10 / 148
【第一章】青い地球
第十話……蛮王様とのお酒
しおりを挟む
――お酒
人類最古の友。
合法麻薬の一つとも言われ、数々の禁酒法を打倒し、未だに身近な嗜好品。
もちろん嫌いな人も大勢いるが、好きな人も大勢いるのも事実だろう。
たぶん健康に悪いのだが……。
……調べたところ、この惑星の蛮王様はお酒が大好きとのことだった。
にこやかに、買ってきた高級ウイスキーを渡すと、
「話が分かるな。では、晩にまた会おう!」
と言われ、追い返された。
その後、官庁街でお昼を食べる。
サラダ付きの定食にした。
陸上では新鮮な野菜を多く食べるのが、宇宙船乗りの習わしらしい。
約束の晩御飯にまで、散策して過ごした。
ここは石造りの家が多い、きっと地震が少ないのだろう。
その後、指定されたホテルの晩さん会に出向いた。
もちろん蛮王様主催だ。
ご存知のように、現代でも有力者はパーティー三昧だ。
知己増やし、有力者とも顔合わせする。
ビデオチャットを販売するIT企業の社長でさえ飛行機で飛び廻り、直接会って会食をするのだ。
主賓の挨拶が終わり、30分を過ぎたくらいに末席に座っていた私は別室に呼ばれた。
そこには蛮王様がいた。
「まぁ飲め!」
「ありがとうございます」
心の底からお酒が美味しいかどうか聞かれたら、彼も私も違うのだろう。
かくいう私も、以前はあまりお酒を飲まなかった。
しかし、異文化である相手と素早く打ち解けるには、お酒の魔力を借りるというのが今までの人類の歴史だったのだろう。
杯を重ね、蛮王様も私も顔が赤くなっていく。
「でだ、惑星の権利書の件だが……」
「はい……」
唐突に本題が来る。
私は用意した権利書を見せ、条件を提示した。
「鉱山開発の権利が欲しいだと?」
「はい、是非にも」
蛮王様は髭をさすり、こちらの要望書を読んでくれた。
シェリオ伯爵をはじめ、いままでの権利者は間接統治を求めて失敗していた。
支配権を正当に認めてやるから、沢山の分け前をよこせといった手口だ。
相手からすれば、いきなり権利書を片手に『金よこせ!』といわれても納得しないのが普通だが、誰しも『権利』という強大な力を手にすると、相手の気持ちを考えにくくなるものだ。
しかもこの惑星には戦略資源ともいえるミスリル鉱石を産出する。この鉱石で作った超硬質鋼材は特殊なバクテリアを飼うことができ、痛んでもその力で修復する能力があるのだ。ハンニバルの外殻もその鋼材で作られていた。
もちろんその権益を熱望する者は多かったが、その権益の大きさゆえにこの蛮王と決裂し、生臭いいさかいが絶えなかったようだ。
私はそのような歴史背景を考慮し、その中核的な利権に対し、かなり控えめな条件を提示しておいた。
「これだけでいいのか?」
「ええ、結構です」
結局、鉱山開発などに参入する権利を得ることに引き換え、この惑星の権利書を引き渡した。
もちろんシェリオ伯爵に払う10%の義務もお願いした。
名実ともに蛮王様がこの惑星の支配者になった喜ばしい日だった。
当然のようにその後、嫌というほど飲まされ、気持ちが悪くなりながらホテルに戻った。
――その晩。
コンコン。
深夜、ホテルの扉をノックする音がした。
気持ちが悪いので、明日にしてほしい。
悪いが眠ったふりをした。
――が、
「カズヤ様、いらっしゃいますか?」
『……ぇ?』
慌てて鏡を見る。
一つ目巨人の姿だ。
ゲームの中に違いない。
なぜ私のリアルの世界の名前を知っている!?
