16 / 148
【第一章】青い地球
第十六話……停戦崩壊 【戦闘描写】
しおりを挟む
――カリバーン歴849年8月。
帝国の安泰は、一瞬の出来事によって脆くも浸食された。
「こちら国境警備艇564号、リヴァイアサン要塞司令部応答願います」
カリバーン帝国の主星系アルバトロスへの最後のワープポイントに、大宇宙要塞リヴァイアサンは構築されていた。
この要塞は一辺80キロメートルの正八面体の半人口天体であり、超高度ミスリルの複層装甲と大出力の軌道砲台などの武装をもってこの宙域を防衛する。
さらに、この要塞の重力圏には、機動防衛衛星や迎撃用プラント等を80個余り備えていた。
平時には宇宙商船団の一大休息地でもあり、それをもてなす大小歓楽街も20程ある。警備保安のみならず検疫所や税関も備えた一大宇宙港であり、帝国最大の大要塞であった。
グングニル共和国との100年の戦争の間、ずっと帝国主星系アルバトロスを守ってきた。また、共和国への反攻作戦時には兵站システムと後方司令システムを担い、帝国の戦線維持に尽力。四年前の休戦協定の調印式もこの要塞リヴァイアサンで行われていた。
まさに精神的にも帝国の護りの柱石であり、礎であった。
「こちら要塞司令部。どうぞ」
「星系外縁に、グングニル共和国の艦影多数。星間航行戦闘艦104隻以上」
「なんだと!?」
要塞リヴァイアサンは驚愕する。この要塞に駐留する星間航行戦闘艦は一個艦隊の16隻だった。他にも空間跳躍できない補助艦艇も多数配備されていたが、圧倒的な戦力差だった。
「主星系アルバトロスの総司令部に連絡しろ! 非常事態だ!」
要塞防衛司令官は叫び、その幕僚たちも慌ただしく配備についた。
防衛用要撃機にスクランブルがかかる。
非当直戦闘員もサイレンでたたき起こされた。
カリバーン帝国とグングニル共和国は、4年前より停戦ラインを定め休戦している。しかし、その休戦ラインを共和国の大艦隊が無断で越えてきたのだ。
「警告スル。コチラハ、カリバーン帝国国境警備隊。グングニル共和国艦艇停船セヨ!」
――要塞リヴァイアサン司令部に緊張が走る。
尚も、グングニル共和国艦隊は速度を緩めない。
「共和国艦隊、第8惑星軌道を突破。最終防衛ラインに侵入してきます」
「くりかえし警告を続けろ。こちら側からは撃つなよ」
要塞防衛司令部は大慌てだった。駐留艦隊が迎撃のために次々に緊急発進する。
要塞リヴァイアサンの各砲台は軌道上を火花を伴い走り、指定された射撃位置に急いだ。
そして、要塞と駐留艦隊は急ごしらえの防衛陣の形成に成功した。
リヴァイアサンは超巨大なエネルギー中和シールドを噴霧し、長距離レーザービーム砲の射撃に備えた。
このエネルギー中和シールドこそがこの要塞の奥の手であり、幾度の共和国の攻勢を跳ね返した原動力でもあった。共和国艦隊がいくらレーザービームで砲撃しようとも、この防御システムはなかなか破ることができなかったのだ。
「要塞主砲統合ファイアリングシステム・セーフティーロック解除」
「目標、グングニル共和国艦隊。射撃システム・オールグリーン」
「共和国艦隊、なおも接近中!」
「停船に応じません!」
――オペレーターの悲鳴が上がる。
「要塞及び、駐留艦隊の主砲有効射程まで、あと30秒」
「……10秒」
「……5秒」
「……共和国艦隊、有効射程に入りました。レッドゾーンです」
「やむを得ん、全艦船砲撃開始! 各艦各個撃破せよ!!」
――ここに帝国防衛部隊と共和国遠征艦隊が激突することになった。
エネルギーと金属が爆散し、火球が興亡した……。
――8時間後。
激しい戦いの後、帝国防衛部隊は壊滅し降伏。武装解除となる。
そして、帝国主星系アルバトロスを守護する大要塞リヴァイアサンは共和国の手に落ちた。
この後に帝国上層部に提出された報告書に以下のことが記載されている。
……結果的に多勢に無勢というだけでは無く、要塞の老朽化が迎撃能力の著しい低下を招いた。
要塞の統合ミサイル迎撃システムの情報処理量が追いつかず、迎撃網の網をかいくぐった多数の大型ミサイルが要塞表面に次々に着弾し、エネルギー中和システムなどの防衛システムや地上構造物を根こそぎ破壊される結果となった。
後に詳細が判明したことだが、帝国が休戦を謳歌している間に、共和国はスパイによって、この要塞の老朽化の現状と弱点を把握していたのである。
☆★☆★☆
PIPIPI……。
うるさいな、朝っぱらからだれだろう。
私は、眠い目をこすり、枕もとの携帯に手を伸ばした。
「はい、菱井です……」
「ヴェロヴェマ様、大変です!」
『!?』
ゲームの中から、クリームヒルトさんが現実世界の私に電話してきただと……。
……私は急いで着替え、ゲームの中へ飛び込んだ。
――カプセルの白い煙が肺に吸い込まれる。
呼吸器への優しい刺激が私を包んだ。
帝国の安泰は、一瞬の出来事によって脆くも浸食された。
「こちら国境警備艇564号、リヴァイアサン要塞司令部応答願います」
カリバーン帝国の主星系アルバトロスへの最後のワープポイントに、大宇宙要塞リヴァイアサンは構築されていた。
この要塞は一辺80キロメートルの正八面体の半人口天体であり、超高度ミスリルの複層装甲と大出力の軌道砲台などの武装をもってこの宙域を防衛する。
さらに、この要塞の重力圏には、機動防衛衛星や迎撃用プラント等を80個余り備えていた。
