宇宙装甲戦艦ハンニバル ――宇宙S級提督への野望――

黒鯛の刺身♪

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【第一章】青い地球

第十六話……停戦崩壊 【戦闘描写】

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――カリバーン歴849年8月。



 帝国の安泰は、一瞬の出来事によって脆くも浸食された。







「こちら国境警備艇564号、リヴァイアサン要塞司令部応答願います」







 カリバーン帝国の主星系アルバトロスへの最後のワープポイントに、大宇宙要塞リヴァイアサンは構築されていた。

 この要塞は一辺80キロメートルの正八面体の半人口天体であり、超高度ミスリルの複層装甲と大出力の軌道砲台などの武装をもってこの宙域を防衛する。

 さらに、この要塞の重力圏には、機動防衛衛星や迎撃用プラント等を80個余り備えていた。



 平時には宇宙商船団の一大休息地でもあり、それをもてなす大小歓楽街も20程ある。警備保安のみならず検疫所や税関も備えた一大宇宙港であり、帝国最大の大要塞であった。

 グングニル共和国との100年の戦争の間、ずっと帝国主星系アルバトロスを守ってきた。また、共和国への反攻作戦時には兵站システムと後方司令システムを担い、帝国の戦線維持に尽力。四年前の休戦協定の調印式もこの要塞リヴァイアサンで行われていた。

 まさに精神的にも帝国の護りの柱石であり、礎であった。





「こちら要塞司令部。どうぞ」



「星系外縁に、グングニル共和国の艦影多数。星間航行戦闘艦104隻以上」



「なんだと!?」



 要塞リヴァイアサンは驚愕する。この要塞に駐留する星間航行戦闘艦は一個艦隊の16隻だった。他にも空間跳躍できない補助艦艇も多数配備されていたが、圧倒的な戦力差だった。





「主星系アルバトロスの総司令部に連絡しろ! 非常事態だ!」



 要塞防衛司令官は叫び、その幕僚たちも慌ただしく配備についた。

 防衛用要撃機にスクランブルがかかる。

 非当直戦闘員もサイレンでたたき起こされた。





 カリバーン帝国とグングニル共和国は、4年前より停戦ラインを定め休戦している。しかし、その休戦ラインを共和国の大艦隊が無断で越えてきたのだ。







「警告スル。コチラハ、カリバーン帝国国境警備隊。グングニル共和国艦艇停船セヨ!」



――要塞リヴァイアサン司令部に緊張が走る。

 尚も、グングニル共和国艦隊は速度を緩めない。





「共和国艦隊、第8惑星軌道を突破。最終防衛ラインに侵入してきます」



「くりかえし警告を続けろ。こちら側からは撃つなよ」





 要塞防衛司令部は大慌てだった。駐留艦隊が迎撃のために次々に緊急発進する。

 要塞リヴァイアサンの各砲台は軌道上を火花を伴い走り、指定された射撃位置に急いだ。



 そして、要塞と駐留艦隊は急ごしらえの防衛陣の形成に成功した。



 リヴァイアサンは超巨大なエネルギー中和シールドを噴霧し、長距離レーザービーム砲の射撃に備えた。

 このエネルギー中和シールドこそがこの要塞の奥の手であり、幾度の共和国の攻勢を跳ね返した原動力でもあった。共和国艦隊がいくらレーザービームで砲撃しようとも、この防御システムはなかなか破ることができなかったのだ。







「要塞主砲統合ファイアリングシステム・セーフティーロック解除」

「目標、グングニル共和国艦隊。射撃システム・オールグリーン」





「共和国艦隊、なおも接近中!」

「停船に応じません!」



――オペレーターの悲鳴が上がる。







「要塞及び、駐留艦隊の主砲有効射程まで、あと30秒」



「……10秒」

「……5秒」



「……共和国艦隊、有効射程に入りました。レッドゾーンです」





「やむを得ん、全艦船砲撃開始! 各艦各個撃破せよ!!」









――ここに帝国防衛部隊と共和国遠征艦隊が激突することになった。



エネルギーと金属が爆散し、火球が興亡した……。









――8時間後。

 激しい戦いの後、帝国防衛部隊は壊滅し降伏。武装解除となる。

 そして、帝国主星系アルバトロスを守護する大要塞リヴァイアサンは共和国の手に落ちた。







 この後に帝国上層部に提出された報告書に以下のことが記載されている。



……結果的に多勢に無勢というだけでは無く、要塞の老朽化が迎撃能力の著しい低下を招いた。

 要塞の統合ミサイル迎撃システムの情報処理量が追いつかず、迎撃網の網をかいくぐった多数の大型ミサイルが要塞表面に次々に着弾し、エネルギー中和システムなどの防衛システムや地上構造物を根こそぎ破壊される結果となった。



 後に詳細が判明したことだが、帝国が休戦を謳歌している間に、共和国はスパイによって、この要塞の老朽化の現状と弱点を把握していたのである。







☆★☆★☆



 PIPIPI……。

 うるさいな、朝っぱらからだれだろう。



 私は、眠い目をこすり、枕もとの携帯に手を伸ばした。





「はい、菱井です……」

「ヴェロヴェマ様、大変です!」



 『!?』



 ゲームの中から、クリームヒルトさんが現実世界の私に電話してきただと……。



 ……私は急いで着替え、ゲームの中へ飛び込んだ。







――カプセルの白い煙が肺に吸い込まれる。

 呼吸器への優しい刺激が私を包んだ。
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