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【第一章】青い地球

第五十九話……逆福祉施策星系の謎

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「……ですから醜い大人なんてやくにたちませんわ!」



「え!?」



 大人が役に立たないと発言する小学生のような女の子。

 もとい、捕虜になった敵の司令官。

 彼女の発言に、彼女の幕僚たちもうなずく。





「……な、なんで大人は役に立たないの?」



 ちいさな子供に聞く様に尋ねる私。

 ……少し失礼かな?





「だって、大人は医療費がかかるんですのよ!」



 彼女の幕僚たちがうんうんと頷く。

 医療費ねぇ……、確かに年をとればかかるかも。





「……誰が言ってるの? そんなこと?」



「伯爵様よ!!」



「伯爵さまは大人じゃないの?」



「伯爵さまは別! お前なんかと一緒にするな!!」



 (´・ω・`) ぶひ……。

 なんだか嫌われてしまったので、大人の下士官に話を聞くことにした。







☆★☆★☆



――スプーン星系



 女性優位の星系社会である。

 軍に入れるのは25歳までの容姿端麗な女性。

 公務員や会社役員も女性でないとなれない。



 定年は39歳。

 40を過ぎた男性と、美しくない女性は星系外に追放。

 そのため、女性に生まれてもこっそりと美容整形するものが後を絶たないという。





 ……ことの始まりは10年前。



 スプーン星系の先代統治者は、福祉政策に厚い人であったらしい。

 当時、産業界のトップは全員高齢男性で、女性は社会的に冷遇されていた。



 しかし、高齢者と病人に手厚すぎるスプーン星系は、他星系から高齢者が押し寄せ、物凄い高齢社会になってしまった。



 そのために、星系の財政はとても厳しくなり、帝国中央政府から大量の借金をすることになる。

 よってその後に、有利子負債が天文学的に拡大。



 結局は破綻してしまい、現統治者に代わったという訳だ。





 いままでの反動から多産と低年齢女性社会を推奨し、高齢者を弾き飛ばす政策に代わったということだ。

 今までのスプーン星系社会の頂点である男性高齢者を、特に目の敵にした国家体制らしい。



 若い女性の美しさは星系の貴重な財産という主義らしい。





 ……かなりSFちっくな社会だな。

 ってか、SFゲームの世界だったのを思い出した私だった。







☆★☆★☆



 今回拿捕した艦船は、全てエールパ星系の惑星リーリヤに搬送する。

 幸運なことに味方の被害はほぼない。



 こんなに作戦があたると、策士が策に溺れるのもわかる気がする。

 私も気を付けなくては……。



 今回拿捕した大方の船を蛮王様に買い取ってもらい、以前の負債と帳消しにしてもらう手はずだった。

 よって、借金が減って少し身軽になるはずだった。





「!?」

「ニャ~♪」



 お金に目ざとい猫亜人のマルガレーテ嬢が懐いてきた。

 ……よし、間違いなく借金は減っているぞ。







「この子たちをどうしますか?」



 捕虜の待遇についてクリームヒルトさんに聞かれる。

 小さい女の子ねぇ……、どうしようかな?

 ああ、まぁ一応は敵の高級士官だしな。





「士官以上は帝国首都星系に送ろう!」

「了解ですわ!」



 なんだか副官殿が愉しそう、なにかあったのかな?





「この後はどうするポコ?」



「どうしようかな? 命令通り攻めた方が良いかな?」



「当然攻めるべきですわ!!」



「え!?」

「ポコ!?」



 なんだか珍しく、副官殿が『攻めるべし!』みたいな雰囲気である。





「……うん、攻めるポコ!」

「攻めてお金を稼ぐニャ!」



 ……攻めてお金が稼げるかはともかく、スプーン星系に侵攻することになった。



 しかし、一度燃料と弾薬を補給するべきである。





「アルデンヌ星系で一旦補給しよう」



「了解ですわ!」

「了解ポコ!」



 ハンニバルがアルデンヌ星系で燃料を補給していると、警報が鳴る。

 情報担当士官が声を荒げる。





「星系外縁に大質量がワープアウトしてきます!」

「!?」



「識別信号は共和国艦隊!!」

「質量測定不可能です!!」



「全艦戦闘配置!」

「燃料バルブ閉じ次第、出撃!!」



 ……どうやら、再び敵の方からこちら側へやってきたようだ。

 飛んで火にいる夏の虫。

 しかし、少し嫌な予感もしていた。







☆★☆★☆



「げっ! デカい!!」

「大きいポコ!」



 スプーン星系に残る敵艦は少ないはず。

 ……と、油断していたら、とんでもないものがやってきた。



 全長2km以上ある氷塊を纏った超大型の宇宙母艦であった。

 まさしく動く要塞といった様相だった。





「敵艦より通信はいります!」



「繋げ!」



 敵からのビデオチャットを、ハンニバルの艦橋にあるメインパネルに映す。





「ふふふ、貴様がヴェロヴェマか!?」

「我が巨艦ハボクックの感想はどうだ?」



 モニターに映った敵の伯爵は、細身の青年といった感じかな?

 もっと怖い人を予想していたが、なんだか優男な感じで安心する。





「ところで、我が部下をどこへやった!?」



「捕虜は後送しました!」



「う、嘘をつくな! さては可愛いから自分の物にしたな!」



「……ま、まさか!」







 (……不毛な応酬がしばし続く)







「お前だって、星間ギルドの受付は美人の女性がいいだろう?」



「……ま、まあね……」



「……てか、もしかしてお前プレーヤーか!?」



「……え!?」



「問答無用! あとは拳で語らうのみ!!」



 突如、通信が切れる。



 どうやらお互いゲームのプレーヤーの様だった。

 ……開戦やむなし、プレーヤー同士の名誉をかけて決戦をするしかないようだった。





「全艦砲撃戦用意!!」



「長距離大口径レーザー砲、砲門開け!!」

「長距離対艦ミサイルロックオン!」



「各種防御スクリーン出力最大!!」

「迎撃VLSスタンバイ!」







――今まさに、装甲戦艦ハンニバルと巨大氷塊宇宙母艦ハボクックの戦いがはじまろうとしていた。

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