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【第一章】青い地球
第七話……有給休暇
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シェリオ伯爵との話し合いの結果を、タヌキ軍曹殿とクリームヒルト副官殿に説明する。
ちなみに惑星リーリヤを貰った話は、二人ともとても喜んでくれた。タヌキ軍曹に至ってはそこに家を建てるつもりらしい。
三人で少し早めの夕食をとることにした。
予約したのは少しだけリッチな洋風レストランだ。たまの陸上だから贅沢したいという理由で。
――前菜のサラダを口にしながら話を進める。
「それでは、その惑星リーリヤにこれから向かうのですね?」
「向かうポコ?」
「私は向かう、が、君たちは明日から二週間の休暇だ」
「ぇ?」
「ポコ?」
二人ともビックリする。
私も上司に同じことを言われれば、とてもビックリするだろう。まさしく「クビか!?」と驚くに違いない。
しかし、シェリオ伯爵から貰った過去の勤務データによると、クリームヒルトさんは少なくとも23年もの間、働き詰めだった。アンドロイドとはいえ流石にこれは酷い。多分タヌキ軍曹もたいして変わらないのだろう。
よって、二人に二週間の有給休暇のなるものを味わって欲しかった。
「とても嬉しいのですが、これから惑星の新規開拓でお忙しいのではありませんか?」
「忙しいポコ」
「いや、今とってほしい」
……確かに今から忙しいだろう。
しかし、しばらくたったら暇になるかと言えば、そうではない可能性が高い。その時も彼らの労力を当てにして、更に甘える上司である自分の未来の姿がはっきりと見えた。
自分が勤めた支店がまさにそうだったのだ。支店長が言う『次の機会に』は永遠に訪れない。自分がシェリオ伯爵や支店長のように、彼らを酷使し続ける未来だけは嫌だった。
亡くなった祖父が生前よく言っていた。
人に助けてもらいたいなら、まず自分から……だ。
不確定な未来より、今を成果として彼等に確実に何か与えるべきだった。
……まぁ、一回有給休暇を与える偉そうな立場になってみたかったのもあるが (ノ∀`)
結局は二人とも納得してくれたみたいで、メインディッシュのカモ肉料理が運ばれてくるころには、お酒もまわり、座も寛ぐ。
クリームヒルトさんは嬉しそうにタッチパネルを使い、近場のリゾート地を探している。
タヌキ軍曹は久々に郷里に帰るそうだ。なにやらスキーが楽しめるところらしい。いつか私も行ってみたいね。
彼等に休みを約束して、本当に良かったと思っている。
リアル世界の支店の皆にはとても悪いなぁ、とは思うけれども……。
――翌日。
「では、一四日後に惑星リーリヤで♪」
「ぽこ~♪」
二人の笑顔に暫しの別れを告げた。
その日もすがすがしい青空だった。
その後、私だけを乗せたハンニバルは惑星シェリオの重力圏を無事脱出した。無事に宇宙という暗黒空間に戻る。
一人だけの操艦に不安を覚えつつも、だんだんとコツもつかみ、自信にしていった。
惑星シェリオの星間ギルドで受けた【小惑星破壊ミッション】も近場でこなす。一人での戦闘操作も覚えた。なんでも一人でやるのは勝手が違うものだ。今のうちに出来ることは独りでトレーニングし、習得したかった。
☆★☆★☆
三日ほど戦闘と操艦トレーニングをこなし、ようやく隣のリーリヤ星系に向かうことにした。
他星系に向かうための長距離跳躍は次元振動を引き起こすため、マールボロ星系でもより人気の少ない外縁部を目指したのだ。
もう手慣れた操艦で、星の漂う宇宙をぼんやり運転していると、突然前方より光が見えた。
即座に私の頭にかぶさる熊帽子が認識、結果は【停船要請】の発光信号だった。
『停船セヨ! 停船セヨ!』
私は仕方なく発光信号に従い、ハンニバルに減速を命じたのだった。
ちなみに惑星リーリヤを貰った話は、二人ともとても喜んでくれた。タヌキ軍曹に至ってはそこに家を建てるつもりらしい。
三人で少し早めの夕食をとることにした。
予約したのは少しだけリッチな洋風レストランだ。たまの陸上だから贅沢したいという理由で。
――前菜のサラダを口にしながら話を進める。
「それでは、その惑星リーリヤにこれから向かうのですね?」
「向かうポコ?」
「私は向かう、が、君たちは明日から二週間の休暇だ」
「ぇ?」
「ポコ?」
二人ともビックリする。
私も上司に同じことを言われれば、とてもビックリするだろう。まさしく「クビか!?」と驚くに違いない。
しかし、シェリオ伯爵から貰った過去の勤務データによると、クリームヒルトさんは少なくとも23年もの間、働き詰めだった。アンドロイドとはいえ流石にこれは酷い。多分タヌキ軍曹もたいして変わらないのだろう。
よって、二人に二週間の有給休暇のなるものを味わって欲しかった。
「とても嬉しいのですが、これから惑星の新規開拓でお忙しいのではありませんか?」
「忙しいポコ」
「いや、今とってほしい」
……確かに今から忙しいだろう。
しかし、しばらくたったら暇になるかと言えば、そうではない可能性が高い。その時も彼らの労力を当てにして、更に甘える上司である自分の未来の姿がはっきりと見えた。
自分が勤めた支店がまさにそうだったのだ。支店長が言う『次の機会に』は永遠に訪れない。自分がシェリオ伯爵や支店長のように、彼らを酷使し続ける未来だけは嫌だった。
亡くなった祖父が生前よく言っていた。
人に助けてもらいたいなら、まず自分から……だ。
不確定な未来より、今を成果として彼等に確実に何か与えるべきだった。
……まぁ、一回有給休暇を与える偉そうな立場になってみたかったのもあるが (ノ∀`)
結局は二人とも納得してくれたみたいで、メインディッシュのカモ肉料理が運ばれてくるころには、お酒もまわり、座も寛ぐ。
クリームヒルトさんは嬉しそうにタッチパネルを使い、近場のリゾート地を探している。
タヌキ軍曹は久々に郷里に帰るそうだ。なにやらスキーが楽しめるところらしい。いつか私も行ってみたいね。
彼等に休みを約束して、本当に良かったと思っている。
リアル世界の支店の皆にはとても悪いなぁ、とは思うけれども……。
――翌日。
「では、一四日後に惑星リーリヤで♪」
「ぽこ~♪」
二人の笑顔に暫しの別れを告げた。
その日もすがすがしい青空だった。
その後、私だけを乗せたハンニバルは惑星シェリオの重力圏を無事脱出した。無事に宇宙という暗黒空間に戻る。
一人だけの操艦に不安を覚えつつも、だんだんとコツもつかみ、自信にしていった。
惑星シェリオの星間ギルドで受けた【小惑星破壊ミッション】も近場でこなす。一人での戦闘操作も覚えた。なんでも一人でやるのは勝手が違うものだ。今のうちに出来ることは独りでトレーニングし、習得したかった。
☆★☆★☆
三日ほど戦闘と操艦トレーニングをこなし、ようやく隣のリーリヤ星系に向かうことにした。
他星系に向かうための長距離跳躍は次元振動を引き起こすため、マールボロ星系でもより人気の少ない外縁部を目指したのだ。
もう手慣れた操艦で、星の漂う宇宙をぼんやり運転していると、突然前方より光が見えた。
即座に私の頭にかぶさる熊帽子が認識、結果は【停船要請】の発光信号だった。
『停船セヨ! 停船セヨ!』
私は仕方なく発光信号に従い、ハンニバルに減速を命じたのだった。
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