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【第一章】青い地球

第二十二話……設計とスパルタ基礎練習

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 先日の撤退戦の殿しんがりの功績で、私は少佐に昇進した。

 捕虜になったシェリオ伯爵には、少し悪い気がするが。





 実は昇進のメリットはあまりない。

 帝国から支給される給料がわずかに増えたくらいだろうか。

 もちろん、将官にまで昇進すれば話が違ってくるのだが。



 なぜなら、この世界は宇宙船をもっていると階級関係なく社会的地位が高い。

 その勢力の貴重な戦力になるからだ。

 しかもそれが、核融合炉エンジンの通常宇宙船ではなく、エルゴエンジン装備の星間航行宇宙船だと余計に社会的地位が高くなった。



 新宇宙暦172年のグングニル共和国で起こった熱核戦争の結果、星間航行宇宙船とその技術の殆どが失われた。

 よって、現在に一から建造できるのは、核融合炉型の通常宇宙船だけなのだ。



 私の保有するハンニバルは、エルゴエンジンD-Ⅳ型を積載している立派な星間航行宇宙船だった。







☆★☆★☆



 私は近所のコンビニで買ってきた缶コーヒーを飲んでいた。

 今は現実世界の狭いアパートの自室だ。



 ……落ち着く。



 実はハンニバルの広い艦長室は落ち着かない。

 自分には根っからの庶民のDNAが息づいていると自嘲する。





 PCを開く。

 先ほど、昇進にあまり益がないと考えたが、一つだけ違う部分がある。

 佐官である少佐になったことで、乗れる艦の規制が一つ解除されていた。



 尉官までだと、艦長になれる宇宙船の大きさは全長300mまで。

 現在のハンニバルの全長は288m。

 これが昇進により、全長が1000m未満にまで緩和されたのだ。





 自室のPCで設計図を引く。

 ……そう、ハンニバルを改装するのだ。



 珍しく今回は資金もいくらか余裕があり、造船ドックの拡張工事をクリームヒルトさんに頼んであった。

 兵器開発施設の建造もタヌキ軍曹に頼んである。



 あとはハンニバルの設計だ。

 ……悩む。



 前回足りないと思ったのは、火力だった。

 いくら防御力があっても、火力がないと押し切られる。

 もし接弦されて、白兵戦になったとしたら、きっと負けるに違いない。



 しかしながら、ハンニバルの売りである正面装甲は維持したい。

 よって、正面装甲を弱める艦首内蔵型の長砲身主砲の搭載は、止めておくべきだろう。



 そうすると、やはり主兵装は威力の抑え目な砲塔型になる。

 ん、まてよ……。

 側面はそこまで強度が必要ないかもしれないな。







☆★☆★☆



 惑星アトラス第一ドックにて、ハンニバルの改修工事が始まっていた。

 全長が800m級の超大型艦になる予定だ。

 地球の大型タンカーもビックリの大きさだ。



 正直、めちゃデカい。

 SFに出てくる人はコレを操艦できるのかと驚く。



 ……むしろ私は操艦できるのだろうか。







 その懸念を解消するべく、私はタヌキ軍曹殿と共に、帝国が誇る操艦名手であるバルザック氏に操艦を習いに行くことにした。

 ちなみに近接班のバフォメットさんには、例の如く、まずは有給休暇をとってもらうことにした。

 ジンギスカンも改修の為に、衛星アトラス第二ドックに入渠させている。





 タヌキ軍曹殿とバルザック氏のお宅を訪ねると、秘書の方に、



「まず、この課程を修了してきてください、とのことです」



 と、とある辺境の宇宙船操縦学校の入学を薦められた。



 書類を読むと、泊まり込み特訓6週間コース。

 まじか……。







☆★☆★☆



「お前どこに眼が付いてる!?」

「前を見ろ、後ろも同時に見るんだ!!」

「指さし確認忘れるな! ヴォケ!!」

「戦場ではセンサーは役に立たんぞ! 肉眼確認だ! このタコ!!」



 そこは現実世界の自動車学校の超スパルタ版だった。

 マンツーマンで一日中、教官にしごかれる。

 罵声が飛び交い、失敗すると、竹刀で叩かれた。





「おうち帰りたいポコ」

「もう、あの教官嫌だよね……」



 毎日、深夜の宿舎にて、二人で愚痴を言い合う日々。



 午前中は宇宙船の港への入港練習500回。

 午後からは、加速、停止、微速などを細かい距離を定めて深夜まで反復練習。



 しかも、船は酷い老朽船で真っすぐ進まないうえに、全長がなんと3000mもあった。





 基礎を連日、鬼のように叩きこまれる。

 きっと【羅針眼】が無ければ無理だっただろう……。







 ……最終日。

 教官が厚紙の台紙に写真を貼っただけの、レトロな宇宙船操艦免許証をくれた。

 今日の教官は、やたらとニコニコしていて別の人みたいだった。





「やったぽこ~♪」

「やった~♪」



 今までのあまりのキツさ加減に、解放感が沸き上がる。





「あれ?」

「どうしたぽこ?」



 免許証の署名欄には、バルザック氏の署名があった。





 ……実は、この教官こそがバルザック氏だったのだ。

 私はこの後も、ちょくちょく彼に教えを乞うことになる。



 ただ、練習時はめちゃめちゃ厳しい人だった。

 ……まぁ、私は厳しくされないと、練習をサボる自信があるけどね。







☆★☆★☆



〇装甲戦艦ハンニバル



全長・288m

艦型・不明



【主砲】

20.6cm連装レーザービーム砲3基



【装備】

各種ミサイルVLS16基

12.7cm連装対空ビーム砲2基



【防御】

重力波シールド

ミスリル塊前部装甲モジュール



【主機】

エルゴエンジンD-Ⅳ型一基









〇ミサイル軽巡洋艦オムライス



全長・242m

艦型・カリバーン帝国軍エンケラドゥス級



【主砲】

15.6cm連装レーザービーム砲2基



【装備】

対艦ミサイルランチャー4基

各種ミサイルVLS20基

新型クラウドシューティングシステム



【防御】

重力波シールド



【主機】

エルゴエンジンC-Ⅲ型一基









〇強襲重巡洋艦ジンギスカン



全長・256m

艦型・グングニル共和国軍バラクーダ級



【主砲】

20.6cm連装レーザービーム砲3基



【装備】

船首強襲用衝角

7.7mm連装対空機銃4基

各種ミサイルVLS6基

強襲揚陸艇4艇



【防御】

重力波シールド



【主機】

エルゴエンジンC-Ⅱ型二基
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