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【第一章】青い地球
第二十一話……アルデンヌ星系攻略戦【戦闘描写】
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「……アルデンヌ方面攻略作戦は以上となります!」
ビデオチャットの会議にて、シェリオ伯爵の副官シオン少佐の説明を受けた。
蛮王様も参加しているので、私が二次元萌えだのヘガクサイだの言われることは無い。今の私はエールパ星系の主、蛮王ブルーと実質的に傭兵契約もしていたからだ。
【アルデンヌ方面攻略艦隊】
〇攻略部隊……マールボロ星系艦隊
司令官・シェリオ伯爵
戦力スコア:11200BP
<内訳>
・星間航行戦闘艦10隻
・地上軍強襲揚陸艦8隻
〇兵站部隊……エールパ星系艦隊
司令官・蛮王ブルー(現場指揮はヘッツアー軍務卿)
戦力スコア:1800BP
<内訳>
・星間航行戦闘艦3隻
・大型輸送船6隻
……そう、我々は前線配置では無かった。
☆★☆★☆
アルデンヌ星系。
それはかなりの辺境地帯だった。
我がリーリヤ星系もかなりのド田舎だが、さらに輪をかけて辺境な独立星系である。
この星系に棲んでいるのは水棲魚人たち。ちなみに鰓呼吸である。
本来は中立星系なのだが、共和国軍がこの水棲魚人たちの自治政府に先月宣戦布告した。
これに伴い、我が帝国は自治政府の独立を守るための出兵となった。
……何のことは無い、ただの大国の勢力争いなだけである。
共和国軍は星間航行戦闘艦8隻。
対する我が帝国軍は13隻であり、戦いは優勢に運ぶと思われた。
☆★☆★☆
帝国暦849年11月。
両軍はアルデンヌ星系外縁の小惑星帯にて遭遇。
なし崩し的に砲撃戦となった。
この戦いに際し、シェリオ伯爵は大包囲作戦を立てていた。
その作戦はある意味、壮大な芸術作品だった。
しかし、あまりの緻密な指示に、味方は大混乱する。
「前衛はなにしているのだ?」
「右翼は何をボサっとしている!?」
「あ~つかえない奴らだな!!」
シェリオ伯爵は指令室で酷く苛立つ。
彼の立てた作戦は細かいガラス細工のように繊細だった。
よって、各艦長が生き物として当たり前に犯す小さなミスによって、戦線は連鎖的に崩壊していった。
緻密に組み立てられていた回線網は、味方の艦船同士の罵声がよく響く。
誰しも相手が全て悪いといった口調だった。
責任をなすり付け合う通信がとても酷い。
まさに真の敵は味方といった具合の内容だった。
開戦2時間後には、帝国軍は味方艦を盾にするように後退し始める。
混乱し折り重なる艦船の渦に、シェリオ伯爵が座乗する旗艦アントワープも飲み込まれる。
アントワープは味方の艦船と激突。
さらに指揮系統が混乱している別の味方艦からの誤射を受け大破炎上する。
そこへ敵の大型ミサイルを多数受けて、炎上ののち爆発した。
旗艦の爆発を見た味方艦は一斉回頭。
算を乱して逃げ出した。
敵の追撃はしつこく、遥か後方で大型輸送艦を護っていたエールパ星系艦隊の近くまで迫っていた。
「ヴェロヴェマ君、逃げよう!」
旗艦アントワープの安否が分からないため、ハンニバルに乗るヘッツアー軍務卿が暫定指揮権を持っていた。
「流石に不味いかと?」
「逃げるのも兵法だよ、ヴェロヴェマ君」
「しかし、当艦ハンニバルはとても鈍足ですが!?」
「……うん? では、戦おう! 頼んだよ!」
ヘッツアー軍務卿は軍政の官僚であって、戦闘指揮官ではない。
味方の惨状に驚いてはいたが、冷静になってくれた。
むしろ私も不安だが……。
「味方の退路を開く! 全艦砲撃開始!!」
我がエールパ星系艦隊は、逃げるマールボロ星系艦隊後方に見える敵艦隊を砲撃した。
一瞬敵は驚いたようだが、狙う獲物を我々に変えた様だった。
「敵砲火来ます!」
「ハンニバルは砲撃止め! 全力防御!!」
ハンニバルは全エネルギーを重力シールドに変換する。
僚艦オムライスとジンギスカンは、ハンニバルの陰に素早く隠れる。
凄まじい衝撃と閃光が迸ったが、その多くは重力シールドによって跳弾したようだった。
「ハンニバルを盾にして、反撃せよ!」
私は麾下の艦隊に指示を出す。
僚艦オムライスがミサイルを全弾発射し、ジンギスカンも主砲で応戦した。
敵は前進する足を止めたが、火力が足りずどうにも形勢が悪い。
「困りましたわね……」
我が副官殿は、気が抜けたような声を出す。
タヌキ軍曹殿を見ると、迎撃ミサイルの指示で忙しい。
……困ったな。
どうしようかと考えていると、突如後方から大口径レーザー砲の光が見えた。
……げ? 後ろにも!?
