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【第一章】青い地球
第四話……主砲斉射!
しおりを挟む「あ……考え直さないか!?」
「……」
所謂、一身上の都合という書類を支店長に渡すと、とても嫌がられた。自分も逆の立場だったら嫌だろうと思う。営業の基本戦力は結局のところ数なのだ。
「うん、しばらく休暇ということで行こう! な?」
「わかりました」
私は支店長室をでて、戦友ともいえる仲間たちに少しだけ挨拶して支店を出た。
「あ、先輩……」
「いや後藤、お前のことじゃないから」
後藤がビルの一階まで見送ってくれた。寂しそうな後藤の肩を優しく叩いた後、街角を縫い、逃げるように電車に飛び乗った。これは逃避かもしれない。電車の窓に流れる風景が私を笑っているように見えた。
☆★☆★☆
(……数時間後)
「どうぞ」
「あ……ありがとう」
自分の席でぼんやりしていると、クリームヒルト様が珈琲をいれてくれた。有難いね。
「なにをやっているポコ?」
「いや、この艦の名前と付けようとね。悩んでいるわけよ。良い名前ない?」
タヌキ軍曹殿に話を向けたが、
「自分で決めた方がいいポコ」
「そうですわね……」
二人に否定されたため、仕方なく机にあるこの世界のPCのようなものを覗く。『宣伝』……今日のお昼ご【はん】は、ここ【に】! 焼肉【バル】とあった。
発想キター!!
「ハンニバルという名前はどうだろうか!?」
「いいとおもいますわ」
「かっこいいポコ」
艦の名前は決まった。
後日カッコよくペイントされたが、絶対に命名の理由は言わないことにした。
その後、タヌキ軍曹殿に操艦を教わりつつ、しばし銀河を彷徨う。
宇宙とは星が沢山見えるが、その実本当に何もない世界だ。
目をつぶって飛んでいても、何にも当たらないくらい本当に何もない。
暫し遊弋を楽しんだ後、比較的近くにある辺境惑星フィリップスに立ち寄ることにした。
……近いと表現するには、とんでもなく遠かったのだが。
惑星フィリップスの重力圏の手前に入ると、惑星フィリップスの管制より通信を受けた。
『貴艦の船籍を問う』
『カリバーン帝国籍・HR379048ARです』
タヌキ軍曹殿がカリバーン帝国船籍であることを伝えると、
『船籍確認しました。艦長はヴェロヴェマ中尉ですか!?』
『YES』
確認事項が終わると、誘導信号を受け取り大気圏に突入した。
雲を抜けた後に、惑星フィリップスの中心都市パンゲア市宇宙港に無事入港。
人口6万人のパンゲア市。
さほど都会という訳ではないが、銀行で新規口座を作り、食料品店で食料を購入した。
そして、お目当ての【星間ギルド】へ向かう。
星間ギルドとは、カリバーン帝国の外までも営業版図を拡げる超巨大な組合組織。戦役のないときの士官の副業あっせん所でもあった。
私も帝国から得られる月給以外のお小遣い欲しさに訪れたのである。
「こんにちは……」
寂しいかな、星間ギルドフィリップス支店は無人だった。
メインモニターに並ぶ依頼一覧には、宇宙海賊退治や商船団の護衛などのカッコイイお仕事が並んでいた。
しかし、私が選んだのは【小惑星の破壊】です。
星間交易路を邪魔する岩石などを破壊するお仕事でした。
最初はローリスクからという、小市民的発想。
小惑星破壊は報酬が安くて不人気の模様。沢山同様の依頼があったのでまとめて引き受けて、再び宇宙港に戻った。
パンゲア市宇宙港で燃料補給を受ける。補給施設は大きなガソリンスタンドのような所で、ほのぼのした風景だった。待っている間は天気も良く風が心地よかった。とてもゲームの中とは思えない。
この世界で長距離航行できる宇宙船の一般的な搭載エンジンは、10次元インフレーション複合機関。現在存在する質量だけでなく、その物質の未来の質量までもエネルギー変換できるらしい。通称エルゴエンジンと言われている。
しかしエルゴエンジンの重要パーツは、広大な勢力圏を持つカリバーン帝国の科学力でも生産できず、基本的に古代超宇宙文明アヴァロンの遺跡より発掘しているらしい。
その燃料は液体アダマンタイトというらしい。地下資源から精製される。雰囲気としては石油みたいなものだろうか。エキゾチックなオレンジ色の液体だったが、危険物の様で近くで見せて貰えなかった。
その後、惑星フィリップスの管制に別れを告げ、無事に重力圏を脱出。
短距離空間跳躍を織り交ぜ、目的地の小惑星帯にたどり着いた。
ちなみにこの艦の主砲は20cm口径連装レーザービーム砲3基、計6門装備。他には各種ミサイルVLS16基が主兵装である。
船体はD型装甲戦艦であり、機動力が低く不人気の模様。兄にこれを選ぶべきだと言われこれにしただけで理由は特にない。
その装甲戦艦ハンニバルの主砲が、小惑星に向け始めて照準を合わせた。
「偏差照準! 主砲斉射!」
「……そこの赤いボタンを押せば撃てるポコよ」
一度言ってみたかっただけだよ……(´・ω・`)
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