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【第一章】青い地球

第二十七話……巨大アメーバ

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「ゴホンゴホン……」



 頭が重く、胸が苦しい。

 どうやら風邪をひいてしまったようだ。





『……おかゆができましたよ~♪』



 ……嬉しい。



「……」



 ……。



 ……どうやら熱でうなされ為の空耳だったようだ。

 私はアパートで独り暮らしだった。



 コンビニでおかゆを買い、家で温めて食べた。

 そして、ゲームの世界へ戻った。



 ……もどった!?







☆★☆★☆



「エンジン増速!」

「エルゴエンジン第二戦速から、速度一杯へ!」



「エンジン内圧臨界点突破!」

「ワームホールへ進入せよ!」





――ワームホール。

 エネルギーの根源にて、時空の地平線への到達点。

 ここを抜けるとはるか遠くへ行くことができる。



 しかし、現実的な速度では異次元に吸い込まれたまま、抜け出せなくなる。



 古代アヴァロン超文明遺産、インフレーション機関をもつエルゴエンジンの保有者だけが、このワームホールを抜けて遥か彼方の世界を旅することができた……。







☆★☆★☆



 ハンニバルはワームホール通過で距離と時間を短縮し、未開地域であるC-136方面に来ていた。

 窓の外には神秘的な赤紫色をしたガス雲が漂っており、ハンニバルはエンジンパワーを絞って航行する。





「奇麗ポコ~♪」

「引火したら大爆発しちゃうけどね……」

「危ないですわね」



 世界には奇麗なものは多数あるが、それは猛毒を持ったクラゲだったりもする。

 奇麗がイコール人間に優しいとは限らなかった。



 ……ガス雲がかなり薄くなった頃合い。





「左舷前方にエネルギー反応!」

「警戒態勢!」



「な……なんだあれは!?」

「こ……怖いポコ??」



 我々の前方に現れたのは直径8kmほどのアメーバ状の巨大生物だった。

 透明な体の中に、各種器官や核も見える。





「近づいてきますわ!」

「迎撃ポコ!?」



「いや、ガス雲が爆発すると危ないから逃げよう」

「了解ポコ!」



「短距離戦術跳躍準備ですわ!」

「了解ポコ!」



 しかし、ハンニバルが短距離跳躍に入るより先に、巨大アメーバが触手を伸ばして攻撃してきた。

 鋭利な先端が、重力シールドを押しのけて突き刺さる。





「左舷前方破損! 複合装甲3層まで貫通!」

「第64ブロックを放棄しろ! 液体窒素注入急げ!」



「再び触手来ます!!」

「やむを得ん! 砲撃開始!」



 ハンニバルの主砲塔が左に旋回、次々に高出力レーザービームを発射。

 それと同時に舷側の近距離兵器群も一斉に火を噴いた。





――ズズシィィン



 まばゆい閃光と爆発とともに、アメーバ細胞が飛び散る。

 巨大な触手が体液をまき散らせながら千切れた。



 痛そうにしたアメーバだったが、更にもう一つの触手を振り上げた。

 鋭利な先端が再びハンニバルに迫る。





「艦長! 短距離跳躍いけますわ!」

「よし、跳躍開始、逃げるぞ!」



――ドゥッ



 鈍い音と重力波を残して、ハンニバルは10万キロほどの空間を一瞬で跳躍。

 そこからエンジン全開で、辛くも巨大アメーバから逃げ延びた。







☆★☆★☆



 ハンニバルは巨大化したため、主に惑星リーリヤからのブタ族の移民を乗員としていた。その数400名。

 当然に食事の需要があり、ハンニバルは巨体の中に養殖用水槽から農場プラントを備える。更には乗員のための大食堂も併設されていた。





「く……一生の不覚」

「どうしたポコ?」



「今日のカツ丼定食に間に合わなかった……」

「あはは……頭悪いポコね」



 ……くぅ、タヌキ軍曹に馬鹿にされた。

 ハンニバルは士官食堂がないために、並ばないと今日のおすすめ人気メニューが品切れになる恐れがあったのだ。



「よかったら食べます?」

「え!?」



 なんとクリームヒルトさんがオムライスを作ってくれた。

 湯気があがり、とても美味しそうな匂いがする。





「いやっほぉ~♪」

「あ~ずるいポコ!」



 美味しそうに食べる私に、タヌキ軍曹殿は悔しがったが、人生こういうこともある。

 勝敗は時の運なのだ。



 ……風邪の時のおかゆも良いが、手作りオムライスも最高だな。





 ハンニバルはガス状宙域を抜けて、更に未知の宙域に突き進んだ。







☆★☆★☆



 安全な位置を知らせる発信機を逐一投下しながら、未開の地を進むハンニバル。

 巨大なアメーバほどではないにしろ、不思議な生物や危険地帯を避ける道導を周辺宙域に記していた。

 これはこれから来る者の為でもあり、また彼等の安全な帰り道の確保でもあったのだ。





「ここはどの辺りなのかな?」

「わからないポコね」



 私達、つまるところ我が帝国が知らない地域も沢山あった。

 それは敵方の共和国とて同じだろう。







 ……それは3つ目の太陽と、2つ目の星系の外縁を過ぎたあたりだった。



――PIPIPI

 アラームが鳴る。

 警戒発令だ。

 私は急ぎ艦橋に駆け上がった。





「何があった!?」

「艦長! 停船命令ですわ!」



 珍しく副官のクリームヒルトさんも慌てている。







……それは、未知の文明との遭遇だった。

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