後ろにも敵かと思ったら、一旦逃げた味方が一隻だけ反転してきてくれた。
見覚えがある……。
バニラ大尉の乗艦エクレアだった。
エクレアは艦首主砲タイプの船で、その長砲身は攻撃力が高い。
クラン・シェリオの荒武者と謳われた砲撃は、的確に敵の推進機関部を狙い撃ちした。
その後、30分したのちに敵は追撃を諦めて引き返してくれた。
私の背中の冷や汗も凄いことになっていた。
「今度はこっちが追撃ポコ!!」
……ぇ!? Σ( ̄□ ̄|||)
☆★☆★☆
その後。
勇ましいタヌキ軍曹殿をなだめて、ハンニバルとその僚艦たちも戦場から撤退することになった。
ここにアルデンヌ星系攻略作戦は失敗した。
帝国軍は司令官シェリオ伯爵のみならず、地上軍17500名が捕虜になるという大失態を演じてしまった。
このことは特に、地上軍司令部とその家族を失望させた。
そのため帝国軍総司令部は、政治的にしばらく星系攻略作戦が企図できない羽目に陥ってしまった。
【帝国軍主要被害状況】
〇マールボロ星系艦隊
・旗艦アントワープ大破のち拿捕。
・撃沈1隻。
・大破2隻。
・中破1隻。
・地上軍強襲揚陸艦7隻拿捕。
〇エールパ星系艦隊
・大型輸送船中破1隻。
……その他、小破多数。
ビデオチャットの会議にて、シェリオ伯爵の副官シオン少佐の説明を受けた。
蛮王様も参加しているので、私が二次元萌えだのヘガクサイだの言われることは無い。今の私はエールパ星系の主、蛮王ブルーと実質的に傭兵契約もしていたからだ。
【アルデンヌ方面攻略艦隊】
〇攻略部隊……マールボロ星系艦隊
司令官・シェリオ伯爵
戦力スコア:11200BP
<内訳>
・星間航行戦闘艦10隻
・地上軍強襲揚陸艦8隻
〇兵站部隊……エールパ星系艦隊
司令官・蛮王ブルー(現場指揮はヘッツアー軍務卿)
戦力スコア:1800BP
<内訳>
・星間航行戦闘艦3隻
・大型輸送船6隻
……そう、我々は前線配置では無かった。
☆★☆★☆
アルデンヌ星系。
それはかなりの辺境地帯だった。
我がリーリヤ星系もかなりのド田舎だが、さらに輪をかけて辺境な独立星系である。
この星系に棲んでいるのは水棲魚人たち。ちなみに鰓呼吸である。
本来は中立星系なのだが、共和国軍がこの水棲魚人たちの自治政府に先月宣戦布告した。
これに伴い、我が帝国は自治政府の独立を守るための出兵となった。
……何のことは無い、ただの大国の勢力争いなだけである。
共和国軍は星間航行戦闘艦8隻。
対する我が帝国軍は13隻であり、戦いは優勢に運ぶと思われた。
☆★☆★☆
帝国暦849年11月。
両軍はアルデンヌ星系外縁の小惑星帯にて遭遇。
なし崩し的に砲撃戦となった。
この戦いに際し、シェリオ伯爵は大包囲作戦を立てていた。
その作戦はある意味、壮大な芸術作品だった。
しかし、あまりの緻密な指示に、味方は大混乱する。
「前衛はなにしているのだ?」
「右翼は何をボサっとしている!?」
「あ~つかえない奴らだな!!」
シェリオ伯爵は指令室で酷く苛立つ。
彼の立てた作戦は細かいガラス細工のように繊細だった。
よって、各艦長が生き物として当たり前に犯す小さなミスによって、戦線は連鎖的に崩壊していった。
緻密に組み立てられていた回線網は、味方の艦船同士の罵声がよく響く。
誰しも相手が全て悪いといった口調だった。
責任をなすり付け合う通信がとても酷い。
まさに真の敵は味方といった具合の内容だった。