平時には宇宙商船団の一大休息地でもあり、それをもてなす大小歓楽街も20程ある。警備保安のみならず検疫所や税関も備えた一大宇宙港であり、帝国最大の大要塞であった。
グングニル共和国との100年の戦争の間、ずっと帝国主星系アルバトロスを守ってきた。また、共和国への反攻作戦時には兵站システムと後方司令システムを担い、帝国の戦線維持に尽力。四年前の休戦協定の調印式もこの要塞リヴァイアサンで行われていた。
まさに精神的にも帝国の護りの柱石であり、礎であった。
「こちら要塞司令部。どうぞ」
「星系外縁に、グングニル共和国の艦影多数。星間航行戦闘艦104隻以上」
「なんだと!?」
要塞リヴァイアサンは驚愕する。この要塞に駐留する星間航行戦闘艦は一個艦隊の16隻だった。他にも空間跳躍できない補助艦艇も多数配備されていたが、圧倒的な戦力差だった。
「主星系アルバトロスの総司令部に連絡しろ! 非常事態だ!」
要塞防衛司令官は叫び、その幕僚たちも慌ただしく配備についた。
防衛用要撃機にスクランブルがかかる。
非当直戦闘員もサイレンでたたき起こされた。
カリバーン帝国とグングニル共和国は、4年前より停戦ラインを定め休戦している。しかし、その休戦ラインを共和国の大艦隊が無断で越えてきたのだ。
「警告スル。コチラハ、カリバーン帝国国境警備隊。グングニル共和国艦艇停船セヨ!」
――要塞リヴァイアサン司令部に緊張が走る。
尚も、グングニル共和国艦隊は速度を緩めない。
「共和国艦隊、第8惑星軌道を突破。最終防衛ラインに侵入してきます」
「くりかえし警告を続けろ。こちら側からは撃つなよ」
要塞防衛司令部は大慌てだった。駐留艦隊が迎撃のために次々に緊急発進する。
要塞リヴァイアサンの各砲台は軌道上を火花を伴い走り、指定された射撃位置に急いだ。
そして、要塞と駐留艦隊は急ごしらえの防衛陣の形成に成功した。
リヴァイアサンは超巨大なエネルギー中和シールドを噴霧し、長距離レーザービーム砲の射撃に備えた。
このエネルギー中和シールドこそがこの要塞の奥の手であり、幾度の共和国の攻勢を跳ね返した原動力でもあった。共和国艦隊がいくらレーザービームで砲撃しようとも、この防御システムはなかなか破ることができなかったのだ。
「要塞主砲統合ファイアリングシステム・セーフティーロック解除」
「目標、グングニル共和国艦隊。射撃システム・オールグリーン」
「共和国艦隊、なおも接近中!」
「停船に応じません!」
――オペレーターの悲鳴が上がる。
「要塞及び、駐留艦隊の主砲有効射程まで、あと30秒」
「……10秒」
「……5秒」
「……共和国艦隊、有効射程に入りました。レッドゾーンです」
「やむを得ん、全艦船砲撃開始! 各艦各個撃破せよ!!」
――ここに帝国防衛部隊と共和国遠征艦隊が激突することになった。
エネルギーと金属が爆散し、火球が興亡した……。
――8時間後。
激しい戦いの後、帝国防衛部隊は壊滅し降伏。武装解除となる。
そして、帝国主星系アルバトロスを守護する大要塞リヴァイアサンは共和国の手に落ちた。
この後に帝国上層部に提出された報告書に以下のことが記載されている。
……結果的に多勢に無勢というだけでは無く、要塞の老朽化が迎撃能力の著しい低下を招いた。
要塞の統合ミサイル迎撃システムの情報処理量が追いつかず、迎撃網の網をかいくぐった多数の大型ミサイルが要塞表面に次々に着弾し、エネルギー中和システムなどの防衛システムや地上構造物を根こそぎ破壊される結果となった。
後に詳細が判明したことだが、帝国が休戦を謳歌している間に、共和国はスパイによって、この要塞の老朽化の現状と弱点を把握していたのである。
☆★☆★☆
PIPIPI……。
うるさいな、朝っぱらからだれだろう。
私は、眠い目をこすり、枕もとの携帯に手を伸ばした。
「はい、菱井です……」
「ヴェロヴェマ様、大変です!」
『!?』
ゲームの中から、クリームヒルトさんが現実世界の私に電話してきただと……。
……私は急いで着替え、ゲームの中へ飛び込んだ。
――カプセルの白い煙が肺に吸い込まれる。
呼吸器への優しい刺激が私を包んだ。
9
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―
EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。
そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。
そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる――
陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。
注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。
・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。
・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。
・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。
・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる