磁障壁出力最大!!」

「了解!」



 巨大なタコからのレーザービームがハンニバルの左舷下部に命中。

 大きな音と衝撃が走る。





「左舷下部損傷軽微!」

「第23装甲区画浸水!」



 電磁障壁にて軽減されるが、ここにおいては少しの隙間でも高圧の水圧が襲い来る。





「提督! 撤退するべきではありませんか?」

「……う、うん」



 副官殿に言われて、撤退することにした。



 どうやら、地の利と相手が悪すぎるのだ。

 ハンニバルには海で戦うための魚雷や爆雷といった兵器は積んでいなかったのだ。





「メインタンクブロー! 浮上開始!」

「了解! 浮上開始!」





 こうして、ハンニバルから臨んで正面切って初めて負けた相手は、宇宙船では無くて深海のタコだった……。







☆★☆★☆



「タコに負けるなんてダサイメェ~♪」

「提督は弱いニャ♪」



 ベースキャンプで留守番をしていたバフォメットさんとマルガレーテ嬢に笑われる。



 ……いや、そのタコが本当に強いんだってば。





 入り江の中でハンニバルは外装区画と接合し、再び800mの大型艦の姿に戻った。

 しかし、もしフル装備状態なら、あのタコに勝てるのだろうか?







――翌日。



「魚雷とかを作るクマ?」



「水中装備は絶対にいるポコ!」



 クマ整備長に頼み、ハンニバルに内蔵された簡易工廠にて水中兵器を制作することにする。

 ……今度出会ったら、絶対タコ焼きにしてやる!!





 幸い、タコは深海よりあまり這い出てこないらしく、しばらく放置することにした。

 戦っても利がない相手なのである。





 昼頃には、スツーカ大佐の海底都市以外の水棲都市からも外交使節が訪れ、概ね友好的に交渉は進んだ。

 どうやらあのタコと戦って、無事に帰ったことが、外交的に良い噂を呼んだらしかった。





 ……しかし、どうやらこの惑星の海中には、47個も海底都市があるらしい。

 人口0名とかは全くの嘘で、実際には100万人は水棲人がいるらしい。

 帝国の情報部もいい加減だな、と思う。





 当たり前かもしれないが、おもな産業は漁業のようだった。



 よって我々は森を切り開き、陸地にて耕作や放牧を行って彼らの利となることにした。

 ほぼそれは、内政担当のヨハンさん頼みなのだが……。







 その後、ベースキャンプのある入江はアップルと名付けた町となる。

 近くの森に、小さなリンゴが成る木が自生していたからだ。



 重機を使い、簡易の宇宙港を建設する。

 核融合発電施設や各種プラントも、水棲人たちの力も借りて次々に建造していった。





 オムライスとジンギスカンには、衛星アトラスから物資を運んでもらい、安全な航路も確立していった。



 ……その後3か月で、海洋惑星ベルの開発は一定程度の成功を見たのだった。







☆★☆★☆



「衛星軌道上に防御施設を作ろう!」



「そんなものいるポコ?」

「もったいなくありませんか?」



 私は防御衛星を保有してみたかったのだが、副官殿も砲術長殿も反対の様だった。

 まぁ確かに、ルドミラ教国やグングニル共和国から遥かに離れた立地なのだが。





「せっかくだから水上基地を作るポコ!」

「そちらの方がいいかもしれませんね♪」



 幕僚たちの意見により、水上に半フロート式の防御施設を作ることにした。



 防衛設備だけではなく、油田発掘リグなども取り付けた経済的な水上施設の予定にする。

 夢がないような気もするが、コストを考えると経済的である必要もあったのである。





 その後、洋上の測量も行い、より有用な航路も定めた。



 港湾都市アップルには造船施設を建造する。

 主にソーラーシステムを積載した洋上帆船を就航させるつもりである。



 ハンニバル開発公社の主力事業は、言うまでも無く造船であった。





 更には宇宙港も増築し、宇宙船用のドックも併設。

 海宙併用の航行管制システムを備えた管制タワーも建造した。





 ……こう聞くと、華々しい近代都市のような気がするが、水棲人が移り住んできた街並みは、好んで木造や茅葺が多かった。





 惑星ベルの地上部は、意外と風流な街並みになったのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―

EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。 そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。 そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる―― 陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。 注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。 ・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。 ・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。 ・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。 ・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...