開戦2時間後には、帝国軍は味方艦を盾にするように後退し始める。
混乱し折り重なる艦船の渦に、シェリオ伯爵が座乗する旗艦アントワープも飲み込まれる。
アントワープは味方の艦船と激突。
さらに指揮系統が混乱している別の味方艦からの誤射を受け大破炎上する。
そこへ敵の大型ミサイルを多数受けて、炎上ののち爆発した。
旗艦の爆発を見た味方艦は一斉回頭。
算を乱して逃げ出した。
敵の追撃はしつこく、遥か後方で大型輸送艦を護っていたエールパ星系艦隊の近くまで迫っていた。
「ヴェロヴェマ君、逃げよう!」
旗艦アントワープの安否が分からないため、ハンニバルに乗るヘッツアー軍務卿が暫定指揮権を持っていた。
「流石に不味いかと?」
「逃げるのも兵法だよ、ヴェロヴェマ君」
「しかし、当艦ハンニバルはとても鈍足ですが!?」
「……うん? では、戦おう! 頼んだよ!」
ヘッツアー軍務卿は軍政の官僚であって、戦闘指揮官ではない。
味方の惨状に驚いてはいたが、冷静になってくれた。
むしろ私も不安だが……。
「味方の退路を開く! 全艦砲撃開始!!」
我がエールパ星系艦隊は、逃げるマールボロ星系艦隊後方に見える敵艦隊を砲撃した。
一瞬敵は驚いたようだが、狙う獲物を我々に変えた様だった。
「敵砲火来ます!」
「ハンニバルは砲撃止め! 全力防御!!」
ハンニバルは全エネルギーを重力シールドに変換する。
僚艦オムライスとジンギスカンは、ハンニバルの陰に素早く隠れる。
凄まじい衝撃と閃光が迸ったが、その多くは重力シールドによって跳弾したようだった。
「ハンニバルを盾にして、反撃せよ!」
私は麾下の艦隊に指示を出す。
僚艦オムライスがミサイルを全弾発射し、ジンギスカンも主砲で応戦した。
敵は前進する足を止めたが、火力が足りずどうにも形勢が悪い。
「困りましたわね……」
我が副官殿は、気が抜けたような声を出す。
タヌキ軍曹殿を見ると、迎撃ミサイルの指示で忙しい。
……困ったな。
どうしようかと考えていると、突如後方から大口径レーザー砲の光が見えた。
……げ? 後ろにも!?
後ろにも敵かと思ったら、一旦逃げた味方が一隻だけ反転してきてくれた。
見覚えがある……。
バニラ大尉の乗艦エクレアだった。
エクレアは艦首主砲タイプの船で、その長砲身は攻撃力が高い。
クラン・シェリオの荒武者と謳われた砲撃は、的確に敵の推進機関部を狙い撃ちした。
その後、30分したのちに敵は追撃を諦めて引き返してくれた。
私の背中の冷や汗も凄いことになっていた。
「今度はこっちが追撃ポコ!!」
……ぇ!? Σ( ̄□ ̄|||)
☆★☆★☆
その後。
勇ましいタヌキ軍曹殿をなだめて、ハンニバルとその僚艦たちも戦場から撤退することになった。
ここにアルデンヌ星系攻略作戦は失敗した。
帝国軍は司令官シェリオ伯爵のみならず、地上軍17500名が捕虜になるという大失態を演じてしまった。
このことは特に、地上軍司令部とその家族を失望させた。
そのため帝国軍総司令部は、政治的にしばらく星系攻略作戦が企図できない羽目に陥ってしまった。
【帝国軍主要被害状況】
〇マールボロ星系艦隊
・旗艦アントワープ大破のち拿捕。
・撃沈1隻。
・大破2隻。
・中破1隻。
・地上軍強襲揚陸艦7隻拿捕。
〇エールパ星系艦隊
・大型輸送船中破1隻。
……その他、小破多数。
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