ベッドから飛び起き、急いでドアを開ける。
そこには背の小さな老婆がいた。
「へっへっへ、こんばんは」
暗闇で見透かされたようにニヤリと笑われた……。
人類最古の友。
合法麻薬の一つとも言われ、数々の禁酒法を打倒し、未だに身近な嗜好品。
もちろん嫌いな人も大勢いるが、好きな人も大勢いるのも事実だろう。
たぶん健康に悪いのだが……。
……調べたところ、この惑星の蛮王様はお酒が大好きとのことだった。
にこやかに、買ってきた高級ウイスキーを渡すと、
「話が分かるな。では、晩にまた会おう!」
と言われ、追い返された。
その後、官庁街でお昼を食べる。
サラダ付きの定食にした。
陸上では新鮮な野菜を多く食べるのが、宇宙船乗りの習わしらしい。
約束の晩御飯にまで、散策して過ごした。
ここは石造りの家が多い、きっと地震が少ないのだろう。
その後、指定されたホテルの晩さん会に出向いた。
もちろん蛮王様主催だ。
ご存知のように、現代でも有力者はパーティー三昧だ。
知己増やし、有力者とも顔合わせする。
ビデオチャットを販売するIT企業の社長でさえ飛行機で飛び廻り、直接会って会食をするのだ。
主賓の挨拶が終わり、30分を過ぎたくらいに末席に座っていた私は別室に呼ばれた。
そこには蛮王様がいた。
「まぁ飲め!」
「ありがとうございます」
心の底からお酒が美味しいかどうか聞かれたら、彼も私も違うのだろう。
かくいう私も、以前はあまりお酒を飲まなかった。
しかし、異文化である相手と素早く打ち解けるには、お酒の魔力を借りるというのが今までの人類の歴史だったのだろう。
杯を重ね、蛮王様も私も顔が赤くなっていく。
「でだ、惑星の権利書の件だが……」
「はい……」
唐突に本題が来る。
私は用意した権利書を見せ、条件を提示した。
「鉱山開発の権利が欲しいだと?」
「はい、是非にも」
蛮王様は髭をさすり、こちらの要望書を読んでくれた。
シェリオ伯爵をはじめ、いままでの権利者は間接統治を求めて失敗していた。
支配権を正当に認めてやるから、沢山の分け前をよこせといった手口だ。
相手からすれば、いきなり権利書を片手に『金よこせ!』といわれても納得しないのが普通だが、誰しも『権利』という強大な力を手にすると、相手の気持ちを考えにくくなるものだ。
しかもこの惑星には戦略資源ともいえるミスリル鉱石を産出する。この鉱石で作った超硬質鋼材は特殊なバクテリアを飼うことができ、痛んでもその力で修復する能力があるのだ。ハンニバルの外殻もその鋼材で作られていた。
もちろんその権益を熱望する者は多かったが、その権益の大きさゆえにこの蛮王と決裂し、生臭いいさかいが絶えなかったようだ。
私はそのような歴史背景を考慮し、その中核的な利権に対し、かなり控えめな条件を提示しておいた。
「これだけでいいのか?」
「ええ、結構です」
結局、鉱山開発などに参入する権利を得ることに引き換え、この惑星の権利書を引き渡した。
もちろんシェリオ伯爵に払う10%の義務もお願いした。
名実ともに蛮王様がこの惑星の支配者になった喜ばしい日だった。
当然のようにその後、嫌というほど飲まされ、気持ちが悪くなりながらホテルに戻った。
――その晩。
コンコン。
深夜、ホテルの扉をノックする音がした。
気持ちが悪いので、明日にしてほしい。
悪いが眠ったふりをした。
――が、
「カズヤ様、いらっしゃいますか?」
『……ぇ?』
慌てて鏡を見る。
一つ目巨人の姿だ。
ゲームの中に違いない。
なぜ私のリアルの世界の名前を知っている!?
ベッドから飛び起き、急いでドアを開ける。
そこには背の小さな老婆がいた。
「へっへっへ、こんばんは」
暗闇で見透かされたようにニヤリと笑われた……。
18
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本国宇宙軍士官 天海渡
葉山宗次郎
SF
人類が超光速航法技術により太陽系外へ飛び出したが、国家の壁を排除することが出来なかった二三世紀。
第三次大戦、宇宙開発競争など諸般の事情により自衛隊が自衛軍、国防軍を経て宇宙軍を日本は創設した。
その宇宙軍士官となるべく、天海渡は士官候補生として訓練をしていた。
候補生家庭の最終段階として、練習艦にのり遠洋航海に出て目的地の七曜星系へ到達したが
若き士官候補生を描くSF青春物語、開幕。

日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる