宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
上 下
49 / 148
【第一章】青い地球

第四十九話……ルドミラ教国艦隊来襲!?

しおりを挟む
「お二人は今どうしているのですか?」

「施設に入って治療中だ。長年の薬が体に染み込んでいるからね。簡単には体から抜けないみたいだ」

「そうですか……」

「カレン、今まですまなかった」

 兄様は頭を深々と下げた。

「助け出してくれた時に謝罪は受け入れたわ。それにもう説明は要らないわ。ほとんどキャサリン様が説明してくれたもの」

 兄様に前世の記憶の話はしていない。
 と言うかどう説明したらいいのかわからないもの。

 オスカー殿下がわたしの息子のミハインだったなんて……

 彼は前世の記憶がある人をはっきり把握していた。わたしなんてあの場にいなければまだ思い出すこともなかっただろう。ただ王都はあまり居たくない場所で、飛び降りる夢はいつも見る悪夢でしかなかったはず……

 頭の中はぐるぐる。考えがあっちに行ったりこっちに行ったりして、自分自身でもどうしていいのかわからない。

「俺は王太子殿下に相談していたんだ。両親の行動は異常過ぎた。さらにキャサリンの言動もおかしい。それに俺自身もキャサリンといるとカレンに対して悪感情が湧いてくる。
 それで調べ始めたんだ、キャサリンの実家のことを……そしたら怪しい香油を外国から手に入れていたことがわかった」

「カレンの知らない両親の過去なんだーーー」

 そう言って両親の『真実の愛』の話を語られた。

 なんて馬鹿らしい話を聞かされるのだろう。そう思いながらも前世の記憶の陛下とセリーヌ様のことを思い出した。
 お二人もまた『真実の愛』で結ばれていたのかもしれない。



「キャサリンは男爵家の養女なんだ。たぶん公爵家に出入りさせるために明るくて可愛らしい向上心の高い女の子を養女にしたんじゃないかと思っている」

「そう」
 ーーーそんなこともうどうでもいいわ。

「ダルト男爵は大切な幼馴染を亡くしているんだ。それが父上の元婚約者なんだよ」

「それは?」

 その言葉には驚いた。
 ーーーあの二人は他人を不幸にしてまで結ばれていたの?

「王太子殿下に聞いたんだが両親の結婚は自殺者まで出しての結婚だったからその当時はかなり問題視されたらしい。それにその揉め事の中生まれたのが俺だったんだ。
 男爵がどんな気持ちでそんなことをしたのかは今捕まえて取り調べているから後日わかると思う」

 兄様は大きな溜息をついた。そして一口だけ紅茶を飲むと話を続けた。

「『魅了の香油』はあの二人にだけ効いたみたいなんだ。カレンに罪悪感を抱きながらも今更素直に娘と向き合えずにいたからつけ入りやすかったんだと思う」


「ふふっ、我が子に愛情すらかわかない親だから?産まれてきた我が子が嫌いな義母に似ているから可愛くなかったから?罪悪感を抱く?あり得ないわ」

「それは……確かにそうかもしれないが、なんとか修復しようとしてはいたと思うんだ……」

 そして香油の話になり、

「その香油がこの国に出回ると困るから色々調べることになった。王太子殿下も協力してくれたんだ。カレンへの仕打ちは酷いものだったけど君が領地へ行ってくれたのでとりあえず要観察になったんだ。
 それから俺は殿下の協力のもと、青い薔薇の香油について調べる事になった」

 ーーー青い薔薇?
 前世でも見たことがある。確か離宮でセリーヌ様が大切に育てていたわ。

「そして今年になってカレンは一年に一度だけ王都に来ていただけだったのに両親が王都の学校へ通わせると言い出した。
 それは魅了されているからか、魅了が解けている時にそう思ったのかよくわからなかった。
 俺はこの香油の魅了を解くための薬を探して回っていたから、屋敷にはあまり近寄らなかったんだ。
 両親は長年の香油で、ほとんどキャサリンを愛して娘のように扱ってカレンを嫌っていた。
 嫌っているのに会いたがり、嫌っているのにそばに置きたがる。完全に魅了されているわけではない。
 キャサリンに会わない時には、カレンの写真をじっと見つめている姿を何度となく見ていたからね。だけどキャサリンに会うと、またカレンに対して憎悪が湧くようだった。
 そんな二人を俺はどうすることもできなかった」

「兄様……キャサリン様の魅了の所為だけじゃないわよね?公爵夫婦はわたしが嫌いだった。そこが根底にあるから二人がわたしを嫌い疎んじた。それだけの話だと思います」

 ーーー今更なのよ。

 そして前世での青い薔薇の記憶も今更だわ。

 あの青い薔薇はもう王城にはないのだろう。あれば王太子殿下も兄様も何か言ったはずだもの。

 陛下はもしかしたら………魅了されていたの?

 もう今になってはわからない。ただの憶測でしかないわ。

 兄様の話は最後の方はうわの空で聞いていた。

 キャサリン様のしたことはもうどうでもいい。もちろんマキナ様としては考えないといけないかもしれないけど。

 それよりも……ううん、もう前世のこと。今更なのよ。

 だけど、わたしはこれからどう生きたらいいのだろう。

 カレンとして生きてきた。前世なんて関係ない?そうは思えない。だってずっと北の塔のこと夢で見てきたもの。この王都にいるのが嫌だったのも前世の記憶の所為だったし。

 エマが心配して何度か部屋を覗いてくれた。

「心配しないで」

 わたしはそう言って作り笑いで返すしかなかった。

 明日の学校、セルジオとオスカー殿下に会いに行こう。

 そう決心して眠れぬ夜を過ごした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪
SF
 半機械化生命体であるバイオロイド戦闘員のカーヴは、科学の進んだ未来にて作られる。  彼の乗る亜光速戦闘機は撃墜され、とある惑星に不時着。  救助を待つために深い眠りにつく。  しかし、カーヴが目覚めた世界は、地球がある宇宙とは整合性の取れない別次元の宇宙だった。  カーヴを助けた少女の名はセーラ。  戦い慣れたカーヴは日雇いの軍師として彼女に雇われる。  カーヴは少女を助け、侵略国家であるマーダ連邦との戦いに身を投じていく。 ――時に宇宙暦880年  銀河は再び熱い戦いの幕を開けた。 ◆DATE 艦名◇クリシュナ 兵装◇艦首固定式25cmビーム砲32門。    砲塔型36cm連装レールガン3基。    収納型兵装ハードポイント4基。    電磁カタパルト2基。 搭載◇亜光速戦闘機12機(内、補用4機)    高機動戦車4台他 全長◇300m 全幅◇76m (以上、10話時点) 表紙画像の原作はこたかん様です。

装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―

EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。 そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。 そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる―― 陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。 注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。 ・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。 ・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。 ・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。 ・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...