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【第一章】青い地球

第三十八話……帝国軍反攻作戦

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 帝国軍の侵攻計画に従い、ハンニバルは輸送任務に就いていた。





 作戦目標に近い星系には、物資と戦力の集積地点があったのだ。



 その集積地に、必要物資や人員を運ぶのが今回のハンニバルと私の戦いであったのだ。

 一分一秒を争う綿密な輸送計画に追われ、まさしく後方も戦場であった。





 ……艦橋から見える恒星系は、温かい光を放つ。

 それは、残酷なまでに強いエネルギーだったのではあるが……。







☆★☆★☆



 いつも少数の兵力で多数の兵力を破ったとされる古代の王は、ある時、家臣に尋ねられる。



「王様はどうやって、少数で多数に勝ったのですか?」



 それに対して王は、



「余は常に多数で少数と戦った故、勝てたのだ」



 と、答えたと言われる。



 確かに、その王の持ち得る総兵力は、敵より少なかった。

 しかし、彼は鉄道や馬などを有効に使い、各戦場では敵より多数で戦ったという故事である。





 現実のところ、少数でも多数に勝てないと、英雄としては後世には語られない。

 しかし、好き好んで少数で戦ったのではないのだ。



 出来うるだけ、機動力や輸送力を駆使して、設定される戦場に戦力を運ぶべきだった。

 戦場の華である戦術的な機動力は、その後の話である。







☆★☆★☆



「ドックに収容できたポコ!」

「側面ハッチを閉めますねぇ~」



 副官殿の指示で、ハンニバルの側面大型ハッチがしまる。

 胴体内には、長距離跳躍ができない小型ミサイル戦闘艦を、複数載せていた。





「ハッチ閉まったポコ!」

「重量積載率98.8%です!」



「OK! 長距離跳躍準備!」



 ハンニバルは星系間航行な大型艦であり、連続長距離跳躍が可能である。

 しかも、大型艦にも関わらず、恐ろしく燃費が良かった。



 これは、一度エンストすると自分ではエンジンを掛けられないまでにケチった設計の賜物である。

 他にも、運航コストを下げるために、一般的な部品を増やした効果もあった。



 いくら優秀でも、整備に時間がかかる兵器は稼働率が低く、実際には使い物にならない事例も多かった。





「エルゴ機関エネルギー充填、加圧可能です!」

「了解! 長距離跳躍開始!」





 こうして燃費の良さを総司令部に買われ、エネルギーや弾薬、もしくは戦闘艦を載せ、あちこちの星系を往復した。

 文字通り馬車馬のように働いたのであった。





 もちろん、後方での活躍なので、



「あいつは戦場から遠い処でしか役に立たないチキンだ!」



 ……と、ツイト子爵などには笑われたりもしたのだが。







☆★☆★☆



 カリバーン帝国歴850年12月。



 帝国宇宙軍連合艦隊司令長官パウルス上級大将は、ホーウッド自治領めがけて攻勢を開始した。

 星系間を航行可能な艦艇だけでも116隻を数える大艦隊であった。





 素早い戦力集中が功を奏し、パウルス上級大将の艦隊は、共和国軍の前線艦隊を一蹴。

 更にこれを殲滅せずに、敵勢力圏へ深く浸透し、敵前線司令部を素早く強襲した。



 これにより、共和国軍の指揮系統に壊滅的な被害がでる。



 共和国軍の戦略データリンク網が一時的に破壊され、前線部隊は各個撃破される憂き目にあった。

 これも一種の立派な情報戦であった。








 そして、その勢いのまま連戦連勝し、帝国軍宇宙軍は6つの星系で勝利。



 その後、惑星地上戦も優位に展開し、18個の有人惑星を降伏させ、8個の戦略資源惑星を占拠した。 



 これには、旧宗主国であるカリバーン帝国支配を喜ぶ人民も多く、占領政策は比較的良好に推移していった。





 そして遂に、帝国統合軍主力は、旧帝国主星系アルバトロスに迫った。



 帝国軍の指揮は否が応にも高まった。





 ここを奪回することが帝国軍総司令部の悲願である。



 ……彼らに、汚名返上の機会が訪れていたのだった。







 しかし、……覚えておいでだろうか。



 ここアルバトロス星系への最終ワープポイント外縁には、元帝国の守護神である大宇宙要塞リヴァイアサンが待ち構えていた。







☆★☆★☆



 大宇宙要塞リヴァイアサン。





 100近くの防衛衛星を従える、直径110kmを超える半人工天体。



 宇宙をさすらう船乗りたちのあこがれの地。

 彼らの疲れをいやす大歓楽街の光も多い。



 表面には磨きあげられた超硬度ミスリル装甲が鈍く光る。

 もとある岩石部分にも多数の人工建造物が備わっていた。



 人工的な海には、軍港を含む大泊地が顔を覗かせる。

 さらには多数の要撃機を運用する大型滑走路が、網の目のように走る。



 近づく敵艦艇には軌道を巡らせた要塞列車砲が牙をむく。



 防御には大出力のエネルギー中和システム。

 無尽蔵の数のミサイル発射施設も備わっていた。







 その大要塞は建造後初めて、その生みの親である帝国軍と相対することになったのである。
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