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【第一章】青い地球

第四十三話……苦手な外交交渉が進展セリ!?

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 ハンニバルは神聖レオナルド王国がある星系を目指して航行していた。



 軍の命令を受けての交渉へ向けての航行。

 嫌ではあるが、お金を貰っているからにはこういう仕事は必ずある。

 自分に向いてないよなって、感じの……。





「お腹減ったポコ~♪」

「肉食べたいクマ♪」



 今回、不測の事態に備え、クマ整備長を連れてきた。

 彼はわるいクマじゃないのだが、一日6食たべるのだ……。



 バフォメットさんと並んで食費が凄いのだ。

 しかも肉が好きだし。

 凄い代謝をしているなぁ、と感心した。







☆★☆★☆



「撃っても効かないポコ!」

「いかん! 反転だ! 全速離脱!」



 未開地域であるC-136方面危険宙域で、エネルギー反応性危険ガス雲が漂う中、再び巨大アメーバに遭遇する。

 全長8km以上。ハンニバルの10倍以上の大きさだった。



 ……しかも一匹だけではない様子。

 ここは彼らの巣なのだろうか。





 巨大なアメーバの触手がこちらに伸びてきたために、やむなく迎撃。

 砲塔型のレールガンで追い払おうとしたら、逆に本体もこっちへ近づいてきた。 



 ……怒ったのかな。

 というか、早くなんとかしなきゃ。





「短距離跳躍いけますわ!」

「逃げるクマ!」



「跳躍開始!!」

「了解!」



 ハンニバルは戦術短距離跳躍を連続使用し、巨大アメーバ出現地域から辛くも脱出した。









 ちなみに、今回の航行もハンニバル単艦での航海である。



 一般には駆逐艦などが速いイメージがある。

 しかし、宇宙潮流などの各種特殊抵抗係数を考えると、長距離航行は大型艦の方が燃費が良くなってしまうのだ。



 それに、友好を訴える使節が大きな艦隊を組むわけにはいかない。

 そういう訳で、ハンニバル単艦での航海だった。







☆★☆★☆



 以前に航海したデータがあるのと、敷設して置いた航路用発信機のお陰で、意外と早く神聖レオナルド王国がある星系までたどり着いた。





「我、カリバーン帝国籍装甲戦艦ハンニバル……!」



 星系外縁部で平文の通信を送る。

 相手をビックリさせないために必要な措置だった。





「……来訪ヲ歓迎スル!」



 30分後に返答が来た。

 例の如くタコ型星人たちの王国である。



 内容は、まぁ、来てもいいよってことだ。





 ハンニバルは短距離跳躍を交えながら、神聖レオナルド王国のあるガス惑星付近に到達。

 衛星軌道上外縁に停泊した。



 約束は衛星軌道上での会合である。

 カリバーン帝国皇帝の親書たる通信は、すでに神聖レオナルド王国側に届いていたようだった。







☆★☆★☆



「コノヨウナ形デ、ソナタニアウトハノ……」

「す、すいません。あっ……」



 お茶を運んできたクリームヒルトさんに足を踏まれる。

 そう、外交の席で安易に謝罪してはいけなかったのだ。





「こ……こちらになります」

「ウム」



 高級な紙でできた親書を手渡す。

 データは既に送ってあるので、形式上のことである。





「……デ、ソナタハドウ思ウ?」

「オフレコでいいですか?」



「モチロン」



 この親書には、レオナルド王国の存在を認めてやるから、帝国の傘下に入るよう勧めた内容が書かれていた。

 事実上の属国になれという、態の良い従属勧告だった。





「……事実上の独立を認めさせる代わりに、臣下におなりになる方がいいと思います」

「本音カナ?」



「本音です。彼我の戦力差が大きすぎるのです」

「……実利ヲ得ロト?」



「そうです、面従腹背して好機を待ちましょう!」

「……ヨカロウ」



 アメーリア女王の口調は固いのだが、その姿は若い女性で、かつ透けるような布地を纏っており、目のやり場に大変困った。

 もし、初めて会うのだったら、ハニートラップを疑うほどだった。







 アメーリア女王側も馬鹿ではないので、今はで周辺友人星系と同盟を結び、辺境星域の連合国家といった形態をとっていた。

 この度、その星系も我が帝国と結ぶ予定らしい。

 まぁ、帝国が今の勢力を保っている間だけだろうが……。







「オヌシノ星系ノ文化ノ件ジャガ……」

「はい、こちらになります」



 実は今回、ハンニバルに沢山の貢物を満載してきた。

 相手は女王様なのだ。

 こっちは男爵風情だから、貢物をもってきてもおかしくはない。





「……オオオ」

「凄イデスナ……」



 女王に付き従っていたタコ型星人たちが、感嘆の声をあげる。

 科学力がコチラの方が上なこともあるが、実はかなりの身銭を切った。



 オフレコであるが、蛮王様からの親書だとか、蛮王様からの贈り物も沢山あった。

 なかには魚の干物だとか、タコの塩辛みたいな相手の機嫌を損ねそうなものも多数あって冷や汗をかいたのだが。



 ……概ね好意的に受け取ってもらったようだ。



 沢山のお土産が大型コンテナで次々に積み出される。

 実はそのための大型艦ハンニバルでの来訪だった。







☆★☆★☆



「……ヨカロウ」

「はっ! 有難き幸せ!」



 蛮王様からの友好的な親書と交易条件には、快く承諾してもらえた。



 これによって惑星リーリヤを含むエールパ星系は、レオナルド王国などの星系と独占的な交易契約を結んだ。

 もちろん、そのエールパ星系にはわが衛星アトラスも含まれる。



 未知の文明との交易は、いつの時代も双方に莫大な富をもたらすのだった。







☆★☆★☆



 私はアメーリア女王の条件への承諾を、超光速ビデオチャットで帝国総司令部に報告した。



 事務的報告を参謀の方に行い、最後に総司令部のお偉い様が画面に現れる。





「如何せん、条件が条件ですので、渋々といった感じでした……」

「ご苦労! 大佐も危険が及ぶ前に早く帰投せよ!」



「はっ! 了解です!」





 ……とか何とか言って、実はこのあと惑星に降下。

 レオナルド王国で美味しいものを御馳走になる約束があるとかは、総司令部には絶対に秘密だった……。

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