宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

文字の大きさ
上 下
35 / 148
【第一章】青い地球

第三十五話……敵領侵攻作戦

しおりを挟む
「え? リアルの世界とゲームの世界がつながった?」

「……かなあ、と」



 ゲームの世界で、共和国の旗艦の件についてバニラ中佐に聞く。

 彼女はこのゲームの先輩プレーヤーだった。



 さらに聞くところによると、このゲームは特殊であることから、今にいたるも長い間オープンテスト期間中だということだ。





「そんなニュースしらないしね、君はゲームのしすぎじゃない?」

「そうかな?」



 確かに、現実時間で毎日8時間以上もゲームをしているのだ。

 やりすぎと言われても仕方がない……。



 あの時は頭が疲れていたか、ひょっとしたら夢だったのかもしれない。





「まぁ、また何かあったら教えてよ。少し気になるから……」

「わかりました! では、また」



 バニラ中佐に別れを告げ、私は超光速チャットの電源を切った。

 この件は解決はしなかったが、人に話すと少し気が楽になった。







☆★☆★☆



 ハンニバルは再び戦地に赴いていた。

 この度は珍しく攻撃的な作戦だった。





 先日の戦いで戦死した共和国軍の将校が持っていたデータを解析したところ、敵の防御線の穴を見つけたというのだ。

 帝国情報部が調べたところ、この情報は正しいと認定した。



 この判断に従い、帝国総司令部は作戦策定して、動員を通達した。



 そして、エールパ星系からはハンニバル一隻のみが動員される形となった。

 有力星系から少しずつ公平に戦力抽出した形だ。



 ……なにはともあれ、久々に共和国領への侵攻作戦となっていた。







「B-1896ブロック周辺に障害物はありません」

「ワープ航法可能です!」



「よし、全艦長距離跳躍用意!」



「「「了解!」」」



 見知らぬ宙域に次元長距離跳躍する場合、予定地域に障害物がないかを確かめる。

 これから先は敵宙域。

 詳細な宇宙航路図は無かったのだ。





「星間航行艦から順次跳躍、橋頭保を築け!」



「「了解」」



 通常艦船は、長距離跳躍後に自由に動けない。

 ハンニバルを含む8隻が先行し、この後に核融合炉を搭載した通常艦船が24隻続く布陣だった。





 私は頭にモヤモヤを抱えていたが、丁度良く吹っ切れたかもしれない。

 額にも、じんわりと汗をかいていた。





 緊迫した時間が続いたが、その後、敵支配地域に長距離跳躍するも、異常なし。



 そして、後続の24隻も続いた。

 全艦にて無事、敵地へ侵入を果たしたのだった。







☆★☆★☆



 今回、ハンニバルは先陣だった。

 重装甲を持つ3隻とともに、哨戒を兼ねながら本隊に先がけて先行していた。







「敵がいませんわね?」

「お留守ポコ?」



「情報によると、敵の戦力が薄い地域らしいね」



 比較的のんびりと進む先行部隊。

 見張りは怠らずも、敵艦船は現れなかった。



 ……しかし、警戒航行を続けると、とんでもないものに出くわした。







「危ないポコ!」

「停止ポコ!!」



 実戦豊富なタヌキ軍曹が気付く。



 それは、ガス状機雷であった。

 よく見ると、赤紫色に光る雲が整然と前方に広がっている。



 知らない私には、一見普通のガス雲に見えた。

 ……覚えておこう。





 とりあえず、これ以上の前進は危険だった。



 このため、後続の本体に連絡。

 しばらく、この宙域で待機と決めた。







☆★☆★☆





「機雷だと!? 作戦部から聞いてないぞ! そんなもの!」

「え?」



 この艦隊の司令官、フライシャー中将に機雷の報告をすると、意外な答えが返ってきた。



 ハンニバルを含む四隻の先行部隊がいるこの宙域には本来、敵艦隊が数隻いるはずで、機雷が敷設されているという情報は無かったのだ。





「大佐、しばらく待ってくれ、幕僚と協議する」

「はっ!」





 旗艦ヤークトティーゲルへの通信をいったん切った。

 長時間の通信は敵に発見される恐れがあったためだ。







「いやな予感がしますね」

「するポコ」



 みんなの意見は一緒だった。



 ……そして、その予測は悪い方に的中してしまった。





 本隊に続く後続船団が奇襲を受けたとの知らせが入ったのは、その僅か30分後だった。







☆★☆★☆



「敵発見! 方位前方11時の方角!」

「推定距離38万6000ヘクス!」



「輝度より、大型艦4隻、中型艦8隻の模様!!」





 回頭して、後続部隊への援軍に行こうとしたら、敵が来た。

 なんと12隻。

 こっちは4隻なんだが……。





「迎撃するポコ!」

「長距離砲、撃ち方用意ポコ!」



 素早く、戦闘指示を出すタヌキ軍曹。



 状況からして、発見されているのだろう。

 隠蔽できるような小惑星も無かった。



 逃げようにも、我が方は鈍足な重装甲艦4隻。

 戦うほかないのだ。



 しかも今回、元中将殿は風邪をひいて、側にいない。

 ……かなり不安だ。







「重粒子砲きますわ!」

「重力シールド全開! エネルギー中和スプレッド射出!」





 ハンニバルの強力な重力場と磁場により、敵のビームを屈折させ、跳弾に成功する。





「反撃だ! 砲撃開始!!」

「撃てポコ!!」





 ハンニバルの主砲が唸りをあげた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...